注意ネタバレです。OKの方のみどーぞ。(前回




Chapter4 君は僕だけのもの1~10



ヒヨコ



コンコンーーと、


近くの机が叩かれる音がして、私たちは音の方に

顔を向ける。


「先輩・・・・」


彩人

「・・・・・・・・」


「・・・・・・ヤベェ」


秋夜

「怒ってるね」


寛貴

「○○、悪い」


3人が口々に呟き、先輩から目をそらすと私から離れていった。


そして先輩が私に手を伸ばし


彩人

「おいで」


そう言って腕を掴むと、


彩人

「おしおきしてあげるから」


「え!?」


強引に教室から私を連れ出す。


突然のことで声も出せないまま、先輩に連れられて

私は廊下を歩いていた。




ヒヨコ



おしおきしてあげるーー


そう言われて連れて来られたのは保健室。


なんとなく予想はしてた。ここじゃないかなって。


そうぼんやりと保健室の表記札を見て考えていると、


「っ!?」


保健室に着くなり、ベッドに押し倒されてしまう。


見えるのは保健室の天井と、私を押し倒した彩人先輩の

真剣な顔だけだった。


彩人

「ねえ、自分がいま、どういう状況か理解できてる?」


「・・・・・・・・」


彩人

「わからないよね。そうだよね・・・・」


彩人

「・・・・・・・・」


彩人

「ねえ、○○」


「!!」


先輩が、私を呼び捨てに・・・した?


彩人

「どうして君は・・・・」


彩人

「どうして君は僕だけを見てくれないのかな?」


「え・・・・・」


彩人

「どうして僕だけを見ないの?」


彩人

「どうしたら、どうすれば君は僕だけのものになる?」


いまにも泣き出しそうな先輩の表情に言葉がつまった。



ヒヨコ



私は先輩が好き。

先輩だけが好き。


だけど、先輩はそう思っていないのか、私をーー責めてる。


先輩がなにをどう考えて、そう口にしてるかはわからない。


だけど、私は先輩だけが好きだし、先輩だけを見てるのに。


「先輩・・・私は」


先輩の胸に手を当てて、自分の気持ちを伝えようとしたその瞬間。


「!?」


手首を捕まれて、ベッドに押し付けられた。


彩人

「もう僕しか見られないように、僕から離れられないように、

僕がいなければ満足できないように、身体に教えるしかないよね」


妖しげで艶やかな微笑みに、心臓がはねる。


それと同時に、ぞくりと冷ややかなものが背中を走った。



ヒヨコ



彩人

「強引になるから痛いかもしれないね」


彩人

「ならしてる時間、なさそうだしね」


彩人

「まあ・・・それも仕方ないんだよ。君が悪いんだから」


「なに・・・・・・・っ!!」


「やっ・・・・んっ」


先輩の手が強引に私の服の中に入ってくる。


そして性急に指を滑らせて、目当ての場所を探り当てたのか

ニヤリと微笑んだ。


彩人

「声、出したら廊下まで聞こえちゃうからね」


私にそうささやくと、動き始めた。


「・・・・・・っあ」


彩人

「だから、ダメだって言ったよね?声は出したら・・・」


「んんっ」


声を出せないようにか、先輩が私の口をキスでふさぐ。


彩人

「身体は素直だよね」


「っ痛!」


首元、肩にほど近いところを少し強めに噛まれる。


「・・・・ん」


だけど噛んだそこを丁寧に舌先でなぞるように舐める。


どうにかして先輩を止めなくちゃ、逃げなくちゃと、

身体を動かすけれど、そのたびに先輩からの行為が

激しくなった。



ヒヨコ



「やっ・・・先輩っ」


服は脱がすではなく、上に持ち上げる形。


強引で乱暴に。


そしてあらわになった私の肌に先輩が舌をはわし、

私に聞かせるように、わざと音をたてて吸い上げる。


怖い、

こんなのはイヤと思いつつも、身体は反応する。


「ぁ・・・・んっ」


自分を自分で信じられないと思ったのは、

怖いと思っていても、止めて欲しくないとも思ってること。


こんな・・・・誰かが来るかもしれない場所なのに。


どうして・・・・、私・・・・!


彩人

「イヤ、なのかな?本当に」


「っ・・・・・」


彩人

「イヤならなんで、君はここをこんな風にさせているのかな」


「!!」


先輩の怪しげなささやきと同時に、ビリッとしたしびれが

身体の中に駆け抜けた。



ヒヨコ



「っ・・・・・!!」


やだ、これ以上は、もう・・・・・!!


本当に人が来たら、こんなところを見られたら・・・・!


