もう何年も前のことですが,「(仕事をする時)たまにカフェでコーヒーを飲む」と言ったところ,在米生活が長い方に「金持ち~!」と言われて驚きました。

この反応,日本人の方に意外に多いので,ちょっと考えてみました。

アメリカのカフェで飲むといっても,普通のコーヒーは2ドル(200円強)です。しかも,おかわり自由だったり,割引になるポイントがついたりするところも多い。おかわりできる種類も豊富である上に,紅茶(これも種類が豊富)でもOKだったりするので,飲み飽きることもありません。

さらに,昨年の夏は「1か月間コーヒー無料」(キャンペーン?)で飲み放題でした。

カフェ数も多く店内も広いため,一日いても店員さんも全く気にしていません。日本でカフェ(スターバックス)といえば,「おしゃれな若者の憩いの場」というイメージでしたが,アメリカでは赤ちゃん連れからお年寄りのグループまで実にさまざまで,非常に庶民的。勉強の個人レッスン,読書や編み物サークル,チェスにドミノ,すごろく(バックギャモン)に興じる大人も結構います。

私にとって「カフェでコーヒーを飲む」という行為は,「仕事に拘束させるための時間・場所を買う」ということ。

よって,カフェにおしゃれさや高級感は全く求めていません。テーブルがぐらつかなかったり,電気が明るかったりすればOKです。

カフェのコーヒーは日本の自販機で缶コーヒーを買うのとは全く異なります。自販機のコーヒーは喉がかわいたり寒かったりなど飲み物自体が必要な時でした。飲んだらそれでオワリ。ですから,私にとっては「日本の缶コーヒー(約130円)の方が,アメリカのカフェ内で飲むコーヒーより高くぜいたく品」という認識です。

カフェのコーヒーは自分を始動させるガソリンのようなものであり,カフェは投資のための環境設備と言えます。人の出入りが多く活気があるので,外部からのエネルギーももらえます。「テレビも見ずうたた寝もせず,プロの淹れたおいしいコーヒーを飲みながら3時間ほど仕事に集中できる」のです!しかも,たった2ドルで。

額にして2ドル(約200円)のコーヒーを月に10回飲んだとしても,わずか2000円です。友達とちょっといいところにランチに行けば,一回で2000円なんてあっという間に飛んでしまうでしょう。カフェで1回につき3時間仕事をするとして10回行けば,2000円で何と30時間分の仕事時間になります。勤務時間が決まっていない自由業者にとっては,だらけないためにも自主拘束は必要不可欠!

「友達とレストランでお昼ごはんを食べた」方がはるかにお金は出ているのに,それでも「金持ち~」という反応も意識もないと思われます。

これが,「毎日たばこを10本吸う」と言っても同じでしょう。「金持ち」ではなく,「吸い過ぎには注意してね」と健康面を心配される。私はたばこは吸わないのでわかりませんが,吸った方がリラックスして仕事の能率が上がるということが考えられますので,この点においてはコーヒーに似ています。

私はアルコールも嗜まないのですが,「ワインが好きで毎日飲む」だったらどうか。アメリカでは低価格ワインも多いけれど,コーヒーよりはるかに値が張るはずです。外でも家でも,ワインを飲みながら仕事をするというのは考えにくいので,これは完全な嗜好品でしょう。そして,ワイン(他のアルコール飲料)が好きといっても,誰も「金持ち」とは言わないのです。

主人は,本を書く時にはモカ(4ドルちょっと)を必ず飲むので,大金持ちということになるのでしょう(笑)。しかし,モカ・パワーがあれば集中して書けます。4ドル払わなければ,うちで寝転がってテレビを3時間見ている可能性が高い…。主人が休みの日に私がうちでクラスをする場合は,主人はカフェに執筆のために出かけています。

コーヒーは,税金がかかるかどうかという基準はなくとも,たばこやお酒類とは異なるものです。

明日の米が買えない暮らしであれば,コーヒーはぜいたく品です。「レストランでの食後に場所を変えてわざわざコーヒー一杯だけのためにカフェに行く」というのも,まあぜいたくな感じもします。何より場所を変えてまで飲むのはメンドウですし。日本の職場の同僚とは1次会は料亭,2次会はカラオケ,3次会はバー…と場所を変えて深夜まで付き合っていましたが,これはもはや遠い過去のこと。

さらにいうと,「コーヒー一杯が金持ち」という方々は,皆衣類や装飾品などにお金がかかっていそうに見えます。衣類や化粧品類,アクセサリー・食事・お酒にはお金を惜しまないので,「コーヒーを買わない代わりに,高級化粧品が買える」というのかもしれません。しかし,くどいようですがコーヒー10杯でも2000円にしかならず,高級化粧品にははるかに及ばないので,節約しているようで実は損をしていると思われます。

「ワインが好き」と言えば「カリフォルニアワイン,それともフランス?」や「赤ワインのおススメは?」。

「タバコが好き」と言えば,「吸い過ぎに注意してね」や「一日に何本くらい吸うの?」

「コーヒーが好き」と言えば,「…」。

ま,特に言うことがないので,単に「金持ち~」と返すのかもしれませんネ。