華ノ幕末~恋スル蝶~/GREE
<イベントストーリー維新編です。最後は高杉華艶ルートに
分岐します>
主人公(ここあ)で変換お願いします。
維新編第一章一話
「それでは、今日は蘇芳さんのもとに坂本さんがおいでになるんですね」
蘇芳
「そうなのよ。だから、後は頼むわね」
「はい。私のところにはどなたがいらっしゃるんですか?」
蘇芳
「長州の高杉さんよ」
「高杉さん・・・」
何度か華艶楼を訪れてくれた人。
(でも、なんだか、このお店を怪しんでいるところがある方・・・)
実際、地獄とつながっている店なので、怪しまれるのはわかる。
坂本
「おっ、花艶楼のきれいどころが揃ってるね」
蘇芳
「あら、龍ちゃん。来たのね」
坂本
「ああ、それじゃあ行こうか。またね、ここあちゃん」
私に別れを告げると二人は、さっと部屋へ入って行った。
「はぁっ」
高杉
「その溜息にはどんな意味が込められているのかねぇ」
「あっ」
ふり返ると、高杉さんが柱に体をよりかかっている。
「高杉さん」
高杉
「俺の相手は、ここあだろ?」
「はい。どうぞ、お部屋へ」
そっと高杉さんを部屋へ促すけれど、高杉さんは口元に弧を描いたまま動かない。
「高杉さん?」
高杉
「そうだな。お前と二人きりも捨てがたいけど」
高杉
「たまには坂本と一緒に、蘇芳の部屋でも面白いと思わない?」
「だ、だめです」
即座に言い返してしまう。
高杉
「・・・へえ。えらく警戒するじゃないの」
「そういうわけじゃ・・・ありません」
「無粋だと思っただけです。ここは遊郭ですよ」
高杉
「ま、確かにね」
高杉さんは肩をすくめた。
「高杉さん、そっちは違う廊下です。こちらへ」
高杉
「ああ、そうだったか?」
(わざと迷ったふうに見せかけてるのかしら・・・・)
(高杉さんは花艶楼の秘密を探っているみたいだから)
「では、こちらへ、どうぞ」
高杉
「わかったよ。今、行く」
高杉
「ここあが相手してくれるなら、不足はないからねぇ」
「・・・・・」
(掴めない人、どこまでが本気でどこまでが冗談なのかしら)
維新編第一章二話
座敷に入ると、高杉さんは窓際に座り、すっかりくつろいだ様子だ。
手には三味線を持っている。
(とても、絵になる人・・・)
初めて会った時から、そう思っていた。
高杉
「それにしても、意外なんだよねぇ」
「え?」
お酌をしようとしていた手を止める。
高杉
「どうして坂本は、こんなきれいな花魁よりも蘇芳を選ぶのか」
「・・・・蘇芳さんの方が、よほど綺麗ですよ。それに女性らしいし・・・」
高杉
「それはどうかな」
「・・・っ」
高杉
「坂本と蘇芳は、いつもこそこそしてるように見えるんだよね」
「こそこそなんて・・・第一、逢引は、ひっそりとするものです」
高杉
「ふぅん。俺は、ここあとはおおっぴらに、いちゃつきたいけど?」
「あっ」
いきなり手首を取られて、胸元へと抱き寄せられた。
ふわりと、煙草のいい匂いがする。
高杉
「へえ、なかなかそそる表情じゃないの」
高杉
「昔から、坂本の好みはここあの方なんだよねぇ」
「えっ」
思わぬ言葉に、私は高杉さんを見上げ、目をまるくした。
高杉
「なに、気づいてないの?」
「なにを、ですか?」
高杉
「坂本がときどき、ここあを艶っぽい目で見てること」
「し、知りません」
さっと顔をそむける。
高杉
「どうかな?」
高杉さんは私の顎をとると、間近に顔を寄せてきた。
高杉
「俺としては、すぐに食べてしまいたくなる美人だけどねえ」
「っ!」
そんなことを言い出す高杉さんの視線や仕草は、ぞくっとするほど魅力的だ。
維新編第一章三話
じっと見つめられ、ごくりと唾を飲み込む。
「食べないでください」
震える声で返すと、妖しく微笑まれた。
高杉
「馬鹿だね。そんなことを言われると、余計可愛がりたくなる」
満足げに目を細める高杉さん。
「・・・っ!」
すいっと顔が近づいて、ぺろりと鼻の頭を舐められた。
「きゃっ」
ぎゅっとまぶたを閉じる。
高杉
「そのしぐさ、どうぞ食べてくださいって言ってるようなものなんだけどねぇ」
高杉
「ちゃんと覚えておいた方がいいんじゃないの」
「ええっ」
ぱちっと目を開くと、高杉さんが悪戯な笑みを浮かべていた。
「からかってるんですね」
高杉
「面白いからねぇ」
「離してください」
高杉
「やだ」
ぎゅっと私への拘束を、高杉さんが強くする。
高杉
「まだ、坂本と蘇芳との関係を聞いてないからね」
「そんなの・・・恋人です」
高杉
「へえ、あくまで白を切るってわけ」
「え、や」
すっと腰のあたりを撫でられて、体が跳ねた。
高杉
「じゃあ、体に聞くまでだけど」
「ダメです」
私は逃れようと、身を大きくよじる。
高杉
「そんなに拒否されたらますます燃える・・・が」
高杉
「今日はまだ我慢しようじゃないの」
「きゃっ」
高杉さんがいきなり腕を離したので、私は畳の上に転がってしまった。
そして勢いにまかせて、何かの上に体が乗っかてばきりと大きな音を立てる。
「えっ」
維新編第一章四話
高杉
「!!」
薄笑い以外の感情をあまり出さない高杉さんが、一瞬表情を変える。
「・・・っ!!」
あわてて体をずらすと、そこには三味線があった。
「ああっ!」
