日本語の試験(JLPT)で,例えばこういう問題があるかもしれない。
( )スープはおいしくないので,今のうちに早く頂きましょう。
1.寒い 2.冷たい 3.冷えた 4.冷めた
英語でhot summer (暑い夏)もhot soup(熱いスープ)も,同音の「アツイ」。そのため,cold winter(寒い冬)から考えて,cold soupを「寒いスープ」と間違う。
冬に椅子に腰かけている幼い子どもさんには「足が寒いかもしれないので,ひざ掛けを使ってね」とつい言ってしまう。間違っていると思いながらも・・・。
「寒い」を名鏡国語辞典で引くと…「気温や体全体で感じる温度が,適温より低いと感じる」と載っている。つまり,顔や手足など体の一部分だけが寒く感じるのは,「寒い」ではなく「冷たい」なのである。「手が冷たい」,「足元が冷える」が正しい。
「耳が寒い」などのような言い方をする人が多いため,正しいような気がするかもしれないが,どこかぎこちなく不自然だなと思うはず。しかし,かわいく幼い響きがあるので,わざと使う人もいるだろう。
「冷たいスープ」というのは,もともと冷たくして出すように調理された冷製スープのことを指すことが多い。まあ室温にもよるので,冬は冷蔵庫に入れたように冷たくなることはあるが。小説などでは孤独感を表すために,意図的に「冷めたスープ」ではなく,「冷たいスープ」と表現する場合もあるだろう。
「冷えたビール」と「冷めたビール」はどうか。前者は冷蔵庫で冷やし冷たくしたものだ。後者は,間違い。「冷める」は「熱くした物の温度が普段の温度まで下がる」ことなので,正しくは「ぬるくなったビール」。
最初の問題の答えは,4。
子どもには,わかりやすい,知っていると思う日本語で話そうという意識が働いてしまって,間違った日本語で会話する。「言わんとしていることは伝わるからいいか」とか「せっかく日本語を使っているのだから訂正すまい」…そうやって,外国ではただでさえ日本語に触れる機会が少ない子どもたちの日本語力はさらに低くなる・・・。
インターネットの普及から,無料で一個人によって書かれた活字を日常的に読むことができるようになった。つまり,校正なしの間違いだらけの文章表現があっという間に広がるということ。
今後,日本語力は外国人学習者の方が上ということにもなりかねない。非常に恐ろしい。気をつけねば,と思う。