外国に住んでいる日本人を日本の俳優などが訪ねるというTV番組がある。
旅人であるインタビュアーの質問…「(その人生に)後悔はありませんか」。
…恐らく悪気はなく,自分の生き方とあまりにもかけ離れているために思わず口を突いて出てきたのだろう。しかし聞かれた方はどうだろう。「あなたの生き方は全く理解できないのですが」とか「内心,後悔しているはずだと思うんですが」と言わんばかり。他を排除し見下したようで非常に無神経な問いではないか。
「後悔しています」と返されることはないだろうが,もしそう言われたらどう返答するつもりか。「やっぱりそうですよね」と同意?「そんなことないんじゃないですか」と否定?それとも「愚かな人生の選択をしましたね,かわいそうに」と同情?はたまた「私はそういう生き方をしなくてよかった」という優越感…?
一方「後悔していません」と言われれば,恐らくテレビ番組上の答えであり,強がりにしか聞こえないんではないかと思う。こう言われても自分の物差しでしか計れないから,「本当は後悔してるんでしょ」とでも言いたげだったり。
この質問に対する答えは,No Win situation(勝ち目のない状況)。つまり,直接するような質問ではないということだ。
そもそも,人生とは「後悔している・していない」と白黒はっきりつけて言えるような簡単で浅いものではなかろう。人様の人生,ましてや初対面の人の生き方に判断を下すなんて…テレビ番組とはいえ,実生活を送っている人が相手である。失礼極まりない。
「後悔ないか」と聞かれたら,「あなたはどう?」と逆に聞いてみるのもいい。
旅人である女優が,「(外国人の)ご主人に出会われて自分はすごく変わった感じ?」に続いて「ご自身の人生を振り返ってどんな感じがしますか」という質問をされた。何ていい聞き方!!心にすうっと入ってきた。この女優は「後悔ないですか」のような無神経な聞き方はしないと思っていたが,やはり!言葉に心があり洗練されて,まろやか!
聞き出すことが仕事とはいえ,相手が気持ちよく話せる聞き方が大事。
あの時ああしていれば,というのは誰にでもあるだろう。異なる選択をしていれば違う人生であったろうが,その時の決断はその時点では最良だと思ってしたはず。しかし,自然災害に不慮の事故や病気,失職,犯罪に巻き込まれるなど…自分だけの力ではどうにもならないことばかりという現実。いろんな影響を受けるのが人生だから,過去のことについて「あんなことしなければよかったね」というのは無意味なこと。
自分の人生をしなやかに受け入れてこそ,人の生き方をも尊重することができると思う。