ボワンボワンボワン・・・ピンク色の霧が段々と晴れた。辺りは何もないピンク色の空間だった。

さやか「なになに、ここはどこ~?」

杏子「おまえはバカか? どうみたって魔女空間だろ。やだね~トーシローは!」

さやか「また馬鹿って言った。じゃあ、何の魔女なのよ!! 当ててごらんささいよ!」

杏子「いや、それは、え~と・・・そ、そうだ!! ピンク色の空間だから“ピンク映画の魔女”!!」

さやか「そんな昭和チックな魔女おるかーい!!」ペシッ

杏子「あ痛!! いてーな!! じゃ、おまえが当ててみろよ!!」

さやか「あ、あたし? ピンク色だから・・・え~と、“まどかの魔女”!!」

さやか以外の魔法少女一同「!?」

マミ「そんなわけないでしょ! もう~美樹さんたら・・・」

ほむら「ハチベえ! おまえなら、この魔女空間の主が判るはず。答えなさい!」

ハチベえ「美樹さやか、君の直感力には敬服するよ。鹿目まどか、君は無意識のうちにこの魔女空間を作りだした。我が家がメチャクチャにされないようにね」

魔法少女一同「!!!」

ほむら「本当なの? まどか!」

まどか「え~・・・そうなのハチベえ?」

ハチベえ「そうだよ! さすが史上最強の魔女の卵だ! まさか魔法少女のままで魔女空間を作ってしまうとはね・・・」

まどか「えっ!?」

杏子「おいおい、あたしがせっかくお前らの悪事をばらそうと思ってるのに、もうネタばらしかよ!」

マミ「私達魔法少女が魔女の卵って、まさか、そんなこと・・・」

杏子「そのまさかさ! あたし達はまんまとこいつらインキュベーターに騙されていたという訳・・・アハハ、ざまあねえぜ!」

さやか「・・・」

まどか「うそ! そんなの絶対うそだよ!! だって私達、魔女と戦っているんだよ!」

ほむら「まどか、残念ながら嘘ではないわ・・・知っての通り、使い魔が魔女に成長する場合もあるけど、殆どが元魔法少女の成れの果てなのよ。キュゥベえの本当の狙いは、魔法少女から魔女への変異に生じる莫大な感情エネルギーの回収にあったの。つまり、どのみち私達魔法少女が魔女になる運命は避けられないのよ…」

さやか「・・・」

マミ「ほ、本当なの? ハチベえ!!」

ハチベえ「訂正するほど、間違ってないね。ただ・・・」

まどか「そんな・・・そんなのってないよ!! 酷すぎるよ! あんまりだよ!!」

マミ「嘘よ、そんなの嘘よ・・・」ブツブツ

ブワー! 巴マミは涙と鼻水で顔がグチャグチャになっていた。そしておもむろに自分の銃を魔法少女の方へ向けるのだった。

杏子「お、おい、止めろ!!」

マミ「魔法少女が魔女になるっていうのなら、私達、死ぬしかないじゃない!!! あなたも私も!!!!」

ほむら「またなの・・・はぁ~」カチャ

暁美ほむらは、呆れた顔で時間を止め、巴マミの銃を奪った。

カチャ…(時間を元した)

マミ「わ~!! って、あれ? 私のズウ(銃)は?」

ほむら「巴マミ、あなた前にも同じことをしたわよ! いい加減、その豆腐メンタルなんとかしなさい!」

マミ「えっ、どどどういうこと?」ズズー

杏子「ふ~、助かったぜ!! 危うくまたマミから殺されるとこだったぜ!!」

ほむら「ん!? ちょっと佐倉杏子、またって何? あなたがそんなこと知っているはずもないわ! 説明しなさい!」

杏子「ったく、お前はいつも上から目線だな…。へいへい、いいよ、種明かししてやるよ。あたしもお前と同じ過去の記憶を持っているってことさ。なぁ~赤い眼鏡のお下げちゃん!!」

カー!! 暁美ほむらの顔が真っ赤になった。

ほむら「佐倉杏子!! あなた、その記憶を今すぐ封印しないとこの場で死ぬことになるわよ!!」

杏子「やだっよ~! え~と、あと、おしっこチビッたこととかさ~。それとマミにドラム缶ぶつけて失神させたこともあったよな~」

杏子は舌をペロリと出した後、お尻ペンペンして走って逃げた。

ほむら「殺す!! こら、待ちなさーい!!」

バキューン! バキューン!

マミ「暁美さんが私にドラム缶ぶつけて失神したって・・・なんのことかしら? まあいいわ、はぁ~、何かどうでもよくなっちゃた・・・」

ハチベえ「あきれたよ。君達はいつもこんな感じで遊んでるのかい?」

マミ「あら~? ハチベえ、あなたも逃げなくていいのかしら? 私、凄く怒ってるんだけど・・・」

ハチベえ「えっ!?」

ドカッ!バキッ! ドカッ!