想像して、恥ずかしくなり目をつぶる。


そんな私を見たのか、クスリと先輩が喉で笑った。


彩人

「僕だってこんなこと無理矢理はしたくないんだよ」


彩人

「ただ君が僕だけを見てくれないから、こうする必要があるんだ」


彩人

「ねえ、だから・・・・」


「・・・・っや!イヤです、こんなの!」


唇が離れ、先輩の手が動きを少し止めた時、私はとっさに叫んだ。


彩人

「・・・・・!」


「あ・・・・・」


その瞬間、先輩の顔に寂しさと切なさの表情があらわれてーー


私はーー、瞬時に後悔した。



ヒヨコ



彩人

「僕だってこんなこと無理矢理はしたくないんだよ」


彩人

「ただ君が僕だけを見てくれないから、こうする必要があるんだ」


彩人

「ねえ、だから・・・・」


「・・・・っや!イヤです、こんなの!」


タイミングが悪かったんだと思う。


イヤという言葉が拒絶に聞こえた瞬間だった。


私の中では、この状況といまの先輩とはという意味だった。


だけどいま、私の目の前にいる先輩にはそう聞こえてなかったと思う。


「あ・・・・・」


そんな私の考えを決定づけるように、先輩の手が私から離れる。


「あの・・・・先輩、私ーー」


彩人

「・・・・・もういい」


「え?」


先輩はベッドに両手をついて私をじっと見下ろす。


そしてもう一度、なにかを伝えようと口を開いた。


その時ーー



ヒヨコ



ガラッと保健室の扉が開いた。


「!!」


「あ・・・・え・・・・」


「わわ・・・・!ご、ごめんなさい!!」


扉を開けたのは結城くんだった。


そして私と先輩を見るなり目をつぶって、扉のところで

バタバタあわあわしている。


結城くんが挙動不審になっているところに、


秋夜

「え、嘘。最悪。なんで隆がいるの?」


秋夜

「静かに寝られる場所に来たっていうの・・・に・・・!」


桜庭くんも顔を見せた。


「・・・・・っ!」


ふたりに見られて、カアっと顔が熱くなる。


逃げたい、隠れたい!


そう思うけど、まだ先輩に手首をつかまれ、

ベッドに押し付けられているから動けない。


彩人

「・・・・・クッ」


喉で笑う声が聞こえて、先輩を見上げる。


先輩はニヤリと口角をあげると


彩人

「おやおや」


目を少し見開いて、驚いていた。


すると先輩の視線の方向から、足音が近付いてくるのがわかった。


結城くんか桜庭くんがこっちに来てる!?


ーーそう思った刹那。



ヒヨコ



秋夜

「・・・・・・・!」


彩人

「っ!」


桜庭くんが彩人先輩を突き飛ばし、


「!?」


私は桜庭くんに抱きしめられていた。


秋夜

「なに、やってるのさ」


「・・・・・・・・」


桜庭くんに抱きしめられ、茫然と彼を見上げる私。


桜庭くん、すごく怒ってる・・・・・?


そしてそこに結城くんも駆け寄り、


「大丈夫?」


私の顔を心配そうにのぞきこんだ。


「う、うん・・・・・」


秋夜

「あやさん」


桜庭くんが彩人さんを呼ぶ。


その声に私も先輩を見る。


先輩は桜庭くんにつきとばされた状態で、座っていた。


なにを言わず、うつむいて座っていたーー


けど突然、くくっとまた笑い出して顔を上げた。


その表情は、いまにも泣き出しそうな、苦しそうなーー

笑顔だった。



10ヒヨコ



先輩が髪をかきあげ、私たちを見て笑む。


その表情は、いまにも泣き出しそうな、苦しそうな笑顔だった。


彩人

「なにやってる、だって?」


彩人

「なにって・・・見てわからない?」


鼻で笑い、こちらを見て、少し馬鹿にしてるような目をしている

彩人先輩。


彩人

「○○ちゃんと恋人の時間を過ごしていただけなんだけど?」


「!!」


秋夜

「へえ・・・。そうは見えなかったけど?」


「・・・・・・・・」


彩人

「それはまだ君が経験不足だからじゃないのかな?」


秋夜

「・・・・よく言う」


秋夜

「泣いて拒絶を表情に出してるのに、恋人の時間も

なにもないでしょ」


彩人

「・・・・・・・」


彩人

「彼女はどうかわからないけど、僕は・・・」


彩人

「僕は彼女を恋人として見て、行動していたよ」


ほっと・・ここあ


秋夜

「・・・・・・・・」


彩人先輩の言葉に桜庭くんが呆れたようにため息をつく。


私もーーその言葉には、ちょっと言いたいことがあったりする。


恋人として見てたっていうけど、先輩は私の気持ちを無視していた。


「彩人先輩・・・・」