「・・・え?なにこれ?」
「ポスターと、チケットと、
・・・出店許可証?」
おいらの後ろから、
にゅ〜っと顔を出したのを見て、
ニノがニタニタ悪い笑みを浮かべて続ける。
「すみませんね。
急に呼び出して・・・デート中でしたなら、
来るのは明日で良かったのに」
「は?
デ!デートじゃないし!!
ただただ買い物に出てただけだよ!!
ね、そうだよね?翔!」
「ん?俺にとって、
智との買い物も、
お出かけ全部デートのつもりだけど?」
「は?
ば!もうなに言ってんの?
もう、翔、恥ずかしい!!」
「え?本音を言ったですけど?
智が大好きなだけだよ?どこが恥ずかしいの?」
「うるさい!寝言は寝て言え!!」
「え〜〜、絶賛起きてて、
絶賛活動中ですけども?」
「うるさいうるさい!!」
「・・・ええっと、
そろそろ馬が出てきます?」
ぽりぽり顎を掻きながら、
ニノがぼそっと言ってきた。
「え?馬?なんで?」
「よく言うじゃないですか、
『人との恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて・・・』とか」
「え?ニノさん?
僕らの恋路を邪魔するんですか?
もしそうなら、馬に任さず僕自身がいきますよ?」
「ちょ!翔、なに言ってんの??」
「それは馬より怖いな〜。
では、そろそろ本題に戻っても良いですか?」
「そう!
翔のせいで話、脱線しちゃったじゃん!
翔はもう黙ってて!」
じろっと翔を睨み付けると、
やばって顔して一歩後ろに下がった。
「・・・はい」
よし!
「ねえ、ニノ、
これどうしたの?
なんでおいらに?」
「可愛い男の子が届けにきてくれました。
『こえがきこえた』って言ってましたよ。
心当たりは?」
「・・・声?」
さくらフェスティバル?
「これって・・・
お花見ってことでしょうか?
お花見会場でのイベント・・・
だからさくらフェスティバル?」
「・・・お花見?」
「そう、なら、声って俺かも」
「へ?翔?」
「うん。ほら、先週公園に散歩に行った時」
「・・・公園?散歩?」
「そう、桜が咲き始めてて、
いつもの公園にさ、
美大生?スケッチしてたじゃん。
で、その子、似顔絵も描けますって看板出してて」
「・・・ああ!そう言えば!」
先週行ったな、公園!
いたいた、空のスケッチしてた子。
すごく優しくて綺麗な色出してた。
で、その子が描いた芸能人さんの似顔絵も並んでて、
すごく上手だった!!
『智もあんな風に似顔絵描けるんじゃない?
よくあるじゃん、イベント会場に、
似顔絵描きますってお店、
智がやったら、俺、通い詰めちゃうな〜』
みたいなことを翔が言ったような・・・
で、おいらが、
『それ楽しそうだよね!
でも、おいらこだわっちゃうから、一枚描くのに時間がかかりすぎるかも』
みたいな話をした。
「え?声ってそれ?」
「・・・でもそれ以外思い当たる事柄がないよ」
「・・・確かに」
けど、
あの時2人しかいなかったよね?
その話をしたのは、
その子の絵を見た後、
家に帰るときにしたはず。
その時の声が聞こえたってこと?
これを届けてくれた男の子って・・・
「ふふ、不思議な感じな子だったから、
聞こえちゃったのかもしれませんね」
「・・・・・」
「ここに出店許可証があるってことは、
このポスターに書いてある屋台・・・
お店を出す許可を得たってこと?」
「そうなりますよね」
ん?
ニノと翔?
「場所も決まっている。
期限も決まっている。
となると準備を始めないといけませんね」
ん?
「となると・・・看板!
まずは看板ですね!ニノさん!
あとはお店の名前も決めないと!
う〜ん、あ、『大野智画伯の似顔絵専門店』とかどうでしょう?」
え?
「・・・なるほど。
いいですね、看板はこちらでも作れます。
手配しましょう」
え?ちょっ・・・
「ちょっと!え?マジで出店するの?」
「「え?しないの?」」
「え?」
「「え?」」