何の感情もわかない,さらには「どうにもイライラさせる絵や線のダイ」というものがあります。

 

実物そのものを観察せずに形だけ作っているために,特徴を無視して無機質になっているダイ。線が硬くカーブも単調で,生き物なのに生きているように見えないもの。もちろん絵ですから静止していますが,動き出すように見えなければ死んでいるのと同じことです。Die(ダイカットのダイ)が,まさにdie(死)の意味になっている。


話がそれますが,以前ダイカットマシン(big shot)についていた説明書の日本語訳を読んでみると...誤訳もいいところでやたらと「死ぬ」と書かれていました...。

 

足の太さも動きもすべてが同じ犬のダイ。左右が完全に対称になっているカボチャ。いずれも生命が感じられず,平面か,よくても置物にしか見えません。

 

毛糸の帽子なのに硬い直線のカット。ドーナツなのに柔らかさがなくおいしそうに見えないもの。燃えている火に見えない炎。完全に素材を無視しています。 

 

人間・動物・自然(山・海・植物)に限らず,家でも人が住んでいる家と廃墟では全く違う。「どんな人が住んでいるのかなと思わせるダイ」と「ただの平面でしかないダイ」があります。当たり前ですが,後者はすぐに飽きます。値段に関係なく,使わなくなってしまうのです。

 

トラックや自転車などもいろいろなメーカーのものをたくさん見てきましたが,誰かが乗っていて動いているように見えるトラックや自転車とそうでないものがあります。繊細なカットでも生命が感じられないものは,描画そのものがよくないんですね。同一メーカーでも,デザイナーさんによります。

 

こういうダイを使うと,樹木は鉄製,枝にいるリスがプラスチックでできたおもちゃで,小鳥の巣箱はガラス製?という人工的な描写のカードになってしまう。一方,生きていると感じさせるものが描かれていると,「わぁ…!まるで...」とストーリー性を感じて心にしみてくるのです。そして,いつまでも眺めていたくなる,取っておきたいカードになります。

 

ですから,素材のよいところをうまく引き出していて生命が感じられるダイかどうか,よーく見てから購入しています。


たかがダイ,されどダイ。決して安い物ではありませんから,長く幅広く使える物を選ぶことです。