ハチベえはマミにボコボコに足蹴にされたのだった。

ハチベえ「ぼ、ぼくは無実だ~!!」

さやか「・・・(杏子も過去の記憶を持っていたなんて…)」
ハチベえ「それともう一つ知らせがある。暁美ほむら、君についてだ!!」

魔法少女一同「!?」

ハチベえ「暁美ほむら、君の願いは時間遡行だったね。鹿目まどかとの出会いをやり直したいというね。しかし、キュゥベえの設定ミスもあったが、本来それは一回のみの願いだったはず。それを君は結果が気に入らないという理由だけで幾度となく時間遡行を繰り返した。いくら我々の商売の協力者とはいえ、君は限度というものを知らなすぎた。そのせいで我々は莫大なエネルギーを消費してしまったのだ。よって、我々のミスを勘案して過去の行いはペナルティーを課さないが、今回の時間遡行でこの魔術の使用は終了とする。但し、もう一つの君の魔術である“時間停止”については、エネルギー消費体系が異なる為、これまで通り使用可とする」

ほむら「・・・」

マミ「ハチベえ、一体どういうこと? もっと分かり易く説明して! それに私達があなた達の商売の協力者って何のこと? 私達は魔法少女の素質があるから、悪い魔女をやっつけるヒーローとして選ばれただけじゃないの?」

杏子「マミ、あんた散々先輩ヅラしてっけど、まだまだねんねだな。まあ中三にもなってまだ中ニ病全開じゃ、しゃーねぇけどな。あたしがこいつらの悪事を説明してやるよ!」

ほむら「待って! 今やっと内容を理解した。私が説明するわ!」

杏子「おい、あたしの言ってたこと聞こえなかったのかよ。あたしに説明させろ!」

ほむら「いや、あなたはきっと勘違いしているから、私が説明する!」

杏子「なんだと、コラ! どうしても説明したけりゃ、あたしを倒してからするんだな!」

バシュ~!! 佐倉杏子は魔法少女に変身し、槍を構えた。

ほむら「ええ、そうするわ…」

シュバ!! カチャ…暁美ほむらも魔法少女に変身し、盾から拳銃を取り出した。

さやか「ちょっ、ちょっと二人とも止めなさいよ!」

ほむら「うるさい! バカはすっこんでなさい!!」

さやか「あのな~さっきから人のことをバカ、バカと・・・あたしを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!!」

シュオーン!! 美樹さやかも魔法少女に変身した。

マミ「ちょっとみんな!! 落ち着いて!! ここをどこだと思ってるの!!」

杏子「うるせえ!! そんなの関係ねーんだよ!おっぱいしか取り柄がねえクルクルボインくせに偉そうな顔すんじゃねー!!」

ゴゴゴゴ・・・巴マミの顔色が変わった。

マミ「何それ!? おっぱいしか取り柄がないクルクルボインって、何それ~!!!!」

ピロピロリン!! 巴マミも魔法少女に変身してしまった。

まどか「みんな~やめなよ~!! 魔法少女同士いがみ合うなんて、そんなの絶対おかしいよ!!」

ほむら&さやか&マミ「おかしくない!!」

杏子「すっこんでろ、このピンク頭!!」

ゴゴゴゴ・・・今度は鹿目まどかの顔色が変わった。シュバババーン!! 最後に残った彼女も魔法少女に変身してしまうのだった。

まどか「よく分わかりました・・・みんながそんなに喧嘩したいのなら外でやってぇえー!!!!」

まどかが叫んだその瞬間だった。
ボワボワボワーン!! 辺りがピンク色の霧に包まれた。5人は亜空間、すなわち魔女空間に飲み込まれてしまったのだ。

知久「デザート出来たよ~!! ってあれ? 誰もいない・・・どうなっているんだこれは!?」

さっきまで威勢の良い声が聞こえていたリビングには誰も居なかった。

達也「おとーたん、おとーたん!! お腹すいた~!」

ズボンの裾を引っ張る達也の声で、我に帰る鹿目知久だった。
一通り夕食を食べ終え、リビングに集まった5人であった。鹿目知久はキッチンで大量の食器を洗っていた。

マミ「それにしても鹿目さんのお父様って、料理上手ね~。でも・・・何で鹿目さんがお父様のことを“地獄の料理人”って言っていたか判ったような気がしたわ。暫くパスタは見たくないわね・・・ゲップ!」

