川崎市内の住宅街、その一角にあるのが「業務スーパー」

その名の通り「業務」向け。しかし一般用商品もある。全国642店の「業務スーパー」を展開する神戸物産。“業務”と名が付くが、実は、客の約8割は一般の消費者だ。

「冷凍うどん」5食138円、「豆腐」39円など、低価格が客に支持されている理由。

昨年度は過去最高の売り上げだった。

そんな人気スーパーにも、「原材料費高騰」の波が襲っていた。

小麦や食用油などの原料メーカーから、仕入れ価格の値上げ要望が来ているという。急激な円安が輸入価格を上げた。

アベノミクス効果で消費の一部に明るい兆しが見えるというニュースもあるが、肝心の賃金アップはまだまだこれから。消費者の財布の紐は固いままだ。そんな中、円安の影響もあって原材料費が高騰。マヨネーズ、食パン、食用油など、生活に欠かせない商品の値上げがこの夏、続々と始まっている。

業務スーパーではごく一部を除いて値上げはしていないが、いつまで続くかわからないという。

更には、来年からの消費税増税が重なり、消費者の“低価格志向”にさらなる拍車がかかることが予想される。安さを売りにした「スーパーマーケット」や「100円ショップ」などは、これまで通りの価格を守るため、これまで以上に“いいものを安く売る”取り組みを強化している。“値上げの夏”に立ち向かう小売り各社の闘いを追う。

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江口君、仕事帰りに日持ちするものを買いだめ。でも奥さんも同じものを買っていた。

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「厳しい現状だが、自社の企業努力で価格を守っていくしかない」と語るのは、業務スーパーの沼田博和社長。32歳だ。

売上高の3割をPB商品で占める。豆腐は39円。しかし原料の大豆は高騰している。何故この値段を維持できるのか?

それは自社農場を持っているから。

これまで神戸物産は外部環境に価格を左右されにくい態勢づくりを進めてきた。

それは、生産・製造・販売までをすべて自社でまかなう“製販一体”という仕組みだ。すでに大規模農場を始め、牧場や養鶏場を運営し、最近では漁船も購入。

さらに経営不振の工場を買収し、自社工場として再生してきた。現在、鶏卵、豆腐、パンなどの食品工場を全国に20ヵ所持つ。

自社で原料まで生産、自社で商品を製造することで、低価格を守っているのだ。これらをフルに使って、“値上げの夏”にも立ち向かっていく予定だ。
豆腐を製造する横で、プリンやゼリーなども作っている。

滋賀県の工場ではポテトサラダや冷凍ウドンを製造している。ここで原料高騰に対抗するため、他の工場で不用になったアイスの製造機械を運び込み、ドレッシングを製造。7月1日から販売を開始した。

沼田社長の頭を悩ますのは、やはり原材料の価格アップ。すべての原料を生産できている訳ではない。例えば小麦は、海外からの輸入品のため、仕入れ値は確実に上がる。真っ先に影響があるのが、日々の食卓に上がる「パン」。今は2斤で198円という価格だが、これをどう守っていくのか。

客の切なる声を受けて、低価格を守る作戦開始。

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天然酵母パン1斤198円を守る。浅見さんが埼玉県吉見町のパン工場に向かった。オーブンで焼くところを見て、パンの列の間隔に目を付けた。20cmを10cmにして1.5倍に生産量を上げる計画だ。人件費もそのぶん抑制できる。

しかしテストしてみると焼きが甘く側面に火が回らず商品にならなかった。慎重に焼き加減を調整して再びトライ。

今度は見た目も焼けた感じ、割っても崩れなかった。浅見さんも笑顔。その日から1.5倍になり店頭に並んだ。売り上げも1.5倍になった。

浅見さんはすぐに次の仕事へ。姫路の閉鎖された麺工場へと出かけた。

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100円均一でいろいろなものがそろう「100円ショップ」。2013年度は各社が出店攻勢を強める見通しで、一層競争が激化することになる。

今や充実した商品ラインアップで人気を高めているが、ここ数年は売り上げが伸び悩んでいる。

業界3位の「キャンドゥ」は今年で創業20周年。他社との差別化を図るため、今後店舗もオシャレな雑貨屋風に変え、商品もこれまでより一層品質を高めていく戦略だ。

生活便利グッズが主婦に大人気。

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江口君、新百合ヶ丘のオーパに。店内は広く明るく、きれいな雑貨屋さんのイメージだ。

廣田さんが案内。「棚の高さを低くして、広く見えるようにしています。」「お客様のレベルも上がっているので月500くらいの新商品を出しています。」

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カギとなるのは毎月約500の新商品を誕生させているオリジナルのPB商品。企画担当バイヤー歴5年の商品部・廣田淳子さん(28歳)は、これまでも数々の人気商品を生み出してきたヒットメーカーだ。

去年1年で1000アイテムを手がけた。人気の調理器具やスマホ関連のグッズなども手がけた。

展示会などに積極的に足を運んで、アンテナをはっている。

社長の城戸さんが、新商品の最終チェック。夏用靴やレース模様のビニール傘。ビニール傘は黒いプリントを施したがその分5円増えるというので、難色を示す。

原油の高騰などがあり、どうしても100円で売るので、ギリギリのせめぎあいがある。

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廣田さんが今、手がけているのは、近日発売予定の「巾着防水バッグ」。

夏に向けて、水着やタオルなど、濡れたものを入れられる巾着型のバッグを100円で売り出そうと言うのだ。

しかし、生地を防水加工にするため、材料となる塩化ビニール樹脂・ポリエステルなども高騰。

最終的には中国の生産工場から輸入するため、円安という壁もある。

価格は100円と決まっているため、上げることも下げることも不可能だ。

想定より10%アップになる予想のバッグ。廣田さんが用意した「奥の手」は?

なんと既存のバッグの生地を使うこと。これで7%の削減になるという。

サンプル生地が送られてきたが、加工が剥がれやすく、すぐに電話で防水加工を厚くする要望を出す。しかしコストはアップする。

製品化したものをチェックする廣田さん。コーティングが剥がれることも無く、防水加工はバッチリだった。さてコストはというと、マチを付けなかったり、生地を無駄なく使うなどで削減し、100円で売るメドが付いた。

さらに廣田さんはお湯をバッグに入れて1時間吊るして様子を見る。漏れも無く合格。

城戸一弥社長の評価もokで、7月中旬に発売予定だ。

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↓企画担当バイヤー歴5年の廣田淳子さん

生誕半世紀からの存在証明-ガイア