注意ネタバレです。OKの方のみどーぞ。(前回



Chapter5:決意と真意



21ヒヨコ



モールにでかけた日。


勝手に帰ったことを、次の日、すぐに電話で謝った。


桜庭くんはこれといって怒っていなくて、ちょっと拍子抜け

だったけれど。少しホッとした。


そして今日、学校で顔を合わせるなり、微笑まれたり

優しくされたりと、態度の急変に驚いてしまっていた。



・・・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・。



そんな日の放課後。


彩人先輩のことを考えながら歩いていた。


このままじゃダメだけど、どうやって話を切り出したらいいだろう。


とりあえず謝る?・・・・・だけど、今更なのかな。

いや、だけどまずは!


なんてことをずっとループで考えていた時だった。


自分の足下ばかり見て、歩いていたから気付くのが遅れてしまった。


廊下でーー


壁に背を預けて私を待っている存在に。



22ヒヨコ



「・・・・・・・・」


彩人

「・・・・・・・・」


視界の端に足が見えて、ふと顔を上げた時に視線がぶつかった。


足を止め、無言で彼を見つめる。


彼も私を無言で見つめている。


言葉が出てこず、ずっと沈黙のまま時が過ぎる。


その時ーー


どこかから誰かの声がして、ハッと我に返る。


そして先輩が私を悲しそうに見つめる瞳を真正面から受け、


「・・・・・・っ」


私はとっさにその場から身をひるがえして、逃げようとした。


だけどーー


彩人

「待って」


それはいとも簡単に彼に阻止されてしまった。



23ヒヨコ



前に進もうとしたところを止められたからか、

足は一歩前に出ている。


手首をつかまれ、そのまま状態で私は止まっていた。


「・・・・・・」


声も出さず、静止している私。


先輩はどうして引き止めたんだろう。


というか引き止めたのに、どうしてなにも言ってくれないんだろう。


このままじゃ・・・つらいだけだよ。


沈黙に息苦しさを感じた直後


「!?」


力強くも、優しく抱き寄せられた。


「彩人・・・先輩・・・?」


やっと声が出て、先輩の名前を呼ぶ。


すると先輩がうしろで、身動きするのがわかった。


そして静かに息を吐いて、先輩は私をギュッと抱きしめると


彩人

「ごめん」


ほっと・・ここあ


そうかすれた声でつぶやいた。


彩人

「君にわかってもらうためとはいえ、ひどいことをしたね」


彩人

「許してくれとは言わないけど、これだけは覚えておいてほしい」


彩人

「僕は・・・君が好きだ」


彩人

「君しかいらない」


彩人

「君だけがいればいい」


彩人

「だけど選ぶのは君だ」


彩人

「いま、本当にそばにいてほしい人を選べばいいよ」


彩人

「まあ君が他の誰かを選んだところで、僕は諦めるつもり

まったくないけどね」


彩人

「・・・・・・・」


彩人

「それだけ伝えたかったんだ」


彩人

「まだ、もし・・・」


彩人

「僕のことが好きなら・・・・」


彩人

「いやーー、これは言わないでおくよ」


彩人

「それじゃあ、またね」


先輩の「またね」の声が聞こえたのと同時に、

私を抱きしめていた腕もほどけた。


そして先輩が私から離れていく足音だけが、廊下に響いていた。



24ヒヨコ



「・・・先輩・・・」


先輩がなにを私に言いたかったか、なにをしたかったか、

これまでのことは私なりに考えてわかってた。


先輩の気持ちも、私がしたことも。


だけど。


「選ぶってどういうこと?」


いま、先輩に告げられた「選べばいい」という言葉の意味が

わからない。


まだ背中に残る先輩のぬくもりが、切なく痛む。


「はぁ・・・・」


思わずため息が出る。


話をしなきゃと思ってたけど、いざそれが出来る状況んみなると

竦んでしまった。


「ダメだなあ」


本当、このままじゃ先輩と自然に疎遠になってしまうかもしれない。


それは避けたい。避けたいのに。


好きだって言われてすごく嬉しかったのに、すぐに答えられなかった。


「なんでだろ」


先輩の言葉も自分の気持ちもわからなくなって、頭がごちゃごちゃ

したのを感じ、私は帰るべくカバンを取りに教室へと向かった。


そして教室につくと、


秋夜

「おかえり。遅かったねーー待ちくたびれたよ」


「桜庭くん?」


いつもすぐ帰っちゃう桜庭くんがそこにいた。


