コメント欄でリクエスト?をいただいた、ホワイトレディ の続きです。
こちらはカクテルはまったく関係ないので、通常UPで^^

前編はこちら

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続・ホワイトレディ ~ひとり占めさせて~
<後編>
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「ねえ・・・、ほんとに覚えてないの?昨夜のこと。」

逃げようとするキョーコの体をもう一度引き寄せながら、蓮は探るように覗きこむ。

「昨夜・・・・・・。」

「そう。君は間違って本物のカクテルを一気飲みして、そのままダウンしてしまったんだけど。」

「お酒・・・?」

ぼんやりと霞んだままの記憶。

なにかとてもいい夢をみていたような気はするけれど・・・。
あれは・・・お酒を飲んで酔ってしまったせい?
でも、夢は夢、よね。
夢・・・?

ううん、そんなことより、今、こうしてからかい追い詰められているのは、意識を失う前か、あるいは酔っぱらってしでかした何かに対するお仕置きに違いないわ。
それを甘んじて受けようともしない私に、敦賀さんはきっと不満を感じているんだ。
だとすれば、きっと昨夜私はとんでもないことを敦賀さんに・・・。

そう思ったキョーコの頭に、ぽんっと倒れる寸前の出来事が思い浮かんだ。

「坊・・・。」

(そうだ。私、坊の姿で倒れたのに、どうして素顔でここに寝ていたの?まさか・・・もしかして・・・ううん、間違いない。私が坊だってばれたんだ!そのくせ、そのことに気付きもせず、呑気に酔っぱらってぐうぐう寝ていて・・・。そうか、だから敦賀さんは・・・。)

「ああ。それについては、君からちゃんと話を聞かないとね。まさか、君が・・・」

(やっぱり・・・。)

「最上さんが鶏くんだったなんてね。まったく、してやられたよ。知らなかったこととはいえ、まさか本人に恋愛相談していただなんて、本当に俺、ばかみたいじゃないか。」

そう続けた蓮の言葉は、思考の連鎖が止まらないキョーコの耳をさらりとすりぬけていく。

(どうしよう。どうやって謝ろう。どうしたら許してくれるんだろう。騙して、隠して、そしらぬふりをして。敦賀さんの秘密をたくさん聞き出していたんだもの。敦賀さん、きっとすごく怒ってい・・・・・・・・・って、え?本人?)

そのとき、通り過ぎたはずの言葉がいきなり大音量で蘇った。

「・・・本人?」

混乱してぶつぶつ呟いていたキョーコがふと漏らしたそのひと言を聞きとめると、蓮は嬉しそうに微笑んだ。

「そう、本人。」

「あの・・・今、なんと?」

「恋愛相談を本人にしていた、って言ったんだけど?」

「本人って?」

「君。」

「君って?」

蓮は、こらえきれないようにくすくすと笑いだした。
それから急にまじまじとキョーコの瞳を覗き見る。

「最上キョーコさん、あなたです。」

「わ・・・た・・・し・・・?」

だって敦賀さんには、ちゃんと“きょうこちゃん”という人が・・・と言いかけてはっとした。

(きょうこちゃん・・・?きょうこ?きょうこって・・・まさか・・・キョーコ・・・?)

「うそ。」

頭の中が混乱して、混乱しすぎて、何が何だか分からない。
ぽかんと口を薄く開いたまま、唖然とするキョーコに、蓮は再びくすりと微笑んだ。

「前言撤回。」

そして、そんな言葉を口にしてみせる。

ずきん。

言われたとたん、キョーコの胸に大きな痛みが走った。

(前言撤回?・・・なんだ。やっぱり・私、からかわれてたんだ。)

胸の痛みとともに、何か熱いモノが瞼にこみ上げるのがわかった。
なんとかそれを食い止めようと、キョーコはぐっと唇を噛みしめる。

一瞬でも、その気になった自分がばかみたい。
一瞬でも、嬉しくて我を忘れそうになった自分がばかみたい。

ふるふると首を振るキョーコの耳に、再び蓮の声が流れ込む。

「昨夜の収録で、俺は大好きな人の騎士になりたいと言ったけど、あれは取り消すよ。」

(・・・は?)

「俺は王子になりたい。」

(おう・・・じ?)