(どうしよう。私が乗ったから・・・)
ごくりと息を飲む。
高杉
「あーあ、まったくやってくれるね」
「すみません」
私はあわてて正座して、頭を畳にすりつけて謝った。
高杉
「そんなに謝らなくていいよ」
高杉さんは三味線を抱えると、おもむろにぴんっと弦を弾く。
が、バチンという音がして、弦が切れてしまった。
「ああ・・・」
(やっぱり、ダメみたい・・・)
ますます恥じ入って、その場で消えてしまいたい心境になった。
高杉
「ま、さすがに俺には直せなさそうだ」
高杉さんはあくまで口元の笑みを崩さないけれど、高杉さんがいつも
大事そうに三味線を扱っていることを知っている。
「すみません、すみません」
高杉
「もとは俺が手を離したのが、原因でしょうが」
高杉
「ここあが謝る必要はない」
私は、ぎゅっと胸のあたりの着物を握った。
(私が責任を感じないようにしてくれている・・・・)
高杉
「三味はこれだけじゃないから、ここあは気にしなさんな」
「あの・・・私が直せる人を見つけてきます」
高杉
「ん?」
「壊した責任がありますから。私にその三味線をあずけていただけませんか?」
高杉
「ここあに?」
「はい!絶対に直して見せます」
高杉
「へえ、言うね。ま、どうせ俺が持っていても直せないし、いいんじゃない?」
高杉
「そのかわり・・・」
高杉さんがぐっと顔を近づける。
高杉
「直せなかったら、ここあでぞんぶんに楽しませえてもらおうか」
私の気持ちを軽くするように高杉さんはからかい口調。
「・・・その時には」
高杉
「やっぱり、いいね。お前」
そして、私の方へと壊れた三味を差し出した。
それを丁寧に受け取る。
高杉
「お手並み拝見といこうか?」
「はい」
(どうにかしてこの三味を高杉さんに返してあげたい)
私は手にした三味線をぎゅっと抱きしめた。
維新編第二章一話
「昨日、ああ言って三味線を高杉さんから預かったものの・・・」
私は自分の膝の上に横たわる、壊れた三味線に視線を落とす。
「三味線って、どこに修理に出せばいいのかしら?」
思わずため息が出た。
「とりあえず、蘇芳さんに相談して」
一人つぶやいていると、すっと襖が開く。
坂本
「ここあちゃん」
「坂本さん?」
(どうしたのかしら、ここは私の部屋なのに)
坂本
「いきなり悪いね」
坂本
「さっき見かけたとき、なんだか頼りなさそうな顔をしてたから」
坂本
「気になって思わず押しかけさせてもらった」
「そうだったんですね」
(心配してくれたのかも・・・)
にこにこと微笑みながら、坂本さんは私の前に腰をおろした。
坂本
「ん?それは、高杉の三味じゃないか?」
「そうなんです。よくわかりますね」
坂本
「まあ、高杉とは古い仲だからね」
坂本
「とくにそれは高杉のお気に入りだ」
(やっぱり大切にしてたものだったんだ)
「私が昨日・・・壊してしまったんです」
坂本
「どれ?ああ、へこんでるね」
「・・・直すと言ったんですけど、どうしたらいいかわからなくて」
坂本
「なるほど。それで、落ち込んでいるってわけだ」
「・・・はい」
なにもかもを白状した私は、視線を落とす。
坂本
「心配しなくていい」
坂本さんは、豪快なしぐさで私の肩に手のひらを乗せた。
「えっ」
その手で何度か肩をぽんぽんと叩かれて、私は目を見開く。
坂本
「俺が、いい店を知ってる」
「本当ですか?」
坂本
「ああ、連れて行ってあげるよ」
「お願いします」
坂本
「よし、任せておけって」
坂本さんが自分の厚い胸板をどんっと叩いた。
その仕草の頼もしさが、私を安心させる。
坂本
「じゃあ、さっそく行こう」
「はい!」
促されるままに私は立ち上がった。
維新編第二章二話
坂本さんと連れだって、町へと出る。
「なんだか雨が降りそうな空模様ですね」
坂本
「そうだな、急いだ方がいいかもしれない」
私は胸元に高杉さんの三味線をしっかりと抱え込む。
雨で濡らすわけにはいかない。
坂本
「くくくっ」
「なんですか?」
きょとんとして返すと、坂本さんが顔を近づけてきた。
「っ」
耳元近くで、坂本さんがささやく。
坂本
「可愛いなって思っただけだよ」
「えっ」
坂本
「そうやって必死に三味を守ってるところがね」
「・・・これ以上壊したくないですから」
大真面目に返すと、また坂本さんは笑う。
坂本
「いいね。ますます気に入った」
そんなことを言われると、どきっとしてしまう。
昨日の、高杉さんの言葉を思い出すのだ。
高杉
「坂本がときどき、ここあを艶っぽい目でみてること」
「・・・っ」
高杉さんの声が蘇り、かあっと顔が赤くなる。
坂本
「ん?」
その変化に、坂本さんが目ざとく気づく。
坂本
「いきなり、紅梅の色になった。いや、今は桜の季節だから、桜色か」
すっと坂本さんが私の頬に手を伸ばした。
「あっ」
少し乾燥した指先が、頬を滑り落ちる。
坂本
「そんな可愛い顔をしちゃ、ダメだよ」
「・・・?」
坂本
「このまま、三味の修理は後回しにしてしまいたくなる」
「それは、困ります!」
私が慌てて返すので、坂本さんが白い歯を見せて笑った。
坂本
「やっぱ可愛いね」
坂本
「ここはここあちゃんに免じて冗談ってことにしておいてあげる」
(それって本当は本気ってこと・・・?)
