大野さんに、
『空いてます!明日は定時で上がれます!!』と返信したら、
待ち合わせの時間と場所が送られてきた。
大野さんから連絡が来た!
やっと連絡が来た!
すごく嬉しい!!
けど、用件のみの連絡。
男だから、
当たり前かとも思うけど、
そっけない文面に、いい話ではないのかと、
不安になる。
『話がしたい』
一体どんな話?
俺、やっぱり・・・振られるのかな。
だって、冷静になるとありえないもの。
職場で盛るなんて・・・
会ったその場で、
冷たくあしらわれて、それで終わりかも。
ぐるぐるしたまま次の日を迎え、
あっと言う間の約束の時間になった。
時間より少し早く行って大野さんを待っていようと思っていたのに、
見慣れた猫背の後ろ姿がそこにあった。
振り返り、俺に気がついた大野さん。
「あ、翔くん、こっち」
あ、あれ?
大野さん、いつもと一緒?
・・・普通じゃない?
あれ?怒ってるんじゃないの?
だって、まだ『翔くん』呼びだ。
その場でってのないみたい。
このあとくる?
「大野さん、お疲れ様です。
ええっと・・・お話ってなんでしょうか?
って言うか、俺も話があって!!
あの!!」
先手必勝!
まずは謝らないと。
頭を下げようとしたら、
「ねえ、もう飯食った?」
「え?」
「腹空いてない?
おいら、昼から何も食べてないんだよね〜」
飯?今はそれどころじゃ・・・
「翔くん美味しい店いっぱい知ってそうだよね。
どっか知らない?」
美味しい店?
「・・・この近くにうまい居酒屋がありますが」
「おし!決定!そこに行こう。
まずは腹ごしらえ」
「は、はあ・・・。こちらです」
予定外の展開に、困惑しつつも、
大野さんを行きつけの居酒屋に案内する。
腹が減っては戦はできぬ。だな。
今夜は決戦なんだから。
「・・・へえ、意外だな」
案内された席に着き、お手拭きで手を拭きながら、
大野さんが店内を見渡してる。
「意外とは?」
「ん?翔くんもこういう庶民的な居酒屋さんに来るんだ。
もっと女性受けするオシャレな店に案内されるのかと思ってた」
「・・・大野さんの俺のイメージってそんな感じなんですか?」
「んふふ、だって、翔くんめちゃモテるじゃんか!
ここ最近で、それを身を以て体験したからさ」
「モテるのは大野さんもでしょ?」
「おいら?そんなモテないし。
お!冷奴!頼んでいい?
翔くんは何食べる?」
「え?じゃあ・・・」
お互い食べたいものを注文することにした。
注文した料理が運ばれてくる。
「とりあえず乾杯しよっか」
「は、はい」
「お疲れ様でした〜〜!」
グラスを合わせ、
大野さんがグラスに口をつける。
「ぷっは〜〜、うんまい!
仕事の後のビールは格別だね〜」
「そうですね。
あ、大野さん、出張お疲れ様でした。
昨日めちゃ探したのに、いないからびっくりしました」
「へ?探した?おいらを?なんで?」
「なんでって・・・」
「お、翔くんのお刺身うまそ!
一切れもらっていい?」
「え?あ、はい、一切れでもふた切れでも」
俺の頼んだ赤貝の刺身をうまそうに食べる大野さん。
・・・大野さんって迎え舌で食べるんだ。
ちょっと・・・いやかなり・・・エロい。
いかん!平常心!
何か話題を・・・ん?
「・・・さっき腹減ったって言ってませんでした?」
「ん?言ったけど?」
「腹減っててこんだけ?
こんだけで足りるんですか?」
「ん?これでも頼んだ方だよ?
っていうかさ、翔くんが頼みすぎなんだって!
これ全部食べれるの?」
いやいやいやいや!
これは普通の量でしょ?
大野さんが食わなすぎなんだって!