華ノ幕末~恋スル蝶~/GREE
<イベントストーリー維新編です。最後は高杉華艶ルートに
分岐します>
主人公(ここあ)で変換お願いします。
維新編第三章一話
船に乗り込むと、すぐに坂本さんは船員のところに行って
話し始めた。
どうやら、本当に出港する予定はあったようだ。
(よかった。私だけのためだったら、気が引けてしまう)
けれどその分、私にかまう暇はないらしく、忙しそうに走り回っている。
坂本
「その荷物は、そっちじゃないぜ。こっちに運びなおしてくれ」
(邪魔にならないよう、隅にいたほうが良さそう)
そう思ってきびすを返した瞬間、誰かにドンとぶつかってしまった。
「きゃ、すみません」
とっさに、三味線を抱きしめる。
(これだけは落とすわけにはいかない・・・)
「っ!」
ぎゅっと三味線を抱え込むと、誰かの手が三味線ごと私の身体を支えた。
??
「嬉しいことしてくれるね」
その時、覚えのある煙草の匂いがふわっと鼻をくすぐる。
(あ、これは・・・)
顔をあげると、艶っぽい笑みが覗き込んできた。
高杉
「まったく、気づくのが遅いんじゃない?」
「高杉さん」
高杉
「ここあ、偶然だねえ」
「どうして、ここに?」
高杉
「坂本とは古いつきあいだからね」
高杉
「出港するという噂を聞いたから、忍び込んでいたってわけ」
「じゃあ、坂本さんには内緒で」
高杉
「いちいち断らなくても、あいつは怒らないからね」
「・・・はあ」
(確かに、そんな気がする)
高杉
「はい、これ」
高杉さんが三味線を、しっかりと私に持ち直させる。
潮の香りと煙草の香りが混じって、私を包んだ。
「ありがとうございます」
高杉
「で、ここあが坂本の船に乗っている理由は?」
「それは・・・」
とまどう私の三味線をちらりと見やる高杉さん。
維新側第三章二話
高杉
「ふぅん。三味の修理に行くの?」
「あ・・はい」
高杉
「それなら、ますます俺が同乗しててもいいってことだろ」
「それは、坂本さんに聞いてみないと」
と、そこへ甲板を走る足元が賑やかな中、坂本さんがやってくる。
坂本
「わっ、高杉か」
高杉
「やあ、乗せてもらってるよ」
坂本
「相変わらず風のような男だな」
坂本
「わかった、その代わりここあちゃんの相手をしてやってくれ」
坂本
「こっちは、ちょっと忙しくなってしまった」
高杉
「言われなくても」
すぐに坂本さんは行ってしまう。
高杉
「というわけだ。二人で、よろしくやろうじゃないの」
「はあ・・・」
にやりとする高杉さんに、私は頷いた。
(でも、船の上で、なにをしたらいいのかしら?三味線も壊れてるし)
高杉
「ここあは、釣りをしたことはある?」
「釣り・・ですか?いいえ・・・」
高杉
「くくっ。そんな釣り自体知らないような顔をされるとはね」
「すみません」
高杉
「それでいい。何も知らないお前に、いろいろと教えるのが面白いんだから」
「船の上からでも、釣りはできるんですか?」
高杉
「当然。とりあえず、三味は船内の部屋に置いておこうか」
「はい」
私から三味線を受け取る高杉さん。
高杉
「うらやましいねえ」
「えっ」
高杉
「ここあの熱で、三味がすっかりあたたまってる」
「あ・・ずっと抱いていたから・・・」
高杉
「それくらい、俺もここあサンに抱かれ続けていたいんですけど?」
「・・・っ」
流し目をされながら言われ、私は真っ赤になった。
「からかわないでください」
高杉
「正直な感想なんだけどね」
口の端をあげて、余裕の笑みを浮かべられる。
(やっぱり、からかってる。だって、私だけが焦ってるみたい・・)
維新編第三章三話
三味線を船室へと丁寧に仕舞うと、早速釣りを始めた。
高杉さんの横に座ると釣竿を渡されたので、見よう見まねで
海に釣り糸を垂らす。
「これでいいんですか?」
高杉
「ああ」
「それで、どうするんでしょう?」
高杉
「ただ、待てばいい」
「はあ・・」
高杉
「・・・・・」
高杉さんは釣竿を片手で持ち、のんびりと座っている。
「本当に、なにもしないんですか?」
高杉
「まぁね。ただ、待つだけ。それが釣りってもんでしょ」
「はぁ・・・」
高杉
「なにか手ごたえがあったら、俺に言いなさい」
「そうします」
私は真剣な顔で、竿を握りしめた。
(手応えって、どんな感じなのかしら?)
