『場所変えようか?』

 

 

そう言った智くんと一緒に店を出る。

 

 

前を歩く智くんについて、

飲み屋の近くの大きな公園に入った。

 

 

会いたかった智くんが隣にいる。

手を伸ばせば届く距離に。

 

 

落ち着け、俺!

いきなり好き!はまずいか。

 

 

「・・・翔くん、でっかくなったね」

 

 

「で、でっかく?

太ったってこと?

智くんと一緒にいた時と同じサイズなんだけど」

 

 

「んふふ」

 

 

ああ、変わらない笑顔。

気を張ってないと、

顔がデレそう。

 

 

「んふふじゃないよ!

言いたいことがいっぱいある!!」

 

 

あの時のあの言葉は何だったの?

なんで何も言わずいなくなったの?

そのあとずっと音信不通だったのに、

なんで今、メッセージをくれたの?

 

 

色々あるけど・・・

 

 

「まず言いたいのは・・・」

 

 

「ん?なあに?」

 

 

うわ、やばい。

やっぱり可愛い、智くんのこのふにゃんとした笑顔。

抱きしめたい衝動をぐっと抑え込む。

 

 

まずはちゃんと話をしなくちゃ。

告白はそれから。

 

 

「俺の誕生日は6月21日じゃないよ!」

 

 

「ん?そこ?そこなんだ。

1月25日でしょ?翔くんの誕生日を忘れるわけないじゃん」

 

 

なんだやっぱり知ってたんだ。

でもじゃあ・・・

 

 

「なんで?」

 

 

「さあ、なんでかな?

賭け・・・かな?」

 

 

「賭け?」

 

 

「おいらさ、翔くんに会えたら、

言いたいことがあったんだよね」

 

 

「へ?」

 

 

「忘れ物とりにきた」

 

 

「忘れ物?」

 

 

「うん。おいらの忘れ物は翔くん」

 

 

へ?

智くんの忘れ物が・・・俺?

 

 

「おいら、やっぱり翔くんがいないとダメだわ。

1人になってやっと分かった。

だからおいらと一緒にNY行こう」

 

 

「は?!・・・え?」

 

 

え?

俺今寝てる?

 

 

智くんが一緒に行こうって言ったよね?

俺今、都合のいい夢を見てるの?

 

 

「大丈夫。上にはもう掛け合ってあるから。

あとは翔くんの返事次第で、事が進むようになってる」

 

 

「え?え?

上に掛け合って?何言ってんの?」

 

 

「翔くんが好きだって言ってるんだけど?」

 

 

「・・・え?」

 

 

やっぱりこれは甘い夢?

この展開は想定外だ。

 

 

「おいらは翔くんが好きだ。・・・返事は?翔くん」

 

 

・・・なにそれ。

 

 

勝手にいなくなって、

勝手に現れて、

勝手に好きだと言ってきて、

返事を催促・・・

 

 

なんてわがままなんだ。

 

 

でも・・・

 

 

わがままな貴方は、

似合わないよ 俺にしか。

 

 

もっと見せてよ。

本当の貴方を。

 

 

「・・・いく。

智くんと一緒に行く」

 

 

「ねえ、翔くん、おいらのこと好き?」

 

 

「好きだよ!!

どうしようもなく!!」

 

 

智くんを抱き寄せ、

唇を奪った。