「・・・怒ってるの?」


怒ってるかと聞かれたら・・・


「怒ってるよ」


「え?なんで?おいら何かした?」


助手席に乗って、
ちらちら俺のことを見ながら、
智くんが心配そうにしてる。


何かした?


したって言えばしたし、
してないって言えばしてない。


本当にさ、貴方って・・・


あの店員、絶対貴方に気がある。
本当にさ、老若男女、動物でさえも・・・


貴方は意識なく、
簡単に堕としてくんだ。


これ智くん本人が意識したらどうなる?
そ、そんなのさせるか!!


「・・・でも、
無意識はもっとこわいな」


「え?」


信号が赤になる。


そのタイミングで、
貴方の顎を掴んで、
唇を奪う。


「ちょ・・・こんな街中で・・・」


「だめ?だめなの?
俺はしたかったからした。
智くんは俺とキスしたくない?」


「ダメじゃないけど・・・
人に見られたら・・・」


「見られたら見られた時。
ねえ、もっとキスしていい?」


「え?あ・・・翔くん、信号青」


「・・・・・」


智くんから離れた俺に、
智くんがホッとした顔をした。


なんか面白くない。
これじゃ俺だけ智くんのことが好きみたいじゃん。


「・・・ねえ、智くん」


「ん?」


「俺のこと好き?」


「え?」


「好き?」


「・・・そんなこと言わなくても」


わかってるよ。
ちゃんと貴方の俺への気持ちはちゃんと知ってる。
けど・・・


「智くんの口から聞きたいの。
ねえ、俺のこと好き?」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・すき」


「・・・だめだ、やっぱりキスしたい」


「え?」


目的地近くのコインパーキングに車を止め、
智くんの唇にかぶりつく。


「ちょ・・・んっだめ・・・」


「・・・すきだよ、智くん」


「・・・もう・・ずるい、そんなこと言われたら」


「言われたら?」


「・・・翔くんの意地悪!もうしらない」


「ふふ、これ以上したら、
智くんが我慢できなくなっちゃうね。
早く買い物行って家帰ろうね」


「・・・ばかっ!我慢できなくなってんのは翔くんのほうでしょ」


「否定はしませんけど。
智くん顔直して。その顔みんなに見せちゃうの?」


「え?かお?」


「うん。色気だだ漏れ。
早く食べてって顔になってるよ」


「ば!翔くんのせいだろ!!
急にキスなんてするから」


「ふふ、その気になったのは智くんじゃんか」


「翔くん!!」


「あ、そうだ、忘れてた」


「え?・・・んあっ!」


智くんの首筋をきつく吸う。
智くんが慌てて俺の体を押しのける


「ちょ!あとがついちゃう」


「つけたんだよ。
悪い虫がつかないように、虫除け」


「もう、何言ってんの!
ああ、こんな目立つとこに・・・」


鏡で自分の首筋を見て、
プリプリ怒ってる智くん。


怒ってる貴方も好き。
このまま家に帰ってもいいんだけど、


今日は貴方のバースデー。
この店だけは外せないからさ。


この贈り物は一生ものだから。
貴方と一緒に選びたい。


虫除け必要でしょ?
俺のもんだって誰が見てもわかるように。