維新編第二章三話
坂本
「ああ、見えてきたよ。あそこに、三味の修理がうまい職人がいる」
「あそこですね」
こぢんまりした店を見て、私はほっとする。
(これで、高杉さんの三味線が直る)
胸に抱いた三味線を、私はひときわ強く抱きしめた。
坂本
「ごめん、ここあちゃん。ちゃんと調べとけばよかったな」
「いえ、それは坂本さんのせいではありません」
がっくりと肩を落とす私の背に、坂本さんが大きな手を添える。
坂本
「まさか、出張修理で不在とはなあ」
「・・・はい」
力なく頷いた。
(どうしよう。このままじゃ、高杉さんに渡してあげられない)
坂本
「ここあちゃん?」
「・・・・・」
(もう諦めるしかないの・・?)
でも、そうなると、高杉さんをがっかりさせてしまう。
坂本
「ここあちゃん、あぶない」
ぼんやりしたままだったので、前から来た飛脚に気づかない。
坂本
「ったく、ほらこっち」
「きゃっ」
坂本さんが、いきなり私の腰のあたりに腕をまわした。
そしてそのまま、ぐいっと抱き上げられる。
(あ、助けてくれたの?)
急に視界が高くなり、広がった。
「すみません、私気づかなくて」
坂本
「そんな暗い顔で下向いてたら、危ないよ」
「坂本さん・・・」
坂本
「ちゃんと前見て歩いたほうがいい」
「そうですね、わかりました。あの・・・」
坂本
「ん?」
「そろそろ、下ろして頂けますか?」
さすがに、みんなの注目が集まってくるので、恥ずかしい。
でも、坂本さんは一向に、私をおろす気配はないみたいだった。
維新編第二章四話
坂本
「ここあちゃんは、軽いなあ」
「だから、あの、坂本さん?」
坂本
「ん?」
「恥ずかしいので、できれば下ろしてください」
坂本
「いいや、このまま船まで連れていく」
「えっ」
船というのが、ぴんとこない。
坂本
「職人が出張してるなら、俺たちが、そこまで出張していけばいいだろう」
「でも、遠いです」
坂本
「そうだな。馬で行けば遠いが、船ならすぐだ」
「あっ!」
そこで、ようやく船の意味を理解した。
「とんでもないです。そんなことに船を使うなんて」
坂本
「別にかまわないさ。俺の船だ。それに、どうせ今日出港予定だった」
「本当に、いいんですか?」
坂本
「いいぜ。さあ、行こう」
「あ、でも、やっぱり下ろしてください」
坂本
「なんだ、それはダメなのか」
とても残念そうに言いながら、私をゆっくりとおろしてくれる。
坂本
「ここあちゃんは軽過ぎだな。もっと食べた方がいい」
「そうします」
坂本
「そうだ、船にイモがあったな。ふかして食べさせてあげる」
「ありがとうございます」
坂本さんは少し腰をかがめて、私の前に顔を出す。
にっと笑って、白い歯がまぶしかった。
坂本さんほど、魅力的な笑顔をする人を、私はまだ知らない。
無邪気で、豪快で、気持ちがすぅっとするのだ。
(きっと、坂本さん自体が、気持ちのいい人だから・・・)
坂本
「今のここあちゃんでもいいが」
坂本
「俺は、もう少しぽちゃっとした方が好みだからな」
そう言いながら、頬を指でつつかれる。
(なんだか、子供あつかいされてるみたい・・・)
もしくは、妹みたいなあつかいとも言えそうだ。
(私にとっても坂本さんはお兄さん、なのかしら?)
そんな考えがふと頭をよぎった。