「・・・説明ったって、見ての通りだけど?」


見ての通り・・・


松岡くんに抱っこされて、
智くんが寝てる。


いや、俺が聞きたいのは、そこじゃなくて!
なんで寝ちゃうまで飲ませたのかってことなんだけど。


・・・・・
・・・・・


ああ、気持ちよさそうに寝ちゃってさ。
きっと飲みすぎちゃったんだよね。


松岡くんと久々の飲みだろうし。
いつも以上にテンション上がって。


んで、いつもの通り、
寝ちゃったパターン?


俺とはあまりないけど、
智くんって酔うとすぐ寝ちゃうって聞いたことある。


・・・それにしたって、
なんで、抱っこ?


しかもなんでそんなしたり顔してるんっすか!
松岡くん。


「・・・・・。
とりあえず、うちの大野返してもらえますか?」


「・・・うちの大野?」


「はい、うちの大事なリーダーですから」


「俺の大野って顔してるけど?」


「・・・否定はしませんけど」


「ははは!素直でよろしい!
返すのは構わねーけど、ちょっとお前に話がある。
時間あるだろ?マスター!」


松岡くんがマスターに合図する。
智くんを抱きかかえたまま、
カウンター席から、ボックス席へ。


あの・・・智くん返して欲しいんですけど。


そう口にできないまま、
俺は渋々付いていく。


「・・・座れよ」


「・・・はい」


言われるまま、松岡くんの視線の先の席に座る。


「あ、お前何飲む?」


「あ、じゃあ、松岡くんと同じものを」


「ん、マスター!2つ作って」


少し広めのソファーに智くんを寝かせる松岡くん。
そして、俺の方に向き直る。


程なくして、
グラスを持ったマスターがやってきた。


乾杯して、
口をつける。
しばらく沈黙が続いた後、
松岡くんが鋭い瞳で俺を見た。


「・・・お前こいつのこと本気か?
もしそうじゃないなら・・・」


「・・・本気です!!」


本気に決まってる。
もうずっと前から、
俺は智くんに本気なんだから。


「ふふ、それにしては・・・
結構こいつのこと振り回したみたいだな」


振り回した・・・
確かにそうだな。
今の関係になるまで、かなり遠回りした。


「・・・聞いたんですか?」


「まあ、少しな」


「・・・・・」


松岡くんが智くんに視線を移す。
ふっと優しい顔になって、
すぐ、いつもの顔に戻る。


「こいつは結構めんどくさいぞ。
ちゃんと言葉にしてやらないと。
本気ならなおさら、
ちゃんと話も聞いてやれよ」


「え?」


言葉に?
それってどういうこと?
話って?


「ふふ、抱きしめるだけじゃダメだってこと!!」


「え!?」


松岡くんがニヤニヤ笑う。


「毎晩、上書きしてるんだって?」


「・・・っ!!」


な!!


ちょっと、智くん!
貴方一体何話したの??
どこまで話した?!