しばらくそうしていると、いきなり釣竿の先がぐぐっと
引き込まれるように動いた。
「あっ、高杉さん。なにか」
高杉
「へぇ、さっそくあたりかな?」
すぐに高杉さんが、そばに来てくれる。
そして、背中にぴったりとくっつくようにして寄り添ってきた。
高杉
「じゃあ、釣り上げるよ」
「どうしたら」
高杉
「お前は俺に身を任せていればいい」
言われながら、ぐいっと釣り竿を引いた。
背中側に倒れそうなのを、しっかりと高杉さんが防いでくれる。
高杉
「かなりの大物か。しっかり竿を握って」
「は、はい」
高杉さんが竿を握る私の手に、自分の手を重ねて助けてくれた。
そのおかげもあって無事に釣り上げる。
「やりました」
高杉
「エライね」
褒められたことがうれしくて、私は満面の笑みだ。
それを、高杉さんは、目を細めて眺めている。
維新編第三章四話
高杉
「さてと、もうひと釣り・・・と言いたいところだけど」
高杉
「どうも風向きがあやしいね」
「風向きが・・・」
高杉さんが目を海へと向けた。
見れば、黒い雲がこちらへと向かってきている。
「あれは・・・雲が光ってますよ」
高杉
「雷だ。これは、かなり荒れそうだね」
「えっ」
高杉さんの顔が、いつになく真剣になる。
(なにが・・・来るの?)
瞬く間に活気づいていた船内が殺気だってきた。
嵐は私たちの頭上に飛ぶようにやってくる。
「きゃああああっ!」
ひどい嵐が、あっという間にやってきた。
吹きつける暴風と、雨。
それに雷が、船のマストさえも折ってしまう。
坂本
「くそっ」
坂本さんは、その修理に奔走している。
高杉
「ここあ、こっちに来い」
「高杉さん」
今にも海へと放りだされそうだった私を、高杉さんが抱きしめた。
高杉
「しっかり俺にしがみつきなさいよ」
「はい」
高杉さんの背中へと腕をまわして、ぎゅっと着物を握りしめる。
高杉
「ここあ、息を止めろ」
「え・・・っ」
「ッ!!」
その途端大波が、私たちの体の真上からかかってきた。
高杉
「お前を絶対に離しはしない」
高杉さんの力強い言葉が、頭の中に響く。
その言葉を頼りに、ひたすらに高杉さんにしがみついた。
「船がしずんでしまわないでしょうか」
高杉
「沈むわけないでしょうが。この船を操ってるのは、坂本だからね」
「っ」
高杉
「それに例え沈んだって、俺があんたを死なせやしない。命にかえても」
いつも飄々としているのに、熱のこもった言い方に驚く。
それに、高杉さんがそうまで言ってくれるなら信じられると思えた。
(大丈夫。高杉さんと坂本さんがいるから)
維新編第四章一話
翌日、私と坂本さん、高杉さんは無事に京の町に戻っていた。
坂本
「昨日はどうなるかと思ったが、無事に帰ってこれたな」
高杉
「もっと坂本の腕がよければ、あんな死ぬ目にあわなかったんじゃないの?」
坂本
「そんなこと言うなよ。あれでも、かなり頑張った方だぜ」
高杉
「そうかねぇ」
「あ、あの」
ふたりの言い合いの間に、私は割って入った。
「高杉さんは、坂本さんの腕なら、絶対に大丈夫だと言ってましたから」
高杉
「ちょっと、ネタばらししたらダメじゃないの」
私の言葉に高杉さんは、少し照れた顔をする。
坂本
「なんだ。素直じゃないなあ」
坂本さんはそんな高杉さんに口元を緩めた。
(・・・もしかして、ふたりともわかってて、じゃれてただけなのかしら)
余計なことをしたのかと肩をすくめる。
坂本
「で、ここあちゃん、三味は直ったんだろう?」
「はい」
私は腕の中の三味線を見つめた。
坂本
「もう、意地悪な高杉にはめられないようにしないとな」
高杉
「俺がだましたような言い方をしないで欲しいねえ」
坂本
「わざと、いじめたくせに」
高杉
「それも愛情じゃないの」
坂本
「ほらね。こいつは、昔から好きな子は、いじめるやつなんだよ」
坂本さんは、私の肩を抱き寄せつつ、告げ口するように耳元でささやく。
吐息が、直にかかって困ってしまう。
高杉
「そういう坂本こそ、ここあに近づき過ぎなんじゃないの?」
坂本
「うらやましいだろ?」
見せつけるように、ますます私を抱き寄せた。
高杉さんはむっとした顔をすると、坂本さんの足をそっと引っ掛ける。
維新編第四章二話
坂本
「わっ」
坂本さんがこけそうになった。
でも、高杉さんは涼しい顔。
高杉
「まったく、不注意な男だねぇ」
(また、じゃれてる・・・)
坂本
「俺がここあちゃんと仲がいいからって拗ねるなよ」
高杉
「俺の方がここあとの仲は深いけどね」
