ネタバレです。OKの方のみどーぞ。(前回
)
Chapter4 君は僕だけのもの1~10
1
コンコンーーと、
近くの机が叩かれる音がして、私たちは音の方に
顔を向ける。
「先輩・・・・」
彩人
「・・・・・・・・」
皐
「・・・・・・ヤベェ」
秋夜
「怒ってるね」
寛貴
「○○、悪い」
3人が口々に呟き、先輩から目をそらすと私から離れていった。
そして先輩が私に手を伸ばし
彩人
「おいで」
そう言って腕を掴むと、
彩人
「おしおきしてあげるから」
「え!?」
強引に教室から私を連れ出す。
突然のことで声も出せないまま、先輩に連れられて
私は廊下を歩いていた。
2
おしおきしてあげるーー
そう言われて連れて来られたのは保健室。
なんとなく予想はしてた。ここじゃないかなって。
そうぼんやりと保健室の表記札を見て考えていると、
「っ!?」
保健室に着くなり、ベッドに押し倒されてしまう。
見えるのは保健室の天井と、私を押し倒した彩人先輩の
真剣な顔だけだった。
彩人
「ねえ、自分がいま、どういう状況か理解できてる?」
「・・・・・・・・」
彩人
「わからないよね。そうだよね・・・・」
彩人
「・・・・・・・・」
彩人
「ねえ、○○」
「!!」
先輩が、私を呼び捨てに・・・した?
彩人
「どうして君は・・・・」
彩人
「どうして君は僕だけを見てくれないのかな?」
「え・・・・・」
彩人
「どうして僕だけを見ないの?」
彩人
「どうしたら、どうすれば君は僕だけのものになる?」
いまにも泣き出しそうな先輩の表情に言葉がつまった。
3
私は先輩が好き。
先輩だけが好き。
だけど、先輩はそう思っていないのか、私をーー責めてる。
先輩がなにをどう考えて、そう口にしてるかはわからない。
だけど、私は先輩だけが好きだし、先輩だけを見てるのに。
「先輩・・・私は」
先輩の胸に手を当てて、自分の気持ちを伝えようとしたその瞬間。
「!?」
手首を捕まれて、ベッドに押し付けられた。
彩人
「もう僕しか見られないように、僕から離れられないように、
僕がいなければ満足できないように、身体に教えるしかないよね」
妖しげで艶やかな微笑みに、心臓がはねる。
それと同時に、ぞくりと冷ややかなものが背中を走った。
4
彩人
「強引になるから痛いかもしれないね」
彩人
「ならしてる時間、なさそうだしね」
彩人
「まあ・・・それも仕方ないんだよ。君が悪いんだから」
「なに・・・・・・・っ!!」
「やっ・・・・んっ」
先輩の手が強引に私の服の中に入ってくる。
そして性急に指を滑らせて、目当ての場所を探り当てたのか
ニヤリと微笑んだ。
彩人
「声、出したら廊下まで聞こえちゃうからね」
私にそうささやくと、動き始めた。
「・・・・・・っあ」
彩人
「だから、ダメだって言ったよね?声は出したら・・・」
「んんっ」
声を出せないようにか、先輩が私の口をキスでふさぐ。
彩人
「身体は素直だよね」
「っ痛!」
首元、肩にほど近いところを少し強めに噛まれる。
「・・・・ん」
だけど噛んだそこを丁寧に舌先でなぞるように舐める。
どうにかして先輩を止めなくちゃ、逃げなくちゃと、
身体を動かすけれど、そのたびに先輩からの行為が
激しくなった。
5
「やっ・・・先輩っ」
服は脱がすではなく、上に持ち上げる形。
強引で乱暴に。
そしてあらわになった私の肌に先輩が舌をはわし、
私に聞かせるように、わざと音をたてて吸い上げる。
怖い、
こんなのはイヤと思いつつも、身体は反応する。
「ぁ・・・・んっ」
自分を自分で信じられないと思ったのは、
怖いと思っていても、止めて欲しくないとも思ってること。
こんな・・・・誰かが来るかもしれない場所なのに。
どうして・・・・、私・・・・!
彩人
「イヤ、なのかな?本当に」
「っ・・・・・」
彩人
「イヤならなんで、君はここをこんな風にさせているのかな」
「!!」
先輩の怪しげなささやきと同時に、ビリッとしたしびれが
身体の中に駆け抜けた。
6
「っ・・・・・!!」
やだ、これ以上は、もう・・・・・!!
本当に人が来たら、こんなところを見られたら・・・・!