まどか「もう~ウチのお父さんっていつも量が半端ないんです。それで私達が文句を言うと「アメリカではこれが当たり前だ~」とか言うんですよ…」

さやか「そういえば、おじさんってアメリカで生活してるのが長かったんだよね…」

まどか「うん、それでアメリカ出張に来ていたお母さんと知り合ったって、言っていました」

マミ「へ~、何かロマンチックね~!」

まどか「いや~、ウチのはそういうんじゃなくて、どこかの不良に絡まれていたお父さんをお母さんが助けて知り合ったとかなんで…」

杏子「それって普通逆じゃね?」

マミ「佐倉さん、失礼でしょ。言葉を慎みなさい!」

杏子「へいへい…」

ハチベえ「きゅぷい!! ところで皆の衆!!」

お腹をパンパンにしたハチベえがテーブルの上に乗っかり、しゃべり出した。

杏子「皆の衆って、いつの時代の奴だよ!! たく…」

ハチベえ「杏子、黙って聞くんだ!! 僕から魔法少女の君達に重大な知らせがある!!」

杏子「はあ!? 何だそりゃあ!!」

ハチベえ「まずはキュゥベえについてだ。我々の内部調査によると、奴は契約した魔法少女に対し虚偽説明をしていた疑いが持たれている。もしそれが事実なら重大なコンプライアンス違反でもある!! それで君達に真偽を確かめたい!!」

さやか「も~、何を言い出すかと思えば、コンブダシ違反とか全然意味判んないわ!! 大体、それって私達に何の関係があるって言うのよ!!」

杏子「・・・」

ほむら「大ありよ、理解出来ないバカは少し黙ってなさい!!」

さやか「ええ、どうせあたしは馬鹿ですよ!! ぶ~!!」

まどか「さやかちゃん・・・ふぐみたい」
リビングのソファーには、今世紀最強の魔法少女の5人が勢揃いした。しかし、まどかの父の知久はその事実を知らない・・・というか、魔法少女そのものを知らないが、実は本人達も自分達の実力をよく知らなかった。知っているのはキュゥベえ達、即ちインキュベーターらのみだった。
我々は鹿目まどかの神にも匹敵するであろう魔法少女としての才能は知っているが、他の4人の実力も他の地域に住んでいる魔法少女達よりも抜きん出ていたのだ。また、まどかの才能の昇華を本編の中では、暁美ほむらが時間操作の魔法を使い過ぎた結果、鹿目まどかの因果の絡みが極限にまで達した為と説明していたが、本当は違うのだ。それはあくまで鹿目まどかが覚醒したきっかけに過ぎない。実は鹿目まどかは、とある女神の生まれ変わりであり、本当の狙いは宇宙の平定である。つまり、宇宙の秩序を長い間乱してきたインキュベーターらの勝手気ままな振る舞いへの制裁なのだ。

知久「さてと、君らお腹が空いているだろうから、僕が腕を奮ってご馳走を作るから、何でもリクエストをどうぞ!!」

杏子「っしゃ~!! おっちゃん、あたし中華ラーメン、チャーシュー大盛り!! それと餃子とチャーハン大盛!!」

マミ「ちょっ、ちょっと佐倉さん!! ここはラーメン屋じゃないのよ!!」

知久「ははは・・・全然構わないよ、部長さん。君達も遠慮しないでどんどんリクエストをどうぞ!」

マミ「と、おっしゃられても・・・」

杏子「話の途中悪いが、あたしトイレ行ってくる。おっちゃん、トイレ借りるぜ!」

知久「佐倉さん、トイレはあっちだよ!」

トイレの方向へ指差す鹿目知久。頷いて席を外す杏子。

さやか「マミさん、へーき、へーき!! おじさんには遠慮無用だよ! 杏子みたいな人には慣れているみたいだし…」

マミ「でも・・・」

まどか「さやかちゃんはウチのお父さんのことよく知ってるもんね。地獄の料理人だということもね、ウェヒヒ!」

マミ「地獄の料理人!? 何それ!?」

知久「おいおい、まどか、あんまり父さんを誉めるなよ、照れるじゃないか!!」

まどか「誉めてない…」

さやか「まあ、そのうち分かりますよ。おじさん、後の人のリクエストは、このさやかちゃんがまとめておきますから、ハラぺコ大魔王の分をサクッと先に作ってきて下さいな!」

知久「そうかい、じゃ後の人はよろしく!!」

トイレからもう戻ってきた杏子。

杏子「さやか、たまには気がきくじゃん!! アハハハ…」

さやか「もうしてきたの!? 呆れるわ。それにしても、「たまには…」というところが気に食わないけどさ、笑ってられるのも今のうちよ、ねー、まどか~!!」

まどか「うん・・・」

杏子「なんだそりゃ!?」

5分後・・・

知久「はい、お待ち!!」

ドン!! (タオルを頭に巻いた知久は佐倉杏子からリクエストされた料理の品をテーブルに置いた。料理を待つ間ソファーでテレビのお笑い番組を見て大笑いをしていた杏子だったが、その音に気が付きテーブルに駆け寄る)