高杉
「ま、せっかく三味が直ったんだ。このまま花見に行こうじゃないの?」
坂本
「それは、いいな」
高杉さんの誘いに、坂本さんはさっきまでのことはすっかり忘れた
ように話に乗った。
早速、私たちは花見の名所へと移動して、ささやかな宴を始めた。
無事に嵐を乗り切れたお祝いの後、気持ちのよい花見酒が続く。
途中、ふわーっと風が強くなり、一斉に花びらが散りだした。
「きれい・・・・」
それを、うっとりと見上げる。
花の香りにも包まれた。
坂本
「そうだな」
高杉
「・・・・・」
「あら?」
ふと見ると、高杉さんは酔いがまわったらしく、寝入ってしまっている。
坂本
「いい寝顔だな」
「はい」
(寝顔は少し幼く見える、可愛いと言ったらまた意地悪されそうだけれど)
坂本
「寝ると、邪気が抜けるんだろうね」
「邪気・・・ですか?」
坂本
「今は、意地悪しそうにないだろ?」
「はい。あ・・・」
失言したと思って息を飲むと、坂本さんは柔らかく微笑んだ。
坂本
「いいんだよ。たまには、こういう高杉もいいもんだね」
「・・・そうですね」
ふわふわっと桜の花びらが、坂本さんの唇に張り付く。
「あ・・・」
思わず手を伸ばした。
坂本
「・・・っ」
柔らかい唇の感触を感じて、ぱっと赤くなった。
さっと花びらを取って、手を引っ込める。
坂本
「取れた?」
「はい・・・」
うつむいて、小さく頷いた。
坂本
「可愛いね」
「えっ」
維新編第四章三話
お返しとばかりに、坂本さんの手が伸びる。
そして、目元のあたりを、優しく撫でられた。
「花びらが、ついてますか?」
坂本
「ああ」
(でも、そんな感じしなかったのに・・・)
そのまま、頬を撫でられ、首筋にもすっと掌が滑り落ちる。
「・・・っ」
思わず、肩をすくめた。
坂本
「可愛い仕草だね」
「・・・坂本さん?」
坂本
「ここあちゃんは、眠くないかい?」
優しく問われ、首を振った。
坂本
「俺は、少し眠くなってきたな」
「・・・それじゃあ、少し横になりますか?」
「それとも、高杉さんを起こして帰りましょうか?」
坂本
「いや、ここで・・・」
「えっ」
坂本さんが私の肩に頭を乗せてくる。
「そこで・・・いいんですか?」
坂本
「ああ、いいよ」
「でも、不安定ですよ」
坂本
「じゃあ、ここあちゃんが支えてくれたらいい」
「・・・っ」
言われるまま、私はそっと坂本さんの腕に手を添えた。
「やっぱり、横になった方が」
坂本
「もう寝たから聞こえない」
目を閉じて、そんなことを言う。
(返事をしておいて、もう寝たって・・・)
わかりやすい嘘に、くすりと笑ってしまった。
わずかに肩が揺れるから、慌てて動きを止める。
維新編第四章二話
(いけない。坂本さんが肩から落ちてしまう)
そう思って、そっと添えた手に力をいれて、抱き寄せた。
坂本
「いいな」
ぱちっと、そこで目を開けられ、どきっと視界が揺れる。
「やっぱり、起きてますね」
坂本
「ここあちゃんに抱き寄せられちゃ、目も覚めるよ」
「それじゃあ、もう起きますか?」
坂本
「今度は、膝枕で寝たいね」
「えっ」
さっと視界から坂本さんの姿が消える。
視線を落とすと、坂本さんがもう膝の上に頭をちゃっかりと乗せていた。
「坂本さん?」
坂本
「もう、寝てる」
そういう彼の顔に、花びらが、はらはらとかかる。
それを、私は一枚一枚はらっていった。
(放っておいたら、花に埋もれてしまうのかしら?)
それはそれで、坂本さんに似合う気がする。
坂本
「どうして笑ってる?」
ぱっと目を開いて、私を見あげる。
「あ、笑ってますね。私・・・」
坂本
「俺の寝顔が面白かった?」
「花のある男の方だと思っていただけです」
坂本
「ふうん」
ぴょんと勢いをつけて坂本さんが起きあがった。
「・・・っ」
坂本
「つまり俺が男らしくて色気があって、心魅かれるって話だ」
「えっ」
坂本さんは目を見開く私のそばへと顔を寄せてくる。
甘い吐息が、頬にかかった。
坂本
「桜の花の下で接吻というのもいいね」
今にも唇が触れ合いそうになったとき、咳払いが聞こえた。
高杉
「・・・んんっ。俺もいるんだけど?」
「あっ」
坂本
「残念、ここまでか」
さっと私は、坂本さんから身を引く。
坂本
「なんならもっと寝ていていいんだぜ」
坂本
「いや、ちょっとみぞおちを殴って気絶を」
高杉
「よしてほしいねえ」
坂本
「冗談だ」
(今、目が本気だったような・・・)
坂本さんと高杉さんのやりとりに私はハラハラしてしまった。