想像して、恥ずかしくなり目をつぶる。
そんな私を見たのか、クスリと先輩が喉で笑った。
彩人
「僕だってこんなこと無理矢理はしたくないんだよ」
彩人
「ただ君が僕だけを見てくれないから、こうする必要があるんだ」
彩人
「ねえ、だから・・・・」
「・・・・っや!イヤです、こんなの!」
唇が離れ、先輩の手が動きを少し止めた時、私はとっさに叫んだ。
彩人
「・・・・・!」
「あ・・・・・」
その瞬間、先輩の顔に寂しさと切なさの表情があらわれてーー
私はーー、瞬時に後悔した。
7
彩人
「僕だってこんなこと無理矢理はしたくないんだよ」
彩人
「ただ君が僕だけを見てくれないから、こうする必要があるんだ」
彩人
「ねえ、だから・・・・」
「・・・・っや!イヤです、こんなの!」
タイミングが悪かったんだと思う。
イヤという言葉が拒絶に聞こえた瞬間だった。
私の中では、この状況といまの先輩とはという意味だった。
だけどいま、私の目の前にいる先輩にはそう聞こえてなかったと思う。
「あ・・・・・」
そんな私の考えを決定づけるように、先輩の手が私から離れる。
「あの・・・・先輩、私ーー」
彩人
「・・・・・もういい」
「え?」
先輩はベッドに両手をついて私をじっと見下ろす。
そしてもう一度、なにかを伝えようと口を開いた。
その時ーー
8
ガラッと保健室の扉が開いた。
「!!」
隆
「あ・・・・え・・・・」
隆
「わわ・・・・!ご、ごめんなさい!!」
扉を開けたのは結城くんだった。
そして私と先輩を見るなり目をつぶって、扉のところで
バタバタあわあわしている。
結城くんが挙動不審になっているところに、
秋夜
「え、嘘。最悪。なんで隆がいるの?」
秋夜
「静かに寝られる場所に来たっていうの・・・に・・・!」
桜庭くんも顔を見せた。
「・・・・・っ!」
ふたりに見られて、カアっと顔が熱くなる。
逃げたい、隠れたい!
そう思うけど、まだ先輩に手首をつかまれ、
ベッドに押し付けられているから動けない。
彩人
「・・・・・クッ」
喉で笑う声が聞こえて、先輩を見上げる。
先輩はニヤリと口角をあげると
彩人
「おやおや」
目を少し見開いて、驚いていた。
すると先輩の視線の方向から、足音が近付いてくるのがわかった。
結城くんか桜庭くんがこっちに来てる!?
ーーそう思った刹那。
9
秋夜
「・・・・・・・!」
彩人
「っ!」
桜庭くんが彩人先輩を突き飛ばし、
「!?」
私は桜庭くんに抱きしめられていた。
秋夜
「なに、やってるのさ」
「・・・・・・・・」
桜庭くんに抱きしめられ、茫然と彼を見上げる私。
桜庭くん、すごく怒ってる・・・・・?
そしてそこに結城くんも駆け寄り、
隆
「大丈夫?」
私の顔を心配そうにのぞきこんだ。
「う、うん・・・・・」
秋夜
「あやさん」
桜庭くんが彩人さんを呼ぶ。
その声に私も先輩を見る。
先輩は桜庭くんにつきとばされた状態で、座っていた。
なにを言わず、うつむいて座っていたーー
けど突然、くくっとまた笑い出して顔を上げた。
その表情は、いまにも泣き出しそうな、苦しそうなーー
笑顔だった。
10
先輩が髪をかきあげ、私たちを見て笑む。
その表情は、いまにも泣き出しそうな、苦しそうな笑顔だった。
彩人
「なにやってる、だって?」
彩人
「なにって・・・見てわからない?」
鼻で笑い、こちらを見て、少し馬鹿にしてるような目をしている
彩人先輩。
彩人
「○○ちゃんと恋人の時間を過ごしていただけなんだけど?」
「!!」
秋夜
「へえ・・・。そうは見えなかったけど?」
隆
「・・・・・・・・」
彩人
「それはまだ君が経験不足だからじゃないのかな?」
秋夜
「・・・・よく言う」
秋夜
「泣いて拒絶を表情に出してるのに、恋人の時間も
なにもないでしょ」
彩人
「・・・・・・・」
彩人
「彼女はどうかわからないけど、僕は・・・」
彩人
「僕は彼女を恋人として見て、行動していたよ」
秋夜
「・・・・・・・・」
彩人先輩の言葉に桜庭くんが呆れたようにため息をつく。
私もーーその言葉には、ちょっと言いたいことがあったりする。
恋人として見てたっていうけど、先輩は私の気持ちを無視していた。
「彩人先輩・・・・」