「よし!ご飯も薬飲めたし、

あとは睡眠だね。寝る前にもう一回熱測っとこうか?

体温計とってくるから待ってて」

 

 

「・・・へ?」

 

 

「え?何?」

 

 

「なにって、もうねる?ふろは?」

 

 

「は?入る気?

智くん熱あるんだよ?

入っちゃダメでしょ?」

 

 

「・・・なんで?」

 

 

「なんでって、普通は熱ある時は・・・ん?ちょ!智くん、どこ行くの?」

 

 

「だから・・・ふろ。

ねるならすっきりしてからねたい」

 

 

よろよろ歩いていく智くん。

 

 

「ええ?!まじで!」

 

 

慌ててついていく。

ええっと、この場合、一緒に・・・

 

 

「・・・はいらないからね」

 

 

「へ?」

 

 

俺、今声に出してた?

 

 

「しょおくん、めしまだでしょ?

ちゃんとたべて、おいらはもうひとりでだいじょうぶ」

 

 

「・・・で、でも」

 

 

まだ熱があるんだし、

お風呂の中で倒れたら・・・

 

 

「・・・しょおくん?」

 

 

熱が出てるせいか、

凄まれると、いつも以上の迫力。

 

 

「わ、わかった!

シャワーはだめだよ。湯船でしっかりあったまってきてよ!

あと、気持ち悪くなったらちゃんと俺のこと呼んでよ!

出てきたら、ちゃんと声かけてよ」

 

 

「ん、わかってる」

 

 

心配だけど、

智くんを信じて、風呂を後にした。

 

 

そうだ!

智くんが入ってる間に、

色々準備しておこう。

 

 

まず智くんの自室の暖房を入れて、

寝室の加湿器と・・・あ、空気清浄機も運んどくか。

あとは、買ってきたポカリとマスクと、冷えピタ。

で、智くんが寝たら俺の布団を運ぶ。

 

 

よしよし、いい感じ。

 

 

飯を食べとけと言われてるし、

今のうちにかっ込んどくか。

自分用に買ってきた弁当を温める。

 

 

今夜はビール・・・はやめておこう。

深夜に智くんの容体が悪化したら、

車の運転するかもしれない。

 

 

何気につけたテレビ。

お笑い芸人さんたちが、過去にもらったチョコの数を言い合ってる。

 

 

・・・ああ、そっか。

今日はバレンタインだった。

 

 

最近何かとバタバタしてたし、

当日渡せないからとか言って、

数日前からくださる方もいるから、

今日が当日なのを忘れてた。

 

 

そういえば、

カバンにもいくつか入ってた。

いつの間に入れるんだろうな。

 

 

本当みなさん律儀だよね。

毎年毎年・・・

 

 

「義理チョコにお金かけなくていいのに・・・」

 

 

「・・・ほんめいかもよ?」

 

 

「へ?え?智くん?いつのまに?」

 

 

「いまでた。

おいら・・・しょおくんに、あやまらないと。

あやまってなかった」

 

 

「え?謝る?何を?」

 

 

「・・・ごめんなさい」

 

 

智くんが俺の横に座って、

ガバッと頭を下げた。

 

 

「え?え?何?」

 

 

「ことしは・・・じゅんびがまにあわなかった」

 

 

「準備?なんの?」

 

 

「ちょこれーと。ばれんたいんなのに。

おいらが、こいびとなのに・・・ごめんなさい」

 

 

智くんが今にも泣きそうな顔で、

そんなこと言うから、引き寄せて抱き締めた。

 

 

「いいよ!ここ最近は忙しかったし、

俺もさっきまでバレンタインのこと忘れてたし。

今は風邪を治すことに集中して。チョコレートは治ったら一緒に買いに行こ」

 

 

「・・・なおったら?」

 

 

「うん!チョコ買いに行って、快気祝いに智くんの好きなもの食べに行こう」

 

 

「・・・おいらのすきなもの?

あのらーめんでも・・・いいの?」

 

 

「え?おおっ!いいよ」

 

 

あの激辛のラーメン屋ね。

俺は1辛頼むから大丈夫。

 

 

「おいらのすきな・・・もの、なんでもいいの?」

 

 

「いいよ!ちゃんと治ったらね!」

 

 

「じゃあ、なおったら・・・

おくれるけど、ちょこあげて、おかえしにしょおくんもらう」

 

 

「ちゃんと治ったらね!って・・・え?」

 

 

今なんて?

 

 

「んふふ、はやくなおさなくちゃぁ。

じゃあ、おいら、もうねるね。

おやすみ、しょおくん♡」

 

 

え?え?

まじで?/////

智くんからおやすみのキス♡

 

 

いや!騙されるな!

さっき智くんなんて言った?

 

 

え?え?今年もやっぱりなの〜〜〜〜〜〜??

 

 

 

 

 

 

 

おしまい♪