杏子「おっ、もう来たのか!! おっちゃん、やるじゃん!! って・・・げぇー!!!! 何じゃこりゃーあぁ!! 次郎かよ!! いや、それ以上じゃねえか!!」

テーブルには特大の丼茶碗に入った中華ラーメンが置かれていた。そのラーメンには麺が見えないぐらいにチャーシューがたっぷりと載っかっており、その上にはもやしが東京タワーのようにそびえ立っていた。その脇には特大餃子と特大チャーハンも置かれていた。それとご丁寧に丼茶碗の特大中華スープも添えられていた…。

さやか「あはは…ほらね! 専業主夫を舐めてもらちゃ困るのよ!!」

まどか「さやかちゃん、もしかしてウチのお父さんバカにしてる?」

さやか「へっ!?」

杏子「チクショ~、まどかの父ちゃん、やるじゃないか! この杏子様の胃袋を舐めるなよ!!」

知久「おっ、いいね~!! 若い子はそうじゃなきゃ!!」

まどか「ウェヒヒヒヒヒ…」

マミ「・・・(鹿目さんの目、笑ってない…)」

10分後、「参った~!!」と叫びながらソファーの上でぶっ倒れる杏子だった…。

ほむら「私の戦場はここじゃない・・・」
ハチべえを加えた魔法少女の一行は、やっと鹿目まどかの家についた。

まどか「マミさん、着きました」

マミ「鹿目さんのお家はここね。素敵なお家じゃない」

まどか「マミさんにそう言ってもらえると嬉しいです」

マミ「そういえば美樹さん、お家の人に遅くなるって連絡しなくて良いの? ご両親が心配するんじゃ…」

さやか「えっ! いいんです、ウチは・・・。父は帰ってくるのいつも深夜ですし、母はとっくの昔に家を出て行っていないので…」

マミ「そう・・・ごめんなさいね、そういう家庭の事情とは知らなくて…」

さやか「気にしなくたっていいですよ、マミさん。そんな感じじゃないと、なかなか魔法少女なんて出来ませんから…」

まどか「それでは皆さん、こちらにどうぞ!」

鹿目まどかは門から玄関に向かって歩き始めた。その時だった、怪しい人影が突然、まどかの前に出て来た。

「よう~、遅かったじゃねーか!!」

まどか「誰!? あっ! あの時の…」

マミ「あなたは・・・」

ほむら「佐倉杏子、どうしてこんなところにいるのかしら? 確かあなたは招待していないはずよ」

杏子「いいじゃんか、さっきさ~近くを通ったらお前らの話が聞こえてちゃってさ~もう知らない仲じゃないだろ。昨日の敵は、今日の友って言うじゃん!」

さやか「あんたって人は、もう調子いいっていうか・・・」

杏子「でもさ~、ちょっと冷たいんじゃない~。魔法少女同士、あたしも夕飯に誘ってくれても~!」

さやか「あのね~!! さっきのさっきまで、勝手にあたしの身体に乗り移ってめちゃくちゃやってたくせに、調子こいてんじゃないわよ!!」

杏子「はぁ~!? 何言ってんだお前!! あたしがお前の身体に乗り移っただと~!? 一体何の事だ?」

さやか「とぼけるな!! マミさんが言ってたけど、あんたの得意技の乗っ取りの魔術使ってたくせに!!」

マミ「あ、あの美樹さん・・・私、得意技とか言ってない…」

杏子「あーん!? 確かにそういう幻惑系の魔術はあたしの専売特許だけどさ~。知らねーもんは知らねーんだよ!! ぶっ殺すぞ!!」

さやか「この~、とぼけるな!!」

マミ「まあまあ二人とも落ち着いて!」

ほむら「・・・(まったくこの二人は厄介ね)」

ガチャ!! 巴マミが二人をなだめようとしていたその時、玄関の扉が開いた。

「誰だい? 家の玄関の前で騒いでいるのは?」

扉を開けたのは、まどかの父の知久だった。後ろには弟の達也も立っていた。

まどか「お父さん!! ただいま!ちょっとこれは事情があって・・・」

達也「まろか、まろか~」

知久「おやおや、これはこれは・・・え~と、皆さんコスプレ部の活動の帰りだね。で、まどかが皆さんを夕飯にご招待したと・・・」

まどか「そ、そうなの~!! 連絡しないでこんなに連れて来ちゃたけどご飯大丈夫かな?」

知久「オッケイ、オッケイ!! 僕を誰だと思ってるんだい? 4人や5人ぐらいの飯ぐらい何とでもなるさ!!」

マミ「こんばんは。初めまして、え~と、コ、コスプレ部の部長の巴マミと申します。この度はまどかさんのご好意に甘えさせてもらいました。こんなに大人数で押し掛けちゃって、ご迷惑ではなかったでしょうか?」

