「また会おう・・・・秀頼と千姫。400年前の約束。」
 
 
大阪夏の陣。

徳川家と豊臣家の戦い。
 
祖父家康の言いがかりが元で始まった戦。

豊臣家に味方する大名が次々に討ち死にし、大阪城に火の手があがっていた。

燃えさかる城。

7歳で嫁いできたときは、まさかこんなことになると夢にも思わなかった。

「姫様、そろそろ・・・・・」

「いやだ、私は行きたくない!」

侍女の言葉を遮り私はわんわんと泣いた。

祖父と父に夫である秀頼様と義理の母である茶々様の助命を嘆願するため

私は城からでることになった。

しかし、あの二人が助けてくれるとは思えない。

天下のためなら二人を殺すのを厭わないだろう。

もしこのまま、城を出てしまったらもう二人には会えないのではないかと

思うほど立ち上がれなかった。
 
そんなとき、私の泣き声が聞こえたのだろう秀頼様が部屋に入ってきた。

「千、どうした?なぜ泣いている?」

私の様子をみて秀頼様は心配そうな顔をしている。

「秀頼様、私はあなたのそばにいたいのです。父と祖父はきっとお二人を

助けてはくれません。それならばいっそ…」

そう言いかけたとき、秀頼様は私をぎゅっと抱きしめた。

「千、よく聞いてくれ。もし、私が死ぬようなことがあれば、来世で必ず

そなたを見つける。そのときは本当の夫婦になろう。」

「秀頼様…」

涙を浮かべ私は秀頼様をみる。秀頼様は頭を撫でながら言う。

「来世でこの城がまだ残っていればだが、ここで待ち合わせしよう。」

約束だと秀頼様は私の額に口づけた。




「千、徳川の者が来ている。早く支度せよ」

障子の外から義理の母茶々様の声がする。

「はい、母上様。」

涙を拭い私は立ち上がる。



「千。またな」
 
秀頼様は笑顔を浮かべそういう。

「はい、秀頼様。」
 
私も笑みを浮かべそう言い部屋からでた。
 
 
それから私は祖父と父に、秀頼様達の助命を嘆願したが

聞き入れられず、秀頼様達は山里丸の櫓(やぐら)で自害した。

秀頼様には二人子供がいたが、一人は男子で処刑され

もう一人は女子で私の嘆願により尼寺に入った。

せめても祖父と父の罪滅ぼしなのだろう。

私はその後、本多忠刻殿の元へ嫁ぎ70歳まで生きた。
 
 
それから約400年後。

私は時を経て平成の世に生まれ変わった。

昔のように戦もなく平和な世界。

一夫多妻制ではなく、一夫一妻制。

今は徳野千香として生きていて。現在24歳で出版社で働いている。

今回、歴女特集で旅行雑誌の記事を書くため大阪城にきた。

というのは口実で、ここにくれば秀頼様に会えるのではないかと

わずかな期待をしていた。

懐かしい大阪城。

私は確かに400年前こここに住んでいた。

前世の記憶は7歳のころ、偶然大河ドラマで戦国時代ものがやっていて

大阪夏の陣の話がやっていて思い出したのだった。

山里丸付近を歩いていると石碑を見つけた。


「豊臣秀頼、淀殿。自刃の地」

あのとき私も一緒にいれば…

もっと父と祖父に縋り付いて助命嘆願していれば

400年前のことなのに、なんともいえない悔しさ、悲しみが襲い
 
目から涙がこぼれる。

「秀頼様…ごめんなさい…」

涙を浮かべながら石碑に向かって言う。意味なんかないのに・・・・・
 
そんな時だった。

「千…千なのか?」

振り向くと同い年くらいの男性がいた。

しかし、忘れもしない。彼こそ私の夫、秀頼様だった。

「はい、千です…」


涙を浮かべながら笑みを浮かべて言う。

秀頼様はかけより私の頬に手を添えた。

「やっと会えた。約束守ってくれたんだな」

「はい…」

声にならず、泣く私を秀頼様はぎゅっと抱きしめた。


「もう誰も俺たちの邪魔をするものはない。千、400年前の約束を覚えているか?」

「はい秀頼様、覚えております」


来世で会ったら…本当の夫婦になろう。

今こそ、その約束を果たす時。

あの時のまたねは、また会う時の約束。