ポチのお店にとってもかわいい子が入りました。
他のバイトの子達に聞いても、
「お人形みたいです!」
とか、
「昨日はお客さんに写真撮られてました、可愛すぎて!」
と評判上々。
髪は栗色でフワフワ、キレイに盛って横でまとめてリボンなんて付けちゃって、
陶器肌にばっちり睫毛でお化粧もかわいい。
鼻筋が通った透明感溢れる女の子でした。
そんな彼女は若くして奥様。
趣味は油絵と乗馬。
どうやらお嬢様のようです。
こんなにも所帯じみてない奥様がいていいんでしょうか。
「結婚してるのにそんなにいつもキレイにしてるなんてすごいね~!」
私が褒めると、
「私の旦那さんが起きてる間はずっとこのままじゃないとダメなんです。」
だって。
なんと、旦那が起きる6時半までに身支度を調えて、
帰ってくる12時までずっとこのままで、
旦那様が寝てからやっと化粧を落とせるらしい。
さらに、
「ずっとかわいくいれるよう、子供は作らないでいようね♪」
なんて言われてるらしい…。
そんなバカ旦那もすごいけど、
それを三年も続けてる彼女もスゲー。
普段からロクに化粧もしない私に、爪のあかでも飲ませて下さい…。
あまりにもカワイイ彼女を私はマジマジと見つめ、気付いた事。
あれま!
整形ちゃんじゃない?!
睫毛はエクステ、黒目はコンタクトだな。
さすがに整形なの?とは聞けないけど、
睫毛とコンタクトの事は聞いてみたらビンゴでした。
どうやらこの美しさは努力の賜物のようです。
それでもスゲーけど。
そんな彼女がバイトを始めて一週間目。
突然お母様から「休ませます」とお電話がありました。
お嬢様っぽいから長くは続かないと思ってたけど、
やっぱり辞めちゃうのかな~って残念に思ってましたのに、
数日後にふつーにバイトにやってきました。
やってきたのはいいけど、その夜に辞めます、って電話がありました。
なんだそれ。
数日分のお給料を取りにきた彼女にポチが理由を聞きました。
「旦那さんに反対されちゃった?」
するとさらっと彼女が爆弾を落としました。
「辞めるのは全然別の理由です。
お仕事がちょっとハードなので私には無理かなって思って・・・。
旦那は今、女の人とこ行ってて別居中です。たまにDVもあって大変なんですよ。」
な、なんですと?!それ、さらっと言うこと?
ポチがおたおたしながら、
「あっあっ、そうなんだ。じゃあ実家に帰るの?」
と聞くと、
「高校の頃に父が経営してた会社が潰れて家も売り、
父は心労で亡くなりました。
母は彼氏の家に居候してるから、私、実家がないんです。
おかげで高校の頃からいろいろ苦労しました。」
ななな、なんですと?!元お嬢様だったわけですな。
さらにポチがおたおたしながら
「あっあっ、そうなんだ。でもMちゃんはまだまだ若いし、すごい可愛いし、
万が一別れる事になってもすぐにいい人見つかるよ。」
と言うと、
「こんなかわいさなんて、作り物ですから。
目は大きく切ってるし、鼻だっていれてるし、最近のお化粧ってすごいんですよ。」
はい、やっぱり整形でした。
「でも私、可愛くいれないと嫌なんです。」
ですって。
美しくなることに囚われてしまったんですかねぇ。
ただ・・・・・。
なぜ彼女は聞かれてもないのに、こんなに自虐的にペラペラ話すんでしょう。
虚言症でしょうか・・・。
そして最後には、
「所詮私なんて、最後には新開地(←神戸の風俗街)に行くしかないのかな・・・。」
とつぶやいて帰っていったそうです。
いろんな人生があるものです。
いろいろはあるけれど、みんなそれぞれいろいろあるものです。
どうぞ、彼女が自虐的になりすぎませんように。