知久「君が巴マミさんだね。かねがねまどかからは話を聞いているよ。まどかが随分とお世話になっているようで…迷惑どころか大歓迎ですよ!!」

さやか「こんばんは~おじさん!! (それにしてもマミさんがコスプレ部の部長って!? プププ…)」

知久「お~、さやかちゃんも一緒か!こんばんは! え~と、こちらは?」

杏子「チース!! あたしは佐倉杏子。夕飯お世話になりまーす!!」

知久「チース…!? え~と、佐倉さん、こんばんは!」

ほむら「こんばんは、暁美ほむらと申します。まどかさんにはいつもお世話になっております。今日はご招待戴きありがとうございました」

知久「こんばんは、暁美さん。こちらこそまどかがお世話になっております・・・まどか、ちょっと」

まどか「お父さん、何?」

知久「さやかちゃんはともかく、みんな美少女揃いじゃないか!! 凄いな、コスプレ部って奴は!!」

さやか「あの、おじさん…あたしにも聞こえちゃてるんですけど~!!」

知久「あれ、さやかちゃんにも聞こえちゃった!? いやいや~さやかちゃんも個性的でカワイイよ~!!」

さやか「もう~、個性的って一言余計!!」

知久「あっ、ゴメン、ゴメン!!」

美樹さやかは鹿目家にはしょっちゅう遊びに来ていて、鹿目知久とも懇意だった。

まどか「もう、お父さんたら興奮し過ぎて声大きいんだから…」

後ろで話を聞いていた佐倉杏子は何か閃いたらしく、ニヤリと笑った。

杏子「やーい!! 残念!! さやかちゃ~ん!!」

佐倉杏子はそう言い残すと、おもむろに玄関の中に入り靴を脱いでリビングへ走って逃げた。

さやか「こら~!! 杏子待て~!! 残念って何よ! 大体、あんただけには言われたくないわ~!!」

ドタドタドタ・・・美樹さやかも佐倉杏子の後を追うように走っていった。

マミ「ちょっ、ちょっと!! この子達は人様の家で何やってるの~!?」

まどか「ははは・・・(二人とも小学生?)」

力無く笑うことしか出来ない鹿目まどかだった。ちなみにこれが美樹さやかの有名な自虐ネタ「美少女だと思った? 残念!! さやかちゃんでした~!!」を思いつくきっかけとなったのだった…ホントか!?(ウソです)
タッタッタッ…鹿目まどかを先頭に、巴マミ、美樹さやか、暁美ほむらの順でまどかの家に向って走っていたが、突然まどかが足を止めた。

まどか「もうこのくらいまで来れば大丈夫かな…」

マミ「そうね、鹿目さん。ちょうどいいわ。この辺で少し休みましょう!」

まどか「分かりました、マミさん」

マミ「ところで鹿目さんの家まであとどのくらい?」

まどか「あと少しです。そこの角を曲がって50メートルくらいかな?」

マミ「もう近いわね。ところで鹿目さん、こんな時間に急に大人数でおうちにお邪魔しちゃって大丈夫かしら?」

まどか「多分大丈夫です。母は帰りが遅いですし、父と弟がいると思いますが、前からクラブの人達を活動後にでも夕飯にご招待しなさい、と父に言われていましたから…」

マミ「えっ、クラブの人達って?」

まどか「あ、あの、ちょっと前に魔法少女の契約をした夜、魔法少女の姿を早く見たくて私の部屋でついしちゃったんですけど、夕飯を呼びに弟がノック無しで突然入ってきちゃって家中大騒ぎになっちゃったんです。それでクラブ活動で「コスプレ部」に入ったってウソついちゃって・・・テヘヘ」

