ネタバレです。OKな方のみどーぞ。(前回
)
AfterStory
面倒くさいけどあたたかいもの
空虚ーー
心にあった宝ものがなくなった。
そんな気がした。
秋夜
「あー・・・面倒くさい」
秋夜
「本当、マジで面倒くさい」
公園のベンチで座って空を見ながら、ずっとこの言葉を
繰り返す。
いつからこれが口癖になったのか自分で忘れてしまったけど。
気がつくと口にしてしまっている。
とても便利で、自分をごまかすのに都合の良い言葉。
秋夜
「・・・・ホント、こんな気持ち・・・・面倒くさいよ・・・・」
喉あたりがギュッとしめつけられたように切なく痛む。
秋夜
「なにこれ。もしかして俺、泣きたいーーとか?」
視界を揺らそうとする涙を抑えるべく、まぶたをギュッと
閉じて、思わず手の甲を自分自身でつねる。
秋夜
「・・・・うわ、べたべた」
その痛みで涙は止まったものの、自分の肌がべたべたなのに
気がつく。
そういえば・・・・隆とあやさんとジュースをかけあいしたっけ。
秋夜
「はあ・・・・」
思い出してまた憂鬱になる。
好きだと言葉にしてしまうと、ふくれあがる気持ち。
でもこの想いが届くことはもうない。
こんなことだったら、「好きだ」という気持ち自体、心に
しまっておくべきだった。
自分だけの宝物にして、誰にも知られずに隠しておけば良かった。
そうしたら、こんな空虚感も切なさも感じることは
なかったはず。
秋夜
「奪えるとちょっと思ったんだけどなあ」
ぽつりとまた空を見て呟く。
???
「・・・・すっげー自信だな」
秋夜
「!!」
独り言のつもりだった言葉に、誰かがこたえた。
驚いて、だらんとしていた身体を起こして暗闇に目を懲らす。
するとーー
秋夜
「・・・・・・は?」
あらわれたのは、シルエットはふたり。
しかも男で、いま、めちゃくちゃ会いたくない人物だった。
秋夜
「・・・・・・帰れ」
目を細め、じとーっと見つめて、憎しみを込めて呟く。
???
「おいおい、ここはオマエの家じゃないだろ」
秋夜
「じゃあ、消えろ」
???
「桜庭ーー落ち着け」
秋夜
「・・・・・・・・ハア」
秋夜
「もう・・・・。なんで、ここにいるわけ?皐も須賀も」
皐
「別に。ただ須賀とオマエの部屋に遊びに行こうと思ってただけ」
秋夜
「・・・・・は?」
遊びに?
俺の家に?
秋夜
「いや、それ『別に』で片付ける内容じゃないよね」
俺がそう睨むと皐は「そうか?」となぜかさわやかに返事をした。
・・・・ああ、どうしよう。すごくイライラする。
するとそんな俺のイライラを感じ取ったのか、須賀が見かねて
話し出した。
寛貴
「心配だったんだ」
秋夜
「・・・・・なに?」
よく聞こえないというよりも、耳を疑う内容に、思わず聞き返してしまった。
寛貴
「お前が心配だったんだ。俺も咲坂も」
心配・・・・?
なにをいってるんだろう。
意味がわからないと皐に視線を送るけど、皐は「うんうん」と
頷いている。
・・・・・この人たち、本当に気持ち悪い。
なに、心配って。
皐
「俺達は勇者を讃えに来たんだよ」
秋夜
「・・・・・・・」
・・・・・ああ、ダメだ。
もう皐は手遅れかも。
もう言ってる言葉が俺には理解できない。
皐
「おい、なんだよ!その顔!憐れみの目を向けんな!」
寛貴
「いや、咲坂。いまのは俺もいささか・・・・」
皐
「はあ!?須賀、裏切るのかよ!」
寛貴
「裏切るとかそういう問題じゃない」
寛貴
「説明すっとばして、そういうことを言うとバカみたいだと
言ってるだけだ」
皐
「・・・・なにげにひどいこと言ってんだけど、寛貴くん?」
寛貴
「名前で呼ぶな!気色悪い!」
皐
「うっせー!」
秋夜
「・・・・・・ああ、もう面倒くさい」
こうなるともう止められないんだよね。
いつもならここで見限って帰ったりするんだけど。
秋夜
「・・・・・・・・」
はあっと深く息を吐き、立ち上がる。
そしてふたりの間に立ち、言い放つ。
秋夜
「ちょっと、ねえ」
秋夜
「アンタたちは失恋した俺を励ましに来たんじゃないの?」
二人
「っ!!」
俺の声にふたりは言い合いをやめてこちらを見る。
秋夜
「うちに来るんなら、さっさと行くよ」
そう言って、身をひるがえしふたりに背をむける。
そして数歩歩いて、チラリと振り返る。
ふたりは顔を見合わせ、フッと笑むと、皐はにやにやしながら
俺の隣りに駆け寄って肩を組んできて、須賀はやれやれと
いったような態度で、ため息をつきながらも皐とは反対側に来る。
3人並んで、別にこれといってなにもなしに同時に歩き始める。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
皐
「ったく、素直じゃねーな!秋夜はさー」
寛貴
「本当だ、ちゃんとわかっているなら最初から受け入れて
くれればいいものを」
秋夜
「ちょっと甘えないでよ。自分たちが来た意味くらい
自分たちで説明すべきでしょ」
秋夜
「そっちこそ恥ずかしがってないで、俺を励ましたいって
いいなよ」
皐
「オマ・・・・かわいくねーな」
秋夜
「皐に言われたくないよ、俺様暴君」
寛貴
「・・・・まあ、それだけ悪態つけるならもう大丈夫か」
寛貴
「急に体調崩したりしたし、本当に心配したんだぞ、桜庭」
秋夜
「・・・・・須賀がデレた」
皐
「なに!?」
寛貴
「っな!」
秋夜
「あ、照れた」
寛貴
「照れてない!というか、デレたとはなんだ!」
こうしてたわいもない話をしながら、面倒くさいふたりに囲まれ
俺はとりあえずーー
簡易的にだけど、○○への思いに蓋が出来た。
たまには、面倒くさいのにつきあうのも・・・・
いいかもしれない。