言われた意味がよく理解できない。
この人はいったい何を言っているんだろう。

キョーコは思わず、目の前の人をまじまじと見つめた。
その視線をしっかりと受けとめ、蓮は言葉を続ける。

「昨夜君は、夢の中なら自分はお姫さまになれるって言ってた。そして・・・自分がお姫様なら、自分を迎えに来る王子様は俺だとも。」

ようやくキョーコの頭にうっすらと蘇ってくる、倒れたあとの記憶。

「その夢を・・・かなえさせて。」

(でも・・・でも・・・あれは夢、で・・・。だから、大丈夫って、そう思って私。つい敦賀さんのことを・・・)

キョーコはぽつりと呟く。

「ひとりり占め・・・したい・・・。」

(たしかに、そう口にした。でも・・・。)

「ひとり占めしてください。」

キョーコの呟きに、すかさず茶目っ気たっぷりの声色で答えると、蓮は破顔した。
目の前の笑顔があまりにも幸せそうに輝いていて、キョーコは言葉を失った。

(だ、だまされちゃいけない。この笑顔にだまされちゃだめ。ぜったい、ぜったいこの人は私のことをからかってるんだ。)

心のどこかでふつふつと湧き上がってくる、“この人の言葉を信じたい”という気持ちを懸命に押さえ付ける。

その気になっちゃ、だめ。
からかわれてるだけなんだから。
信じちゃ、だめ。

「できません。」

必死の思いで口にした。

「どうして?」

「だって、敦賀さんはみんなのもので・・・。」

「俺は君だけのモノになりたいんだけど。」

あっさりそう返され、言葉がつまる。
好きだという気持ちが、キョーコの中に耐えきれないほど大きく、はちきれんばかりにふくらんでいってしまう。

(ダメ!ダメ。ダメ。ダメ!)

「それに、君はもう、俺のことが大好きだって言ってくれたからね。」

「え?」

びくんと跳ねる体。

(私、いつのまにそんなことを・・・。)

「たしかにこの耳で聞いたよ。」

そういって蓮は、形のいい耳をぴっと引っ張って見せた。

「君と違って、俺の記憶は確かだから。」

この上なく美しく、けれどこの上なく意地悪な笑顔を向けられて、キョーコは縛り付けられたように身動きひとつできない。

「そ、それはきっと・・・きっと酔っぱらって、ちょ、ちょっと口が滑っただけです。」

「ふうん。」

少し目を細め、蓮は疑うような目つきでキョーコを見た。
そして、ため息をつくように小さく息を吐くと、

「・・・・・・愛してる。」

さりげなくそう口にした。

「え?」

「ちょっと口が滑っただけ。」

キョーコの視線をしっかりととらえたまま、蓮は答える。

「からかわないでくださいっ。」

「からかってるように聞こえた?」

「ええ。」

次の瞬間、蓮は離れかけていたキョーコの体をふわりと包むように抱き締め、その耳元に唇をぐっと近づけた。

「愛してる、愛してる、愛してる・・・。」

繰り返される言葉。

「敦賀さんっ。」

絞り出すように叫んだキョーコの言葉を、遮るように蓮は言う。

「ねえ、知ってる?口が滑るってね。言わないと誓ったことを思わず言ってしまうってことらしいよ。つまり・・・。」

抱き締める両腕にぐっと力がこもり、キョーコは蓮の胸に落ちるように倒れ込んだ。

「本音、っていうこと。」

抑えこんだ胸元の頭に向かい、蓮は囁き続ける。

「ねえ、最上さん。そろそろ認めたらどうかな。」

「な・・・何を、ですか?」

か細く呟くキョーコの体がぶるぶると震えるのを、蓮は温めるように抱きすくめた。

「俺が本気で君を口説いてるって、君はもうちゃんと気がついているってこと。それと・・・」

そのまま蓮は、左手でそっとキョーコの頭を撫で始めた。

キョーコの心を、落ち着けるように。
愛しい想いを、その手のひらから正確に伝えようとするように。
何度も、何度も。

「昨夜君が口走ったアレは、ぜんぶ君のほんとの気持ちだってこと。」

そういうと蓮は、キョーコの頭にこつんと顎をのせた。

「最上さん。」

蓮の匂いが、大好きな蓮の匂いが、キョーコのすべてを寄り添うように包み込む。


「君は、俺にとってたった一人のお姫様なんだ。どうしても、ひとり占めしたいと思うたった一人のお姫様。だから・・・お願いだから、俺をひとり占めしたいと、もう一度君の口からそう聞かせて?」

厚い胸にしっかりと抑え込まれたキョーコの耳に、蓮の声はひどくくぐもって聞こえた。
けれどそれは信じられないほどやさしく、まっすぐ、キョーコの心に染み込んでくる。
素直にうなずいてしまいそうになるほど。

そんなキョーコの気持ちを知ってか知らずか、蓮はダメ押しのように言葉を重ねた。



「俺を君だけの王子様にして?」







Fin

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ワンパターンだなあ・・・反省。