マミ「・・・ということは、私はコスプレ部の先輩…」

さやか「あっはは~!! まどからしいわ、コスプレ部、受ける~!!」

ほむら「はい、まどか」

まどか「へっ!? あ、ありがとう、ほむらちゃん」

暁美ほむらが鹿目まどかに手渡したのは、よく冷えたスポーツドリンクのペットボトルだった。

さやか「あっ、まどかだけずるーい!! あたしにも頂戴よ!!」

ほむら「あなたの分は無いわ。ほら、そこに自動販売機があるから自分で買いなさい」

さやか「もー!! 予想通りの展開しちゃってからに~!!」

まどか「さやかちゃん、私が一口飲んだら、さやかちゃんにも回してあげるね」

さやか「おー!! さすがあたしの嫁だ、優しいね~!!」

ほむら「ダメよ!! まどかの次は私の番よ!!」

さやか「何でよ!! ハッハーン・・・(ニヤッ)」

ほむら「美樹さやか、そのいやらしい含み笑いは止めなさい!!」

さやか「そんなに、まどかと間接キッスしたいんだ~どっちがいやらしいんだか…」

ほむら「・・・黙りなさい!!」

さやか「顔真っ赤にしちゃってカワイイ~」

ほむら「美樹さやか、それ以上言えば、あなたはここで命を落とすことになる…」

暁美ほむらは魔法少女に変身し、盾から拳銃を取り出した。

さやか「マジか!? 冗談じゃないわよ! まどか助けて~」

美樹さやかは、まどかの後ろに逃げ隠れた。

まどか「もう~二人共やめてよ~!!」

ほむら「私を馬鹿にする奴は、例えまどかの願いでも許さない!!」

さやか「何よ、マジであたしを殺ろうとすんの!! やれるもんならやってみなさいよ!!」

美樹さやかも魔法少女に変身した。

まどか「もー!! ほむらちゃんにさやかちゃん!! こんな時にケンカしないで!! 私も本気で怒るよ!!」

ポカ!!
ポカ!!
鹿目まどかは暁美ほむらと美樹さやかの頭を軽く殴った。驚く二人。

ほむら「ごめんなさい、まどか…」

さやか「ゴメン、まどか。調子に乗り過ぎた…」

その様子を少し離れた場所で見ていた巴マミとハチべえ。

ハチべえ「巴マミ、今の地球人というのはあんなにすぐ殺し合いをするのかい? 怒りの感情エネルギーが半端ないじゃないか!」

マミ「いやあれはおふざけよ。本気にしないで!」

ハチべえ「そうなのか、わけがわからない…」

マミ「は~、世話の焼ける二人だわ…」
マミ「鹿目さん、美樹さん、この場所は危険だわ。早く離れましょう!!」

まどか「あれ!? マミさん、仁美ちゃんと戦っていたんじゃ・・・」

さやか「そうだよ、どうなってるのコレ!?」

ほむら「それは私が説明するわ、まどか…」

さやか「こら、あたしを省くな!」

ほむら「志筑仁美と巴マミ、いえ志筑御前と巴御前と言うべきかしら・・・あの因縁の二人は、今、魔女結界と呼ばれる亜空間で戦っている最中よ、意識体としてね。実はね元々二人には実体としての身体は現世では持っていないの。だって千年も前の人達だから。それでこの現世では、子孫である巴マミや志筑仁美の身体を乗っ取っていたという訳よ」

まどか「マミさん、ほむらちゃんの言っている事って本当ですか?」

マミ「概ね当たっているわね。でもね、巴御前様が私を乗っ取っていた表現には少し抵抗があるな~(・・・それにしても暁美さんがなぜ、そのことを知っているのかしら?)」

さやか「なんでですか、マミさん?」

マミ「そうね、乗っ取っていたというより、時たま身体をお貸ししていたという感じかな…」

さやか「何だそりゃ!! 結局やってることは同じじゃねーか! 聞いて損したぜ!!」

まどか「さやかちゃん、またその不良みたいなしゃべり方してる。マミさんに失礼じゃない?」

さやか「うっせーよ!! このカマトトぶったピンク頭がー!!」

まどか「(ウルッ)さやかちゃん酷いよ、あんまりだよ! エッエッ…」

さやか「このアマ直ぐ泣きやがる。超ウゼェー!!」

マミ「フーン・・・やっと確信したわ。あなた、中身は佐倉さんでしょ?」

さやか「(ギク!!)え~と何のことかな~、あたしし~らな~いっと!!」

マミ「とぼけてもダメよ。師匠の目はごまかせないわ! 白状なさい!!」

さやか「ばれちゃあ、しょうがないか…。あたしも実は意識体として他人を乗っ取ることが出来る魔術を持っているのさ! というか、なんか怒られそうだから、じゃっな~!!」

