引き継ぎと準備に追われる日々。

会社でも家でも仕分け仕分けの毎日。

 

 

NYに持っていくもの。

実家に運ぶもの。

処分するもの。

 

 

ガンガン仕分けしてく。

 

 

『は?何それ?

一体何泊するつもり?』

 

 

智くんの下で働いていた頃、

1番最初に一緒に行った出張先で、

一泊分の俺の荷物を見た智くんが、

目を丸くしてたよな。

 

 

あの時の智くん・・・

ふふ、あんな顔初めて見た。

 

 

本当に驚いてたな。

そのあとは・・・俺の大荷物にも慣れたようで、

何も言わなくなったけど、

 

 

今回は、

何度も何度も念押しされてる。

 

 

『部屋の手配完了♪

言っとくけど、そんなに広くないからね!

分かってると思うけど、荷物は最小限にしてね!

日用品、消耗品はこっちでも揃うからね』

 

 

『ちゃんと準備してる?

この前も言ったけど、荷物は最小限だよ。

部屋に入りきらないからね』

 

 

『翔くん、荷物はこの住所に送ってね。

何度も言うけど、荷物は減らしてきてよ!

いらないものは処分処分!!』

 

 

・・・・・

・・・・・

 

 

智くんの俺のイメージってどんだけ〜〜〜

 

 

そんなに心配しなくても、

ちゃんと少なめにしてあるし。

 

 

送るものは、

前もって発送しておいた。

 

 

送った荷物は智くんが受け取ってくれるって言うから、

甘えさせていただく。

 

 

長いと思ってた3ヶ月は、

意外とあっという間だった。

 

 

智くんと連絡が取れるってのが、

大きいのかもしれない。

 

 

会えないけど、

電話すれば声が聞ける。

メールすれば返信が返ってくる。

 

 

智くんが急にいなくなって、

連絡すら取れなかったあの期間に比べれば、

 

 

全然

 

 

・・・とは言えないけど、

大丈夫。

 

 

あと2ヶ月したら、

あと20日で・・・

あと10日で・・・

 

 

NYに行く日を指折り数え、

ついにカウントダウン!

 

 

あと少しで会える。

また一緒に仕事ができる。

 

 

期待がどんどん膨らんで・・・

 

 

出国まで3日を切った。

あと3日したら智くんに会える!!

 

 

今日は部屋を引き払う日。

今夜からしばしのホテル暮らし。

 

 

智くんもNYに行く前の数日間は、

ホテル暮らししてたんだって。

 

 

本当に俺、

何も気がつかなかったんだよな。

 

 

悟らせない智くんがすごいのか、

気がつかない俺が鈍感すぎるのか。

 

 

・・・うん。

智くんがすごいんだ。

そうに違いない。

 

 

おっとそろそろ時間だな。

 

 

時差もあって、

智くんから連絡が来る時間はなんとなく決まってる。

 

 

いつも『翔くん起きてる?』

ってメールをくれる。

 

 

スマホが震えだす。

 

 

いつものメールだと思ったら、

智くんから着信だった。

 

 

あれ?

珍しい。

 

 

・・・もしかして、何かあった?

 

 

「・・・もしもし、智くん?」

 

 

恐る恐る電話に出た。