中高校生時代,「シトラスの香り」と書いてある制汗剤スプレーを使っていたが,シトラスが何なのか全く考えもしなかった。カタカナ(=おしゃれ)書きでさわやかな香りがする,それがシトラスという名前がついた何かであった。
「柑橘系(citrus)」という意味だと知ったのは,何と20代になってからのこと。衝撃。「なーんだ,ミカンのことか!」といささかがっくりしたのを覚えている。すごーく素敵なものだと勝手に想像していたのに...。ちなみに,当時はシトラス=ミカンで,西洋のオレンジではなく温州ミカンを想像していた。
長崎(九州?)の方言では,「しとらす」と言えば全く別の意味。
「~している」は「~しとる」だが,敬語では「しとらす」になる。「(仕事で)警察官をしている」ことを「警察官ばしとる」と言う。「ば」は「を」という意味。敬語だと,「田中さんは,警察官ばしとらす」。
なお,「しっとらす」だと異なる意味になり,「知っている」の敬語。「田中さんは政治を知っている」は「田中さんは政治ば知っとらす」だ。
「シトラスアジバシットラス」は,「柑橘系の味をご存知である」。カタカナと方言(しかも敬語)のコラボ!使い慣れていないと,ややこしい。
九州地方はミカンの産地だが,柑橘類の「シトラス」と方言の「しとらす」をかけて,何かしら地域おこしの商品名にはならないかしらねぇ。できそうな気もするけど…。
もう一つ,方言で覚える英単語に「蚊」(mosquito)がある。「私はりんごも好きなの」は,長崎(九州?)の方言では「りんごも好きと」になる。「~モスキト」 は,I also like~という意味。
日本語の「蚊」は漢字でも平仮名でも一文字で一音なのに,英語の『蚊』は何かすごくおしゃれ…モスキートと聞けば,コートなどの高価なブランド名とか素敵なリゾート地という感じがする。しかも綴りも難しく,qui辺りに高級感が漂う。他のハエ(fly)やノミ(flea),ナメクジ(snug)等の害虫はそれ相応という雰囲気の綴りだけれど…。ゴキブリもコックローチ(cockroach)でおしゃれな響きがして不似合いか。
虫で思い出したが,以前アメリカ人の生徒さんに日本語で日記(ブログ)を書くことを教えていたことがある。レッスンの3日前までに下書きをメール添付で送信してもらっていたが,彼女の日本語文は「旅行中にベッドのバグに食べられて,病院に行きました」というもの。文脈からも何のことかさっぱりわからない。ベッドでバッグに入っていた何かを食べて,食あたりにでもなったのか…?レッスン時に聞いてみたら,ナント「トコジラミにかまれて」ということだった。トコジラミはbed bugsということを知った。シラミはlice(よくriceの発音の区別で出てくる)という単語しか知らなかったので,勉強になった。
私が住んでいるミシガンの地域は害虫が少ない。蚊は水辺を除いてはいないし,ムカデやゴキブリは一度も見たことがない。ナメクジはユリの球根や雨上がりに庭先に発生することもあるが,簡単に駆除ができる。ハエも猛暑時にドアを開けたすきにまれに室内に入ってくることがある程度。花をたくさん植えているので,蜂は仕方ないか...。
一時帰国中に家族と日本語で話していた時,主人が「えっ,イラン(Iran)がどうしたって?」と口を挟んできた。政治の話だと思って目をキラキラさせて会話に加わろうとしたのだが...「イラン」は「要らない」のこと。また,「スンナ」と言えば「何,(イスラム教の)スンニー派(Sunni)がどうしたって?」と割ってくる。「すんな」は「するな」という意味。
...主人は,この方言に心底がっかりした様子であった。