こねことおんなの子のお話


これはみーちゃんというおんなのこと,

2匹のこねこのおはなしです。

1匹はオスで白と黒の2つの色の「たろう」君。もう1匹はメスの三毛猫で鼻のところに黒く丸い点のある「ぶう」ちゃんです。

たろう君はとってもかしこくおとなしい性格をしています。

ぶうちゃんはおてんばでいたずら好きです。

たろう君とぶうちゃんはどちらも捨て猫です。みーちゃんというおんなのこが3ヶ月ほど前のある日に拾ってきたのです。


みーちゃんと2匹はいつも一緒に楽しく暮らしていました。

ごはんを食べるのも一緒。遊ぶのも一緒。寝るときも必ず一緒でした。

2匹はいつもみーちゃんの首のところに丸くなって眠ります。

みーちゃんは2匹のお母さんのように優しく優しくなでてやると2匹のこねこはごろごろとのどを鳴らして気持ちよさそうにします。そしてみーちゃんも優しく優しくこねこをなでているうちに、とっても安心して眠っていくのでした。


そんなある日、みーちゃんとたろう君とぶうちゃんは買い物に行くことになりました。みーちゃんのお母さんが近くのスーパーマーケットまでおつかいを頼んだのです。

みーちゃんの自転車のカゴに乗っておつかいに出発です。

2匹は大きな車や知らない人達を見てびっくりしていました。でも、そのうちだんだん楽しくなってきました。外には大きな世界が広がっていて、大人のねこ達もたくさんみかけました。

やがてスーパーマーケットにつきました。

「すぐ戻ってくるからどこへもいっちゃいけないよ。あぶないからね。」


みーちゃんがおつかいをすませる間に、2匹はカゴの中でじっと待っていました。しかしおつかいはすぐには終わりませんでした。みーちゃんがお店の中でお友達とばったり会って、おしゃべりをしていたからです。

2匹はカゴの中で話していました。

「ちょっとだけカゴから出てあっちの大人のねこがいるところへ行ってみようよ。」 とぶうちゃんが言いました。

するとたろうくんが言いました。

「いけないよ。みーちゃんはもうすぐ来るよ。どこへもいっちゃいけないって言ってただろ。」

「大丈夫だよ。すこしだけ見てくるだけだったら!」ぶうちゃんはいいます。

「でも・・・。」たろう君は困っています。

「ほら、そこの小さい木の下のところに虫がいるよ。行ってみよう。」ぶうちゃんはそう言ってカゴから飛び出しました。

「あぶないよ、ぶうちゃん。」とたろう君も追いかけていきました。

2匹は夢中になって虫を追いかけていきました。たくさんたくさん走っていきました。


しばらくしてみーちゃんが自転車に戻るとぶうちゃんとたろう君の姿がありません。

みーちゃんは悲しくなって2匹をさがしました。自転車置き場やスーパーマーケットの裏のほうまで行ってみました。あたりは暗くなっています。2匹のこねこのことがどんどん心配になってきました。


「ぶうちゃん!、たろう君!」いくら呼んでも2匹の声はありません。



「どうしよう。どうしよう」みーちゃんの目から涙がこぼれてきました。



みーちゃんは自転車のそばに座って待ち続けました。

 

2匹は戻ってきませんでした。


がっかりしておうちへ帰るとみーちゃんのお母さんがとっても心配そうな顔をしていました。

それはみーちゃんと同じ顔でした。

お母さんは言いました。「大丈夫、みーちゃんが帰ってきたように、ぶうちゃんとたろう君もきっと帰ってくるよ。明日もう一度探しにいきましょう。」


次の日みーちゃんとお母さんはこねこ達をさがしにいきました。スーパーマーケットの店員さんやそこへよくくるお母さんのお友達にも聞いてみました。するとお母さんのお友達が昨日の夜、ねこを見たというのです。みーちゃんの顔が少しだけ明るくなりました。

でも、この日2匹をみつけることはできませんでした。

みーちゃんはあきらめませんでした。次の日も次の日もぶうちゃんとたろう君を探しにいきました。


その頃ぶうちゃんとたろう君は、スーパーマーケットから少し離れた場所で迷子になっていました。おなかもぺこぺこで歩くのがやっとです。みーちゃんよりもずっと小さい男の子に石を投げつけられたり、大きな大きな犬に追いかけられたり。車にひかれそうになったこともありました。2匹はみーちゃんのことばかり考えていました。いつも一緒にいたみーちゃんのことを。

そのうち2匹は一歩も動けなくなってしまいました。


その時でした。

どこか遠いところから2匹の名前を呼ぶ声がします。

初めは夢を見ているのだと思いました。

でも「ぶうちゃん、僕達を呼んでいる声がしない?」とたろう君が言うのです。

2匹を力をしぼって声がするほうへ歩いていきました。

その声はどんどん近くなっていきます。


そうです。

みーちゃんです。

2匹はからからののどからできるだけ大きな声で返事をしようとします。

「どうか気づいて。ここにいるよ。」ぶうちゃんは必死です。


その声はみーちゃんに届きました。とても小さくて、弱い声です。

その声がするほうへ一生懸命走りよりました。

みーちゃんも走ります。すると・・・

ぶうちゃんとたろう君です!!

ついにみーちゃんは2匹をみつけました。

2匹は大好きなみーちゃんに飛びつきました。

「こわかったよう。さみしかったよう。」とぶうちゃんは言いました。

「勝手にカゴから出て行ってごめんなさい。」とたろう君は言いました。


みーちゃんはにゃあにゃあ必死に鳴いているこねこ達にいいました。

「ああ良かった。もう大丈夫だからね。おうちへ帰ろう。」


「ありがとう。」


その夜、大好きなみーちゃんの首に寄り添って二人はこそこそと話し始めました。

「僕達悪いことをしたのに・・・」たろう君が言いかけました。

「どうしてありがとうって言ったのかな?」ぶうちゃんも同じことを考えていました。


2匹の真ん中でとっても幸せそうに、ちょっとだけ笑みを浮かべてみーちゃんは眠っています。

そのうちなんだかとってもあたたかくなってきて2匹のこねこも眠りにつきました。


やがてまた元通りの楽しい毎日になりました。

ごはんを食べるのも一緒。遊ぶのも一緒。寝るときも必ず一緒です。

 

 

             おしまい