Cookは「料理をする」という単語だが,スープやサンドイッチ,サラダなど簡単なものを作る時にはmakeを使うと知ったのはアメリカに来てから。数年前,アメリカ人の友人にチョコパイを出したところ,「息子のお弁当に持たせたいから,1つ持って帰っていい?」と聞かれた。その時,言われたのがI fix him lunch.という英文。

 

…ランチをフィックスする?

 

Makeよりももーーーっと簡単なものを作る,というより「いろいろな食べ物を寄せ集めて紙袋に入れる」のがfixなのか。Fixは壊れたものを「直す」とか髪型を「整える」とかいう意味でしか使っていなかったけれど,何かピンとくる!


日本のように,火を通した食べ物を隙間なくお弁当箱に詰めるのではない。アメリカの典型的なランチは,ラップに包んだサンドイッチ・リンゴ一個・紙パックのジュース・ミニニンジンの入ったビニール袋…すべて茶色の紙袋にバラバラと入れるので,紙袋=お弁当箱。形を変えられないお弁当箱ではなく,不定形の紙袋にバラバラと食べ物を入れる行為が,壊れた物を修理してつなぎ合わせるという感覚。

 

うちで夫の食事を準備するのは非常に簡単である。朝はシリアル+果物,在職時の昼はサンドイッチ+果物持参だったので,準備・片付けにかかる時間を合わせても10分以内。果物を洗う時にかろうじて水は使うが火も使わないし,作る(Make)という単語でも仰々しかったのである。フィックスでちょうどいい。

 

オーブンで焼くクッキーにはbakeを使い,「クッキーを焼く」。日本語でも「クッキーを作る」はやや不自然だが,「焼く」にも,pan‐fly(フライパンで炒める),グリル,ロースト,ブロイル…とバリエーションが細かい。味付けは適当なのに(失礼),調理法の英単語には厳格なのである。

 

アメリカの子ども達に限らず,大人のお弁当もざっとしている。残り物のスパゲティとか簡単なサンドイッチやスープ(保温ポット),袋に入れた生のセロリやブロッコリーだったりするから,やはり「寄せ集めて入れる」という感じ。


アメリカの場合は,「料理する」にもう一つ,openという単語を加えてもいいだろう。「缶詰を開ける」のオープン!缶詰を温めただけでも立派な?料理になっているから。日本人が作る凝ったお弁当なら,Cook…いやDecorate(飾り付ける)がいいかもしれない。