場所を移動したのはいいけど、

なんて切り出そう。

 

 

翔くんが隣にいる。

手を伸ばせば届く距離に。

それだけで嬉しいなんて。

 

 

おいら重症だな。

 

 

ふと翔くんの顔を見上げる。

離れていたのはほんの数年・・・

 

 

なのに・・・

 

 

「・・・翔くん、でっかくなったね」

 

 

男として大きくなったって意味だったのに、

 

 

翔くんが、

『太ったってこと?智くんと一緒にいた時と同じサイズなんだけど』

って真面目な顔していうから、思わず笑ってしまった。

 

 

本当に翔くんは・・・

 

 

言いたいこといっぱいあるとか言って、

何をはじめに言われるんだろうって身構えたてたら、

『俺の誕生日は6月21日じゃないよ!』だって。

 

 

知ってるよ。

そんなこと。

 

 

翔くんが前と変わってなくてホッとした。

 

 

おいらが好きなのは、

 

 

すごく真面目で何でも出来てかっこいいのに、

どこか抜けてて、可愛いの、かっこいいのと可愛いと両方持ってる翔くん。

 

 

その翔くんが、今、

目の前にいる。

 

 

さあ、今度はおいらが罠を掛ける番。

 

 

「おいらさ、翔くんに会えたら、

言いたいことがあったんだよね」

 

 

「へ?」

 

 

「忘れ物取りにきた。

おいらの忘れ物は翔くん」

 

 

翔くんがいないとダメなんだ。

1人では・・・物足りない。

何を見ても思い出すのは翔くんのこと。

 

 

翔くんならどうするかな?

翔くんなら何を選ぶかな?

翔くんなら翔くんなら・・・

 

 

向こうで忘れるどころか、

いつでも翔くんのことばかり。

 

 

「おいら、翔くんがいないとダメだわ。

1人になってやっと分かった。

だからおいらと一緒にNY行こう」

 

 

おいらとともに。

これからずっと一緒に。

 

 

ぽかんとしてる翔くんに、

追い討ちをかける。

 

 

「大丈夫。上にはもう掛け合ってるから。

あとは翔くんの返事次第で、ことが進むようになってる」

 

 

おいらのお願いは、

翔くんの異動願い。

 

 

優秀な部下が日本にいるから、

こっちに呼び寄せたい。と上司に頼んだ。

 

 

さっきの電話は、

その手筈が整ったぞっていう報告。

 

 

翔くんの返事次第なんだよ?

まだ状況が飲み込めない?

 

 

もう仕方ないな。

 

 

「翔くんが好きだって言ってるんだけど?

おいらは翔くんが好きだ。・・・返事は?翔くん」

 

 

少しの沈黙の後、

翔くんが口を開く

 

 

「・・・いく。

智くんと一緒に行く」

 

 

おいらの聞きたい返事はそっちじゃねーよ。

 

 

「ねえ、翔くん、おいらのこと好き?」

 

 

「好きだよ!!

どうしようもなく!!」

 

 

翔くんに抱き寄せられ、

キスされた。

 

 

「・・・しょお・・・だめっ」

 

 

「なんで?好き同士なのに?」

 

 

「そうだけど・・・んっ・・・あっ」

 

 

ここは公園。

誰かに見られたら・・・

 

 

おいらだって、

本当はもう我慢できない。

 

 

もっと翔くんと・・・したい。

 

 

・・・けど。

 

 

「じゃあ、場所変える?」

 

 

さっきのおいらのセリフを、

今度は翔くんがいう。

 

 

「んあっ・・・もう・・・無理!!」

 

 

「へ?」

 

 

「この続きは、NYで!」

 

 

「は?何言ってんの?」

 

 

「おいら明日帰らなくちゃ。

有給は5日だけしか取れなくて。だから明日朝イチ飛行機なんだ」

 

 

「はああ?!」