しかも私を待ってたような口ぶりで。



25ヒヨコ




「あの・・・桜庭くん、私を待ってた、の?」


秋夜

「うん」


「なんで・・・」


秋夜

「一緒に帰ろうと思って」


桜庭くんが椅子から立ち上がり、私のカバンと自分の

カバンを取り、私へと近づいてきた。


秋夜

「帰ろうよ」


「あ・・・・」


誘ってくれて嬉しい。

だけどーー


秋夜

「・・・・・・?」


秋夜

「なに?ダメなの?あからさまに目をそらしちゃってさ」


「・・・っ、ごめん。一緒には帰れないよ」


彩人先輩のことを考えるとやっぱりもう無理だよ。


秋夜

「・・・・はあ」


秋夜

「面倒くさいな」


「!!」


バン、と大きな音が聞こえて、顔を上げると、桜庭くんが私を

真剣に見つめていた。


そしてチラリと彼の手元を見ると、カバンが机にふたつ、

乱暴に置かれていた。



26ヒヨコ



さっきの音は・・・これだ。


怒らせちゃったんだ。


そう思っていると。


「え・・・・」


手にぬくもりを感じて、視線を戻す。


するとそこには私の手を握って、熱っぽい視線を

私に向けている桜庭くんの瞳があった。


「桜庭くん・・・あの、手・・・・」


離して欲しいと、手をひっこめようとするけど、

桜庭くんにそれをこばまれる。


そして彼は、ゆっくりと繋いでる手を持ち上げて、

私の手を自分の唇に寄せた。


「っ!」


秋夜

「好きじゃなきゃ、一緒に出かけないし、手も繋がない」


秋夜

「ましてや、こうして一緒に帰るためだけに待ったりしない」


秋夜

「ねえ、気づいてるんでしょ?俺の気持ち」


「・・・・!」


私の手に唇をあてながら、ささやくように告げる彼。


手に熱い息がかかるた度に、ビクッと反応してしまう

自分が恥ずかしい。


秋夜

「気づいてるから避けるんだよね?」


「・・・・違っ」


それは違う。


断ったのは、先輩のことを考えたからで・・・・。


桜庭くんの気持ちは私にはわからない・・・・。


でもそれを告げるよりも早く、桜庭くんは私に自分の

気持ちを告げた。


秋夜

「それなら話しは早いや」


秋夜

「ねえ、あやさんなんてやめなよ」


秋夜

「俺と楽しもうよ。俺と恋愛しよう?」


「え・・・・・」


いま・・・なんて言ったの?



27ヒヨコ



いま・・・なんて言ったの?


俺と恋愛??


・・・・っていったよね?


それって、もしかして。


秋夜

「ちょっと、なに呆けてんのさ」


秋夜

「ひとがちょっとそれっぽく告白したってのに」


「え、あ、ごめっ」


こ、告白・・・!?

やっぱり、いまのって告白だったの!?


あまりの衝撃にいろいろ考えてたことがふっとんだ。


秋夜

「あーもう、やっぱこういうのは合わないよね、俺には」


秋夜

「面倒だから単刀直入に言うよ」


秋夜

「アンタが好き」


秋夜

「友達って言ってたけど、あれは全部ウソだから」


「え!?」


秋夜

「アンタを安心させるためのウソ」


秋夜

「まあ『友達』の定義なんて人それぞれだから、

こうだって言えないけど・・・」


秋夜

「今回のことは、アンタもあやさんもどっちも悪くないよ」


秋夜

「ただ、考え方の相違ってやつでしょ」


秋夜

「違ってるんだよ、基準がさ」


秋夜

「それはどちらかが折れないと絶対にケンカになる」


秋夜

「普通ならケンカですむところを、ちょっとアヤさんが特殊だから、

今回はこんな形になってるけど」


秋夜

「だからアンタはそのままでいいんだよ」


秋夜

「そのままのアンタが俺は好きだから」


秋夜

「だからさ、俺を選んでよ」


ほっと・・ここあ


秋夜

「まあ今すぐ答えを出せとは言わないよ」


秋夜

「出せるなら出して欲しいけどさ」


秋夜

「でもアンタが納得いくまで考えた結果を俺は待ってる」


秋夜

「まあ俺が悩んで倒れちゃわないうちになるべく早く来てね」


秋夜

「良い返事でも悪い返事でも・・・待ってるから」


手をゆっくりと降ろして、名残惜しそうに離すと、彼は目を細めて

微笑み、私の頭にポンッと手を乗せて


秋夜

「・・・・じゃあね、○○」


「!!」


そう私の名前を優しく呼んで、教室を出て行った。




(最終選択)


ほっと・・ここあ




もちろーん彩人先輩の元へいきまーす(^O^)/



(Chapter5:決意と真意おわり)