数年前の朝ドラ「とと姉ちゃん」で,料理の手順をステップごとに写真で掲載するというエピソードがありました。「暮しの手帖」の1950年のホットケーキが初の料理のプロセスカット付きだったそうですね。 

 

…手芸の本も,折り紙の本もすべてステップごとに写真や図解が載っているのは当たり前だと思っていたけれど…アメリカの料理本や手芸本などを見るとひどく納得します。日本のもののように,ステップごとに写真や図解がない。「初心者向け」と書かれたクラフト(裁縫・粘土・ビーズ・カード作り等)の本で作れる人は一人もいないでしょう。改めて日本のクラフト誌や料理本のレベルの高さを実感。もちろん,本だけではなく店などサービス全体がそうなのですが。

 

アメリカのクラフト誌では,基本的に文章で説明されています。図解があれば一発で理解できるのに,数行使って「紙を横長に置いて,縦に1番目と3番目に入れた折線の間を,上から2番目に入れた折線に沿って切り込み(スリット)を入れる」という具合です。雑誌ですから,作品を手掛けた人によって英語の説明が異なり,わかりにくいったらありゃしない。

 

基本的に写真は出来上がりの1枚のみなので,指示通りにできたかどうかすら怪しいものです。仮に手順の写真が3枚ほど載っていたとしても,「いやこれとこれは似ているから不要。そうではなくこの部分の写真が必要!」とか,「拡大写真が欲しい」という感じ。写真に番号もふっていないのでどの過程の写真と一致しているのかも不明です。不鮮明だったり角度が悪かったりで,とにかくわからせようという気持ちが全く感じられない。箇条書きにして説明文と同じ番号が振ってあれば(当たり前なんですが)どんなにわかりやすいことか!…かゆいところに全く手が届いていないのです。

 

日本の雑誌は,写真に矢印や手書き文字が加えられていたり,「わかりやすいように赤い糸で縫っています」などと,読者の立場になって至れり尽くせりです。「誰でもできる」というサブタイトルなんかは,ホントのことです。

 

英語の雑誌のこのページはすごい。

4種類のポップアップカード作りの英語説明ですが,なんて長い文章!1ページ(縦28㎝×横21㎝)に小さな文字でびっしりと手順が書かれています。この根気強さに感服。手順に沿って作ろうとしましたが,「用意する紙:好きな大きさ」と書いてあるにも関わらず,最後に「出来上がりサイズ:5×6インチ」とあるのです。何なんだ一体…!本気で読者に作って欲しいとか思っていないのがよーくわかる。2ページも割いてこの作品を紹介する意味がわかりませんが…。

 

中国人の友だちが料理教室をやりたいというので,レシピは英語でタイプするのか聞いたところ,「は?レシピなんてない」と言うのです。つまり,彼女に言わせると「中国では,レシピ(書かれたものや自分で書き留めたもの)なんて誰も使っていない。笑われる」と!すべての料理の分量と手順が頭の中にあるのだとか。料理が得意な人はそういうものかもしれませんが,教えるとなるとそうはいかないでしょう…。彼女は生活経験から学ぶタイプですが,私は小学校教員だったのでとにかくいろいろ調べ,常に「全くわからない人を対象」に考えています。日本の料理本を見せて説得し一応理解はしてもらいましたが,納得はしていないようです。ま,納得していないのはこちらもなので,お互い様ですかね。

 

結局私がステップごとの写真を撮って,日本語で説明を書き加え手描き図をつけてレシピを完成させました。

 

日本人と接するような外国人は,日本や日本人のことをかなりわかっています。日本人と話したこともないような人には「日本人はこういうもので…」と説明することが多いのですが,文化や環境によって全く考え方が異なるものだとつくづく思い知らされます。