注意ネタバレです。OKの方のみドーゾ(前回



Chapter3 僕の中の問題 1~13



ヒヨコ



放課後。

まさかの罰則でお兄ちゃんにつかまった。


「はあ・・・・」


先輩と学校を抜け出してデートをした。


帰りのHRは友達に頼んだから、担任にはバレなかったのにーー


カバンとかいろいろ置いてきてしまったことに気付いて

結局制服に着替えて先輩と学校に戻ったら・・・・。


ちょうど昇降口にいた、お兄ちゃんに見つかってしまった。


「でもやっと帰れるー・・・・」


お兄ちゃんに言い渡された用事を済ませて、今日は先輩も

進路指導って話だし、まっすぐ帰ろうと靴を履き替えていると。


???

「あっれー?○○先輩??」


あれ?この声って。


「こんにちはー!」


あ、やっぱり結城くんだ!


「うん。こんにち・・・・」


???

「あ」


「え?」


「あ・・・・・」


うっ。ちょっと気まずいかも。桜庭くん、同じクラスだし。


サボったってバレてるよね、きっと。


秋夜

「・・・・学校に帰ってきたんだ?」


「う、うん」


ああ、やっぱりバレてるよね・・・・・。


というか、どこまでバレてるんだろう。



ヒヨコ



「ねえねえ、○○先輩!これから帰るのー?」


じとーっと私を見つめる桜庭くんとは裏腹に、

きらきらした笑顔を私に向けてくれる結城くん。


「う、うん。これからだよ」


「それならオレと一緒に帰ろうよ!送ってく!」


「え?」


「でも、結城くんと桜庭くん、一緒に帰るんじゃないの?」


私も一緒でいいってことかな?


「え?」


秋夜

「は?」


「え?」


3人一緒に「?」状態。


なにこの反応。なにか間違ったこと言ったかな?


だって、ふたり一緒にここに来たってことはそうなんじゃ・・・・?



ヒヨコ



秋夜

「違うよ」


秋夜

「隆とはここに来る途中で会っただけ」


「そうだよー」


「オレは担任に呼び出されて職員室からそのまま来たし」


秋夜

「俺は音楽室で寝てたから」


「あ、そうなんだ」


桜庭くんは、きっと掃除終わってからずっと寝てたんだ。


「ああ、じゃあ・・・・・」


どうせなら3人でと言おうとした時。


秋夜

「隆なんかと帰ったら、疲れるよ」


秋夜

「やめたほうがいいよ」


秋夜

「隆と帰るくらいなら、俺を送ってよ」


「え!?送る!?」


送るってなんだろう。普通、逆なんじゃ??


「えー・・・・なにそれ!そんなことないよ、○○先輩!」


「オレと帰ると楽しいよ!」


秋夜

「いや、疲れる。体力も精神力も削られる」


秋夜

「疲れる、辛い、ひどい」


「そんなことないってば!」


ほっと・・ここあ



ヒヨコ



「だから、ね?○○先輩、オレと帰ろう?」


秋夜

「やめといた方がいいよ」


「もうー秋夜先輩ってば、どうして邪魔するの?」


秋夜

「邪魔なんかしてないよ」


秋夜

「親切心からの忠告だよ」


「うー・・・・・」


秋夜

「ほら、どうするの。決めなよ、○○」


「あ・・・・う、うん」


・・・・・えっと。


どうしよう。


結城くんと帰るか、桜庭くんと帰るか・・・・。


私は・・・みんなで帰れば一番いいと思うんだけど。


3人でっていう選択枠がないみたいだから・・・・。


どっちか決めないといけないけど。


どうしよう・・・・?






(選択)


ほっと・・ここあ





ヒヨコ



桜庭くんを送る、というのも変だけど。


家の方向が一緒だし、わざわざ結城くんに送ってもらうのも悪いし。


「じゃあ、桜庭くんで」


秋夜

「じゃあ、ってなに?じゃあって」


「あ、ごめん」


「でも・・・結城くんはバイトあるだろうしって思って」


秋夜

「・・・・・・・・・」


どうなの?


という視線を桜庭くんが結城くんに送る。


その視線を受けて、結城くんが首をかしげる。


「・・・・・・・・あ」


「ああ!そうだった!」


「わあわあ。今日は家庭教師のバイトだった!」


「うっ・・・で、でも、先輩の家の近くだから途中までなら・・・」


秋夜

「ぶつぶつ言ってないで、早く行きなよ」


「うん。行った方がいいよ」


「うぅ・・・・じゃあ、今度はオレと一緒に帰ろうね、先輩!」


「うん。今度ね」


「ありがとー!」


「じゃあね!」


結城くんは、最後まできらきらな笑顔を振りまいて、

風のように去って行った。



6ヒヨコ


なんだか元気で可愛いし、一緒にいて楽しいんだけど・・・・


秋夜

「疲れたでしょ?」


「・・・・・っ!」


秋夜

「いま、ちょっと疲れたとか思わなかった?」


「思ってないよ!元気だなぁって思っただけだよ!」


一瞬、心の中で思ってたことがもれたのかとビックリしてしまう。


秋夜

「ふーん。まあ別にいいけど」


・・・・。


秋庭くんって、以外にするどいんだなあ。


秋夜

「じゃあ帰る?」


「うん、そうだね」


そして話も落ち着いて、帰ろうと一歩を踏み出した直後。


???