マミ「あっ逃げた。もう~あの子は逃げ足だけは速いんだから~」

ガクッ…美樹さやかは意識を失ったように座り込んだ。それを見た鹿目まどかはすぐ駆け寄り、美樹さやかが倒れこまないように上半身を支えた。

まどか「さやかちゃん、大丈夫?」

さやか「う~ん、あっ、まどか!! あたしまた意識を失っていたみたいで、ゴメン!! 先に誤っておくね。あたしまた誰かに失礼なこと言ってたでしょう?」

まどか「う~うんん、全然そんな事言ってなかったよ、安心してさやかちゃん」  

ほむら「・・・(まどかは優し過ぎる)」

キュゥべえ「変だな~僕にはまどかに向って、このカマトトぶったピンク頭がー!!って、聞こえたんだけどな~」

ほむら「キュゥ~ベ~え!! ちょっとは空気を読みなさい!!」

バキューン、バキューン、バキューン!!
暁美ほむらの拳銃によって、キュゥべえはいつものように蜂の巣になった。

マミ「ちょっと暁美さん!! 所かまわず拳銃を撃たないで!! 警察が来ちゃうじゃない!!」

ピーポーピーポー…

マミ「ほら、もう見つかったじゃない! みんな急いでここを離れるわよ!!」

さやか&まどか「はいっ!!」

警察も最近銃声が度々聞こえると住民から通報があってパトロールを強化していたのだ。そしてハチべえも含めて、とりあえず近くのまどかの家に集合して今後の対策を練るという形で、その場からは誰も居なくなった。と思いきや・・・

歩道に倒れていた仁美「さやかさん、まどかさん、わたくしを置いて行かないで・・・バタッ」

その後、意識を失い倒れていた志筑仁美は警察に発見され、保護されるのだった。
マミ「千年ぶりの因縁の対決という訳ね、志筑仁美、いえ志筑御前!!」

仁美「やはり覚醒しておったか…おのれのせいで我ら志筑一族は千年もの間、亜空間に閉じ込められ、地底奥深く封印されてきたのだ…」

マミ「それが何故今になって封印が解かれ、地上に舞い戻って来られたというの?」

仁美「フフフ…知りたいか? 封印を解いたのは、ここにおるキュゥべえよ。巴マミ、お前がキュゥべえと魔法少女の契約を結んだ時、千年前の私の呪いが発動し、封印が解けたのだ…」

マミ「まさかあなた、私の子孫が魔法少女になることを予測していたというの!!」

仁美「ああ待ったぞ、千年の長きの間、地底奥深くでこの時を待っていたのだ…」

ゴゴゴゴゴ・・・・・・
因縁の二人は暗闇に吸い込まれるように消えてしまった。

さやか「あの~キュゥべえ。なんか因縁の対決が始まっちゃったぽいんだけど、どういうこと?」

「僕はキュゥべえじゃない、ハチべえだよ! キュゥべえはあっち!」

ハチべえと名乗るインキュベーターは耳から生えた手みたいので、志筑仁美の近くのインキュベーターを差した。このインキュベーターは、手みたいのくっついてる輪っかが銀色だった。

さやか「へっ!? ハチべえって、うっかりハチべえみたい、何それ笑えるプププ・・・」

まどか「キュゥべえじゃなくて、うっかりハチべえだったんだ!ウェヒヒヒ・・・・」

ハチべえ「何だ、この地球人は…初対面で失礼じゃないか!!」

さやか「ゴメンゴメン…ところで、あんたって何者なの?」

ハチべえ「僕はキュゥべえの兄だ。初代魔法少女である巴御前のパートナーさ!」

ほむら「キュゥべえのお兄さんですって!!」

ほむらは、さやかとまどかの間におもむろに首を突っ込んできた。

さやか「わっ! 急にこっちに入ってくんなよ、びっくりするだろ!!」

ほむら「ごめんなさい。あまりにも興味ある情報だったものだから…」

まどか「(ほむらちゃんの顔が近い…近くでみるとほんとカワイイ~お人形さんみたい…ウェヒヒヒ…)」
キュゥべえ「もう時間が無いんだ。早くマミを差し出さないと宇宙が危ないんだ!! その為に君達に協力して欲しい!!」

さやか「ちょっとあんた、黙って聞いてりゃ、次から次とわけわかんないことばかり言ってんじゃないわよ!!」

まどか「そうよ、宇宙の為にマミさんを差し出すのに協力しろとか、そんなの出来るわけないよ!!」

「まどか、そいつの言っていることを信じちゃダメ!!」

キュゥべえ「誰だ!!」

まどか「ほむらちゃん!!」

さやか「何だ、サイコの電波さんかよ…」

どこからか魔法少女姿の暁美ほむらが突然現れた。

ほむら「サイコの電波さんですって!! 何よそれ!? まあいいわ、今は馬鹿に構っている暇は無い…。志筑仁美!! そこに隠れているのは判っているわ、出てきなさい!!」

シーン・・・

ほむら「・・・」

さやか「あっははは!! カッコ悪~い!! あたしを馬鹿にするからだ!! フヒヒヒ…あ~おかしい…」

バッシュ!!

