もう罠でも何でもいい。

 

 

翔くんにちゃんと伝えたい。

そして、あの時、翔くんが言いかけた言葉の続きが聞きたい。

 

 

おいらの勘違いじゃないよね?

そうだよね?

翔くん?

 

 

お嬢さんを見送って、

取り急ぎ、上司の元に走る。

 

 

「すみません!

急で申し訳ないんですが、溜まってる有給使いたいんですけど!!」

 

 

「え?」

 

 

「それともう一つお願いがあるんですけど!!」

 

 

上司に掛け合って、

5日間の休みがもらえた。

 

 

ここからが問題。

翔くんになんて連絡しよう。

 

 

てか、

このアドレスであってるのかな?

 

 

日本を出た時、

スマホを変えた。

番号もアドレスも新しくした。

 

 

でも・・・

翔くんの連絡先は消せなかった。

 

 

おいらと同じように、

翔くんもスマホを変えたかも。

 

 

変えてたら翔くんもアドレス変わってるよな。

 

 

スマホを片手にウロウロしてると、

バシッと背中を叩かれた。

 

 

「いっ!誰!!」

 

 

「俺」

 

 

「・・・何だ岡田か!今忙しいんだ」

 

 

「おいおい、人を暇人扱いすんな。

俺だって色々忙しいわ!

お前は久々に会った同期になんて態度なんだ」

 

 

ああ・・・確かに。

あ、そうだ、大切なこと言い忘れてた。

 

 

「えっと、岡田・・・

遅くなったけど、結婚おめでと。

奥さん、可愛い人だね」

 

 

「だろう?でもああ見えて、怒るとめっちゃ怖いんだぞ」

 

 

「お前が悪さするからだろ?」

 

 

「わ、悪さなんてしないわ!!

お、恐ろしい・・・」

 

 

一体何があったんだ・・・

 

 

「そうだ、大野、連絡先教えて。

お前、スマホ変えただろ!

だから結婚式の招待状も送れなかったんだぞ!!」

 

 

「え?ああ、そうか・・・」

 

 

「そうだよ!普通さ、変えたら変えましたって連絡よこすだろ?

お前はそう言うとこがさ・・・」

 

 

「わ、わかった!

交換!交換するから!!おいらのこれ!」

 

 

いつもの岡田のお小言が始まりかけたから、

慌てて遮る。一回始まると長いんだよな。

 

 

「お!ありがと。

後でメールする。夜、飯に行こうぜ。」

 

 

「ばか!新婚旅行で来てるんだろ?

大事な新婚旅行の邪魔なんてできんわ!」

 

 

「ああ、そうか。そうだな。

お前が日本に戻ってきた時は連絡くれよ。

その時飯行こうぜ」

 

 

「おう!じゃあな、岡田。幸せにな」

 

 

「お前もな!早く告白しろよ」

 

 

「え?」

 

 

ひらひら手を振って、

岡田が去っていった。

 

 

それから少しして、

岡田からメールが来た。

 

 

『迷惑メールです。

連絡するかしないかはお前次第。

 

櫻井の今のアドレスは

**************』

 

 

え?

 

 

『バーカ。

気がついてないと思ってた?

同期をナメんなよ♪

グットラック!!』