シカゴの結婚式(主人の父方の親戚)は,Wedding Eve Bash(前夜祭)・式&披露宴・お別れ会(After Wedding Brunch)と3日間にわたって盛大に行われました。

この3日間ずっと,ハンディキャップを持ったような顔の少年が写真を撮って回っていました。親戚の子どもでも,プロのカメラマンでもなさそうなこの少年…。

花婿の母(主人の従姉)を,マムと呼んでいたこの子の名前はガッサン。イラクからの難民でした。実の母親は目の前でISISに殺害され,父も亡くし,兄と妹と共に戦争孤児としてアメリカに送られてきたのです。ハンディキャップがあるのではなく,すさまじい光景を目の当たりにしたために顔がゆがんでしまったのです…。

花婿の両親夫妻やカトリック教会の牧師さん達が,心をつくして世話をしていました。お別れ会の食事では,一緒のテーブルで話をすることができましたが,英語が話せないためすべてアラビア語です。

結婚式のようなフォーマルで人生最大ともいえる大イベントにおいて,難民の子どもを参加させることにも衝撃を受けました。主人は,「この子には被害者であり,温かく迎えられる場が必要なのだ」と。

ガッサンは,私たち夫婦のことを片言の英語で「エンジェルのような人」と笑顔で言い,アラビア語で「シカゴに住んでいないなんて残念だ!」と本気で悔しがりました。私たちはただ座って話をしただけなのに,そのような普通のことがガッサンには非日常で幸せなことなのです。

主人が執筆している本は,中東の政治や中東を舞台にした小説です。一人でも多くの人に独裁政治や戦争で苦しんでいる人々の実態を知って欲しいという願いからです。

主人の父のお墓も,爆撃されてもうありません。戦争は本当にすべてを,残った者の心をも破壊してしまいます。

ミシガンに戻ってきてから,ガッサンのことが頭から離れません。今日は主人と相談をし,まずはガッサン達兄妹に簡単な英語の本やお菓子などを送ることにしました。