さやか「うっ!!」

バタッ!! 美樹さやかは何者かに狙撃され、歩道に倒れた。彼女の胸の辺りから真っ赤な血が路上に流れ出てきた。

まどか「さやかちゃーん!!」

ほむら「くっ、しまった!!」

「フフフ…ピーチクパーチクうるさい小鳥さんは少し黙っているのがお似合いですわ…」

暗闇から姿を現したのは、志筑仁美だった。手には消音器付きの拳銃を持っていた。

まどか「酷いよ、酷いよ~仁美ちゃん!! さやかちゃんを殺しちゃうなんて!!」

「まどか、誰が殺されたって?」

はむら「美樹さやか!! あなた大丈夫なの!?」

胸の辺りを真っ赤に染めているが、確かな足取りで立ち上がった美樹さやかだった。

さやか「心配御無用だよ、ホムラ! あたしはこの程度の傷は直ぐ治っちゃうのさ!」

仁美「くっ、心臓を貫いたというのに、こいつゾンビか!?」

まどか「さやかちゃん、凄い!!」

さやか「ゾンビとは随分と失礼だね、仁美!! あんたキュゥべえの言った通り、本当に悪い宇宙人かもね。それとこの穴の開いた制服どうすんのよ!! 弁償しなさいよね!!」

ほむら「フフフ…そんな戯れ言、言えるんだったら大丈夫ね」

ザザッ! 街灯に照らされた街路樹がざわめいた。

「そこまでよ!! 地底人の仁美さん!!」

シュタッ!! 何者かが街灯から飛び降りた。

まどか&さやか「マミさん!!」

ほむら「巴マミ!!」

仁美「巴御前、おのれ・・・」

キュゥべえ「みんな、僕を忘れたら困るな~」

魔法少女姿の巴マミの肩にはキュゥべえが載っていた。

まどか「キュゥべえが二人!?」

さやか「どうなってるのコレ!?」

ほむら「まどか、二人じゃなくて二匹よ」

さやか「そこ突っ込むところ?」
さやか「あのさ~それを聞く前にちょっとあんたに聞きたいことがあるんだけど…」

キュゥべえ「何だい? 急いでるんだ!」

さやか「まあ落ち着きなさいって!! 前から気がついていたんだけど、キュゥべえって感情持って無いって言ってたけど、実は持っているよね?(ニヤリ)」

キュゥべえ「(ギク!!)そんな訳ないじゃないか! 僕達は感情が無いからこそ、感情エネルギーを回収しようと思っているのに!!」

さやか「何それ? そんなのあたし初めて聞いたよ」

キュゥべえ「(しまった~) な、何でもないよ!! 君達には直接関係ないことだ!! というか、今それどころじゃないんだ!! 早く僕の話を聞いてくれないか!」

さやか「思い切り焦ってるし、やっぱ感情持ってるじゃん…」

まどか「さやかちゃん…」

さやか「まあいいよ…。で、私達に話ってなに?」

キュゥべえ「(ふ~危ない、危ない…美樹さやかが馬鹿で良かった…) え~と、そうだった! 志筑仁美はどこに行ったんだい?」

さやか「仁美!? 何であんたが仁美のこと知っているのよ!!」

キュゥべえ「そんなことどうでもいいじゃないか!!」

さやか「どうでもよくないわよ!! このスカポンタンのストーカー野郎!!」

キュゥべえ「・・・君達はいつもそうだ。僕が有用な情報を伝えようとすると、なぜか感情に任せて意味不明な罵詈雑言を放ち、その結果悪戯に時間を浪費して事態を悪化させて行くんだ…ブツブツ…」

さやか「何言ってるのコイツ?」

まどか「あ、あのねキュゥべえ、仁美ちゃんなら、随分前に急用を思い出したみたいで、途中で別れてどこかへ行っちゃたよ」

さやか「そうそう、そうでごやんすよ! 大方もう家に帰ってるんじゃないの?」

まどか「ねえ、キュゥべえ…仁美ちゃんがどうかしたの?」

キュゥべえ「僕は前から彼女をマークしてたんけど、ついに志筑仁美の正体が判ったんだ!! 彼女はね、実は地球人では無かったんだ!!」

さやか&まどか「えっ!?」

さやか「ちょっ、ちょっと何言ってるの、あんた!! 仁美が宇宙人だったとか言いたいわけ?」

まどか「・・・(仁美ちゃん…)」

キュゥべえ「いや、地球外生命体だ!!」

さやか「アホー!! それを宇宙人って言うの!!」

キュゥべえ「だって君達だって宇宙に住んでいるんだから宇宙人じゃないか!」

まどか「それはそうだけど…」

さやか「もういいよ!! で、仁美がその地球外ナントカで、どうしたのよ! 侵略戦争でもおっぱじめるのとでも言うの?」

キュゥべえ「その通りだよ美樹さやか!! やるじゃないか!! そして最終的な狙いは、巴マミの抹殺なんだ!!」

さやか&まどか「えっ~!!!!」