収録が終わり、
それぞれ楽屋に帰る。


智くんは帰ってくるなり、
帰り支度をしないで、
スマホをいじっていた。


誰かにメールしてる?
一体誰だろ?


そっと移動して、
智くんのスマホ画面を覗き込もうとした
その時、
予想通りの人物が楽屋にやってきた。


「お〜い、大野、
この後暇だろ?飲みに行くぞ!
先輩命令だ!」


「は?何言ってんの?岡田っち。
おいら忙しい!
それにおいらのが先輩だからね」


「いやいや、
それについてはもう決着ついてるでしょ?
俺は先輩、お前は後輩!」


岡田くんが智くんの肩を抱いた。
智くんは嫌がることなく、
それを受け入れる。


「・・・むぅ」


あ、口を尖らせた。
ダメじゃんか。
その顔は俺だけが見ていい顔なのに。


岡田くんが智くんの顔を覗き込む。
ちょ!顔近くない??


「そんな顔してもダメ!お前は後輩!
よって後輩のお前に拒否権はない」


「は?バカ言うな」


・・・何だこれ。
本人たちは言い合いしてるつもりだろうけど、
はたから見たらただのバカップルのじゃれあいじゃん。


って!
誰がバカップルだ!
智くんとカップルなのは俺だ!


何だよ智くん。
俺が目の前にいるのに、
俺のこと無視して、岡田くんといちゃついてさ。


そっちがその気ならば!!
今こそ作戦決行の時!!


「ねえ、岡田くん!
相談したいことあるんだ。
智くんじゃなくて、俺と飲みに行きませんか?」


「え?」「ん?」


岡田くんと智くんが同時に振り向いた。





・・・・・
・・・・・


え?


今、翔くん何て言った?
岡田と飲みに行くだって?
相談したいことがあるから?


・・・相談ごと?


おいらじゃダメなの?
おいらじゃ翔くんの役に立てないの?


「・・・・・」


「どうした櫻井。
収録とはいえ、この前結構深い話もしたじゃん?」


「そう、この前の続き。
もう少し、岡田くんと話がしたいなって。
・・・ぶっさん、ダメ?」


な!何その顔!!
そんな顔、おいらにしてくれたことないじゃん!


何で岡田に・・・


「バンビ!!」


名前を呼ぶが早いかおいらの肩を抱いていた岡田が、
翔くんに抱きついた。


翔くんは嬉しそうに、
岡田の背中に手を回す。


ふ〜ん。
そういうこと?


そうなんだ。
やっぱり翔くんはおいらより、
岡田の方が・・・


いいよ、別に。
そっちがその気ならば!!


ちょうどその時、
メールした相手から返信が来た。


『大ちゃん!
めっちゃいいタイミング。
こっちも仕事終わったとこ♡
ご飯行きます!!今日はどこにします?
迎えに行きますから、連絡ください』


ふふ、のんちゃん、
本当に返信早いな。


「バーンビ♡」「ぶっさん♡」
まだ抱き合ってる2人を無視して、
服を着替える。


それに気がついた翔くんが、
おいらに話しかけてきた。


「ええ・・っと、
智くんがどうしてもっていうなら、
一緒に来てもいいよ?
いいよね?ぶっさん」


「おお!大野も来るだろ?」


「や!いいわ。
おいら予定入った。
お二人でごゆっくり〜」


「・・・は?
予定って?誰と?」


翔くんの顔つきが変わった。


けど、もう知らない。


翔くんは岡田がいいんだろ?
おいらはおいらで楽しむもん!


「ん?のんちゃん♡
ここに迎えに来てくれるって!
持つべきものは若くて可愛い後輩だよね♪
んじゃ、お先〜」


「ちょ!智くん!!!!!!」