「・・・誰が誰を・・・好きだって?」
びっくりした顔して、
俺を見上げる大野さん。
「わかりませんか?
俺が好きなのはあいつじゃなくて、貴方ですよ。
他の誰でもない。
俺は、貴方が好きなんです」
「え?」
「わかりませんか?
さすがに男同士で恋人だなんて、
おかしいって俺だってわかってますよ。
わかってるけど、そうしないと、貴方のそばで、
貴方を守れないでしょ?」
「・・・え?」
「いくら報酬だとしても、
キスなんて、好きでもない人としないでしょ?
しかも男に。
貴方は、するんですか?
好きでもない人とキス」
「そんな、し、しないよ!
好きでもない人とキスなんて!」
挑むような上目遣い。
思わず言葉に詰まる。
今、大野さん・・・
言ったよな。
好きでもない人とキスしないって。
ってことは・・・
俺のこと・・・
「じゃあ、俺のこと・・・好きってことでいいですか?」
ハッとして、
目を逸らす大野さん。
「ちが!そうじゃなくて!
おしまいにするんだから!キスもこの関係も!」
こっちを見て。
俺を見て。
瞳を・・・逸らさないで。
なんでそんな真っ赤になってるの?
おしまいにするんでしょ?
その反応は・・・ずるくない?
もう言ってるようなものだよ。
俺の勘違いじゃないよね?
貴方は・・・俺が好きでしょ?
ちゃんと聞かせて。
「おしまいにする前に教えてください。
大野さんはなんで俺とキスするんですか?
なんであの時俺にキスしたんですか?」
「え?あ、あのとき・・・?」
「俺じゃない。
最初にキスしてきたのは、大野さんだ。
忘れたなんて言わせない。
最初にここで会った時、俺にキスしましたよね。
『気持ち悪いからおすそ分け』」
「・・・あ」
「俺はあの、おすそ分けのキスが・・・忘れられなかった。
貴方の唇が忘れられなかった。
そんな時、仕事でコンビを組むことになって、
貴方と一緒にいる機会が増えて・・・
なんで貴方の唇が忘れられなかったのかに気がついた」
「・・・・・」
「あのキスで、
俺は・・・堕とされたんだ。
貴方に、一瞬で恋におちた」
唇が・・・求めてる。
貴方を求めているんだ。
「・・・翔・・・くん?」
「こんなに好きにさせておいて、
おしまいする?そんなこと許さない」
「え?ちょ・・・あっ・・・んっ」
「・・・嫌なら逃げて。
本気でおしまいにしたいなら・・・
自分で逃げて・・・」
逃げないなら・・・
俺を好きって言ってよ。
俺が好きって言えよ