「今夜、岡田さんと飲みに行くことになったよ。

『大野に奢られそびれた』って言ってたけど、

岡田さんに会ったの?」

 

 

早速メールしたら、

返信じゃなくて、電話が来た。

 

 

使ってない会議室に飛び込んで、

スマホをタップする。

 

 

「もしもし?智くん?」

 

 

『岡田でしょ?きたきた。この前。

常務の娘さん夫妻が視察に来るって聞いてさ、

おいら、翔くんが来ると思ってたんだよね』

 

 

「え?」

 

 

『そしたら岡田でびっくりした!』

 

 

「なんで俺?」

 

 

『・・・こっちに来る前にさ、

聞いてたんだ。翔くんに見合いの話がきてるって、

で、お相手が常務の・・・』

 

 

・・・知ってたんだ。

俺が見合いすること。

その相手が誰かも。

 

 

・・・・・

・・・・・

 

 

もしかして、

だから智くんはNY行きを決めた?

 

 

・・・なんてわけないか。

 

 

『翔くんはバカだよね』

 

 

「は?なんで?」

 

 

『あんな可愛い人も将来の出世もフって、

おいらを好きだって言うなんて、

翔くんはバカすぎる』

 

 

「はぁ!?なんでそれも知ってんの?」

 

 

『内緒』

 

 

内緒って、誰だよ智くんに話したの。

それ知ってるのはあの人しか・・・

智くんと面識あるのかな?

 

 

『んふふ、翔くんて頭いいのに、時々バカだよね』

 

 

もうさっきからバカバカって。

 

 

「・・・そんなバカが好きなのは誰よ?」

 

 

『ん?誰だろうね?』

 

 

え〜〜〜!

そこはおいらだよって言うとこじゃないの?

俺を好きって言わせたかったのに!

 

 

なんで言ってくれないの?

 

 

『あ、仕事中だよね。じゃあね。

岡田に酔い潰されないように気をつけて』

 

 

「あ、うん!頑張る!」

 

 

頑張るって何をだ?

 

 

『翔くん好きだよ』

 

 

「え?ちょっ・・・」

 

 

・・・・・

・・・・・

 

 

・・・ずるいよ。

言うだけ言って電話切るんだもんな。

 

 

言い逃げはずるい。

俺も好きって言いたかったのに!

 

 

智くんこそ覚悟しててよ。

そっちに言ったら、毎日好きって言うからね!

そのほかもことも全部する!

 

 

おっと仕事仕事。

急いで戻らないと。

 

 

会議室を出ると、

後輩とぶつかった。

 

 

「わ!すまん!」

 

 

「い、いえ!

ん?櫻井さんもしかして、彼女と電話してたんですか?」

 

 

「え?なんで?」

 

 

「櫻井さんのそんな顔初めて見ました。

櫻井さんでもデレ顔するんですね」

 

 

「で、デレてないし!!」

 

 

え?俺今どんな顔になってる?

 

 

「彼女と電話は否定しないんだ〜。

会社中の櫻井ファンが泣きますね。

櫻井さんに彼女ができたって知ったら」

 

 

彼女じゃないし彼氏だし!

 

 

ん?彼氏?・・・なのか?

どっちでもいいか。

 

 

ニヤニヤ顔で、

俺を見る後輩。

なんかムカつく。

 

 

「バカ言うな!

そんなことで泣くわけないだろ!

ほら、サボってないで仕事仕事!!」

 

 

「サボってるのは櫻井さんでしょ?

デレてないで仕事してください!」

 

 

「え?ああ・・・そうね。

仕事しよ」