「○○ちゃん?」


聞きなれた、大好きな人の声が聞こえて振り向いた。


7ヒヨコ



「彩人先輩・・・・」


秋夜

「・・・・・・・・・」


彩人

「なにやっているの?まだ帰ってなかったの?」


「あ・・・南先生に用事を頼まれてそれをしてたら・・・・」


彩人

「それはーー知ってるけど・・・・」


彩人

「・・・・・・・・・」


秋夜

「・・・・・・・・・」


先輩が言葉を切って、桜庭くんに視線を向ける。


彼を見ている先輩の表情があまりにも真剣で、

私は思わず身を強張らせてしまった。


秋夜

「・・・・・はあ」


秋夜

「そんなあからさまに悪意をむけないでよ、あやさん」


秋夜

「もう帰るからさ」


秋夜

「ああ、あとこの状況の説明ならいつでもするから」


秋夜

「じゃあね、○○。またね」


「あ・・・桜庭く・・・・」


私にそう言って、彩人先輩を一瞥すると、桜庭くんは私たちに

背を向けて足早に帰っていった。


残されたのは、私とーー彩人先輩。




8ヒヨコ



その場に残された私。そして彩人先輩。


先輩は口を開かず、ずっと黙っている。


だけど、ふぅっとため息をひとつ落とし、そのあとすぐ

口を開いた。


彩人

「ここでふたりで、なにしてたの?」


彩人

「ずいぶん楽しそうだったけど」


・・・・怒ってる?もしかしてなにか勘違いしてる?



9ヒヨコ



「・・・・・ただ話しをしてただけです」


「それで、ひとりなら一緒に帰ろうと誘われただけで・・・・」


彩人

「ふーん。それで男とふたりで帰ろうとしてたわけ?」


「っ!」


「ごめん、なさい」


彩人

「・・・・・・・・・・・」


彩人

「しかし話してただけねぇ・・・・。それにしてはーー」


彩人

「いやまあこれはいいか」


彩人

「これは僕の中での問題だしね・・・・」


「先輩・・・・?」



10ヒヨコ


彩人

「君、いつまでもフラフラしてるよね、少し目を離すとこれだ」


「え・・・・・?」


フラフラ?


・・・・・・・というか、先輩の表情がいつもの微笑みに変わった。


なんだか、ちょっとホッとしてしまう。


だけど、その安堵も長くは続かない。


彩人

「明日から一時も目を離せないね」


彩人

「覚悟しておいてね」


「・・・・・・・・覚悟?」


え?目を離せない?どういうこと?


彩人

「それじゃあ、気をつけて帰ってね」


彩人

「僕は先生のところへいってくるから」


「あ、先輩っ・・・・・!」


引き留めて、なんのことかと聞こうとおもったけれど。


先輩はそんな私の声も聞こえていないようで、

ふふっと笑いながら廊下の奥へと消えていった。


・・・・・・・・なんだろう。すごく胸騒ぎがする。


覚悟ってなに??


11ヒヨコ


翌日ーー

先輩は有言実行した。


彩人

「やあ。迎えに来たよ。お姫様」


「!!!!」


朝は部屋まで迎えに来てーー


「・・・・・」


秋夜

「・・・・・・・・」


彩人

「やあ、次の授業はなにかな?」


「・・・・あ、数学、です」


彩人

「そう。頑張ってね」


・・・・・・・。


授業がひとつひとつ終わるたびに、休憩時間の度に

彩人先輩は教室に会いに来てくれている。


「・・・・・・・」


秋夜

「・・・・・・・」


寛貴

「・・・・・・・」


彩人

「次の授業は・・・・ああ、古典・・・・」


彩人

「南先生になにかされたら、なにかで殴って逃げておいで」


彩人

「けして手で殴ったらダメだよ」


彩人

「手を怪我してしまうし、先生に触れてしまうからね」


「・・・・・・・・はい」


お兄ちゃん、どう思われてるんだろう。



12ヒヨコ




「・・・・・・・・・」


彩人

「次は自習?最近は自習が多いね」


彩人

「まあでも真面目にね?」


秋夜

「・・・・・・・・・」


寛貴

「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


彩人

「それじゃあね、また次の時間に」


「・・・・・・・・・はあ」


秋夜

「あのさ、なんなのアレ」


「・・・・・・わからない」


桜庭くんは隣りの席だから、先輩が来る度に

顔を合わせていた。


怪訝そうに自分を見る桜庭くんを、彩人先輩は

完全にスルーしていた。


そして桜庭くんが、毎回来る彩人先輩を怖がって、

須賀くんと咲坂くんを呼んでいた。


秋夜

「・・・・わかんないって・・・・。どう観ても、アンタがらみだよね?」


秋夜

「つか、本当に、怖いんだけどさ。毎回毎回来てさ」


・・・・・・・なんだかとても申し訳ない気持ちになる。



13ヒヨコ




「半信半疑だったけど。まさか本当に来てるとは」


寛貴

「俺も途中から桜庭に言われて見てたんだが、確かに

ちょっと怖いな」


「ああ。あれが毎回だろ?休憩時間の度に」


秋夜

「そう。なにを話すわけでもなく、ただああして来て、

励ましたりして帰るんだよね」


秋夜

「なにしに来てるんだかわかんないよ」


「会いに来てんだろ?○○に」


寛貴

「そうだなーーだけど、いつもの先輩ならこうまでしないだろ」


・・・・うん。私もそう思う。


たぶん、これは昨日のことが原因なんだと思う。


「なにか考えがあるんだろう、彩人さんにも」


秋夜

「えー・・・・俺にはないと思うな」


「なんでだよ」


秋夜

「・・・・・きっとあれってさ・・・・」


「?」


桜庭くんがなにか重要なことを言おうとしたその時。





(Chapter3 僕の中の問題 おわり)