『もう、智くん!

ダメじゃん!こんなとこで寝ちゃ!!』

 

 

『・・・ん?しょおく・・・ん?』

 

 

『「・・・ん?しょおく・・・ん?」じゃないよ!!

危ないでしょ?こんなとこで!!

無防備すぎる!!何かあったらどうするの?』

 

 

『ふぇ?何かって・・・』

 

 

『この前の俺みたいに、

寝てる智くんに・・・』

 

 

『この前の・・・俺みたいに?』

 

 

『え?あっ!、ちがっ!!』

 

 

『ん?翔くん、おいらが寝てる時何かしたの?

まさか、顔に落書き??

額に肉とか書いた?』

 

 

『書いてないし!!』

 

 

『なんだ、よかった〜。

おいら、それに気がつかず1日過ごしたのかと思ったよ』

 

 

『安心するとこが違う!!

こんなとこで寝てたら、風邪引くし!!

そ、そんな小学生のすることじゃなくて、

もっとすごいことされちゃうんだよ!!

分かってるの?!』

 

 

『こんなとこって、

学校の中庭だよ?もっとすごいことってなに?

・・・翔くん、何したの?』

 

 

『そ!そんなことより!!

ちゃんと覚えてる?俺との約束!!』

 

 

『・・・約束?』

 

 

『え?忘れたの?』

 

 

『嘘嘘、ちゃんと覚えてるよ。

あさっての卒業式の後、ここで会う約束でしょ?』

 

 

『そう!それ!!』

 

 

『でも、なんで卒業式の後?』

 

 

『ちょっと話したいことがあって・・・』

 

 

『話?今はダメなの?

おいらもね、話したいことがあるんだけど・・・』

 

 

「今は無理!!まだ心の準備が・・・

と、とにかく!!明後日ちゃんと話すから。

智くんの話もその時聞くよ。

絶対忘れないでね、絶対だからね!!

指切り!!』

 

 

『んふふ、すんの?

はいはい。絶対ね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・んっ、あ、あれ?夢?」

 

 

しまった!

おいらマジで寝ちゃったんだ。

 

 

・・・そういえば、

あんな約束してたっけな。

 

 

結局おいら、

卒業式に高熱出して休んじゃって、

卒業式には出れなかった。

 

 

その後、

父ちゃんの急な転勤で、

実家が引っ越し。

 

 

おいらは、春から通う学校に寮があったから、

急遽そこに入ることになって・・・

 

 

翔くんとは、その日以来、

会えずに終わった。

 

 

実は落ち着いてから、

翔くんに会いに高校に行ったんだ。

 

 

約束守れなくてごめんね。

話ってなんだったの?

おいらも翔くんに話があったんだ。

 

 

そう話をするために。

 

 

運良く下校してく翔くんを見つけた。

けど、声をかけられなかった。

 

 

だってその時翔くんは、

 

 

・・・女の子と一緒だったから。

 

 

二人仲良く、

寄り添っていたから。

 

 

おいらは気持ちを伝えることができないまま、

失恋した。

 

 

だからこそ余計、

・・・想いが残ってしまったのかも。

 

 

消化されないままの、

翔くんへの想い。

 

 

「・・・翔くんは、あの日、中庭にいったのかな?」

 

 

「行ったよ。

ずっと待ってたよ、智くんのことを。

まさか風邪で休んでるだなんて知らなかったから、

嫌われたんだと思ってた」

 

 

「え?」

 

 

あれ?

え?この声って・・・

まさか!!

 

 

「・・・ぐっすり寝てたね。

こんなとこで寝ちゃダメだって、

前に言わなかったっけ?」

 

 

え?ええ!!!

いつから?

 

 

おいらの横に翔くんがいる。

あの頃と同じ笑顔。

いや、あの頃より・・・

 

 

おいらまだ夢見てる?

いやでも、この翔くんは学ランじゃない。

 

 

おいらの上には、

翔くんのものらしいジャケットが掛けられている。

 

 

「翔くん?!

なんでいるの?」

 

 

「智くんこそ。

なんでこんなとこで寝てるの?」