俺が貴方を見間違うはずがない。

今、あの店に入ってったのは絶対、

智くんだ。

 

 

「ん?お!うわっ」

 

 

同僚の腕を振り切って、

智くんが入って行った店に急ぐ。

 

 

店のドアには『close』の札。

 

 

この札をかけに出てきた?

・・・もしかして、

ここで働いてるの?

 

 

・・・どうする?

ドア開けてみる?

でも・・・

 

 

「おい!櫻井、急にびっくりするだろ?

何?ここって・・・なんだやっぱり彼女いるんじゃん!

彼女のプレゼントでも買うの?」

 

 

「違う。

ちょっと気になっただけだ。

しかももう閉まってるし。

で?いい感じのBARってどこよ?」

 

 

「お!行く気になった?

こっちこっち」

 

 

「だからいちいち肩組むな!」

 

 

「いいじゃん。俺とお前の仲だろ?」

 

 

どんな仲だ。

 

 

そんなことより、

今のは絶対・・・

今日は仕方ない。

うるさいのもいるし、後日出直そう。

 

 

 

 

 

 

 

次の休日、

あの商店街にやってきた。

 

 

確かこの辺り・・・

『Ladybird』

てんとう虫?だったよな。

 

 

はやる気持ちを抑え、

店に向かう。

Openの札がかかってるのが遠目でも確認できた。

 

 

店に近づいて、

そっと中を確認する。

誰も・・・いない?そんなはずは・・・あっ!

 

 

あの猫背の後ろ姿!

間違いない!絶対智くんだ!!

 

 

「智くん!!」

 

 

「あら?いらっしゃいませ」

 

 

え?

 

 

店内に智くんの姿はなく、

いたのは・・・マダムって言葉が似合う女性だった。

 

 

「あ、あの、さっき・・・」

 

 

「え?」

 

 

「あ、い、いや・・・あの・・・」

 

 

「何かお探しですか?

ふふ、大事な人へのプレゼントかしら?」

 

 

男が1人でジュエリーショップに入るんだもんな。

普通はそう思うよね。

でも俺が探してるのは・・・

 

 

何も見ずに出て行くのは失礼だ。

 

 

「・・・まあ、そんなところです。

すごく外観も素敵なお店だったので、

気になっていて、店内も素敵ですね」

 

 

「まあ、ありがとうございます」

 

 

ふと、目に留まったのは、

ブルーの石のネックレス。

智くんと一緒に見た海の色に似てる。

 

 

「それが気になります?」

 

 

「え?あ、綺麗な色だなって思って」

 

 

「その石は『アクアマリン』

幸せ、永遠の若さ、富、喜び、勇気を象徴する石なんです。

お守りとしても人気があります。

恋人とのすれ違いや夫婦の不和を解消したいと願う時とも効果を発揮し、

幸せな恋愛や結婚をもたらすとも言われています」

 

 

「アクアマリン?」

 

 

「ええ、その中でも、これは、

希少なサンタマリアアクアマリン。

最も綺麗なアクアマリンと言われているんです」

 

 

恋人とのすれ違い・・・解消・・・お守り・・・

 

 

「あの・・・これください」

 

 

「ありがとうございます。お包みしますね」

 

 

あの時の智くんを思い出す。

手を繋いで浜辺を歩いたね。

 

 

ねえ、智くん、どこにいるの?

 

 

逢いたいよ。

 

 

レジを済ませ、

ネックレスの入った袋を受け取る。

 

 

「ありがとうございました。

またお越しください。

今度は・・・大事な人と一緒に」

 

 

「・・・はい。また来ます」

 

 

・・・大事な人と一緒にか。

そう出来たらどんなにいいか・・・

 

 

 

『・・・ねがいごと、うけたまりまちた』

 

 

ん?何?今の声?

辺りを見渡しても誰もいない。

気のせい・・・かな?

 

 

財布をしまおうと、

ポケットに手をやると、

そのポケットに見慣れぬ封筒が入っていた。

 

 

・・・何これ?

 

 

それは天色の五色の風船が描かれてる封筒だった。

 

 

 

中を開けると、

チケットが2枚?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ、なんのチケットだろう?

 

 

日付が入ってる。

8月10日・・・?