「お金を割る」と聞いて,「硬貨をカナヅチで真っ二つに割るのか?」と思う方も多いかもしれません。

 

私の実家のある地域では,「あっ,一万円札しかない。誰か五千円に割れない?」というように普通に使われている。

 

つまり,「お金を崩す」という意味。もちろん共通語の「お金を崩す」も使われないことはないが,どうもくすぐったく都会っ子ぶっているようで使えない。

 

日本語を教えるようになってから,テキストにある選択肢を見て,「お金を割る」は方言だと知ったのだから恥ずかしい限りです。

 

以下のような(  )に正しい言葉を入れる問題。

 

問:細かいのがないので千円札を(  )来る。 1.崩して 2.切って 3.壊して 4.割って

 

この問いを見て,「1でも4でもいいが・・・?もしかして」と気づいたのである・・・!

 

3の「壊して」は英語の"break a ten thousand yen note(一万円札を崩す)"のbreakですが,作問者は九州出身者かもしれません。

 

「割る」は「分ける」に音が似ているので,一万円という金額は減らずに分割しただけというイメージ。一方,「崩す」は山積みになっていたものが壊れ溶けるなどして消えてしまうマイナスイメージがある。う~ん,「割る」の方が感じが出ているんだけどなあ…。

 

「鉛筆を研ぐ」も,何と渡米するまで方言だとは知らなかった。会話ではもちろん,学級通信などの半公的文書でも普通に使っていたからだ。これを大阪に嫁いだ友人に話すと,「わかる!私も知らなくて笑われた。『鉛筆は削る』でしょ~と」。

 

もちろん,「鉛筆削り」も「鉛筆研ぎ」と呼ばれています。

 

「崩す」と同様,「削る」なんて無理,今更・・・かなりの抵抗がある。これまた「割る」と同じく,「研ぐ」は「とがっている」という言葉に似ているので,先端を鋭利にしている感じが出ているじゃないか。削り節は,削り取った部分を使うのであって,鉛筆はその逆。削りかすではなく,焦点は鉛筆本体にあるのですから。「包丁を研ぐ」ように,鉛筆も本体の形を鋭利にするためなので,「研ぐ」の方が感じが出ると思うのだが・・・。