Tと別れたあの日から十数年と言う年月が経過した。


私は結婚して優しい旦那と←(不倫発覚前)かわいい子供たちに囲まれ
平凡だけど穏やかで幸せな毎日を過ごしていた。



ある日の夕刻
いつものようにキッチンで食事の支度をしていると



『ママぁー!ヤバい!!』



と興奮気味に長女が私の元に駆け寄って来ると雑誌の1ページを開き見せた。




『ねぇ!!この人!めっちゃかっこよくない?!』





長女に見せられた写真。



そう…そこに写るのは
それは紛れもなく



大好きだったTでした。



白い肌も綺麗な髪も
全部あの時のまま…



私の大好きな時のままの
何も変わっていない
Tがそこに居ました。



絶句したまま
思わず写真に見入る私。



『あ……』



そして写真の中のTの首元には
あの日のネックレス…



予想打にしない出来事に
一瞬にして当時の記憶が鮮やかに蘇り
胸が熱くなる。




『この人のネックレス…ジャスティン?ロイヤルオーダー?…ママが好きそうな感じだよね〜!つか、この人の顔も好きそう〜!!(笑)』



私の隣で笑う長女



懐かしいような…
悲しいような…
嬉しいような…


私はTと居た懐かしい日々を思い出しながら何とも言い表すことの出来ない気持ちのまま雑誌を手に取ると長い時間それを見つめていた。



『ねぇ…ママ?そんなにその人のことタイプ?』


『うん…大好き。』


『○○(バンド名)のTって言うんだよ。』


『うん…知ってる。』


『その雑誌…もう読んだからママにあげるよ。』


『うん…ありがと。』


『お…おん。あ!音源DLしたよ!一緒に聴こうよ♪』



スピーカーから聴こえてくるTの声…
懐かしくて
愛しくて…



思わず涙が零れた。



『素敵な歌詞だね。』


『うん………』




少し癖のある優しい声…



『ココちゃん』



って名前を呼んでもらう度に
本当に幸せだったよ。
大好きだったよ。
ありがとう。



別々の道を歩いている今


『またね』
って別れた二人に再会なんてなくて



もう二度と会うこともないとは思うけど…


貴方と一緒に過ごした幸せだった日々のこと


ずっとずっと忘れないよ。



貴方の幸せを心から願います…






元気でね。