『・・・昨日はあんなに可愛かったのに。
もしかして、本当に覚えてないの?
智くんが誘ってきたのにな〜』


翔くんのあの言葉は頭から離れない。


おいらが誘った?
翔くんを?


確かに飲もうって言ったのはおいらだよ。
他にも何か言った?
・・・まさか、そんな。


・・・・・
・・・・・


何も思い出せない。


あの夜・・・
本当においらが?
おいらが誘って、翔くんと?


・・・翔くんと


頭の中に浮かんできたことを打ち消すように、
ぶんぶん首を振る。


そんなわけ・・・ないでしょ。
だっておいらたち男同士、
男同士でどうやってするの?


でも・・・キスはした。


翔くんのキスは・・・
あのぷっくりとした翔くんの唇の感触は・・・


だから違うって!
すごく気持ち良かっただなんてそんな・・・


ああもう!
一体翔くんどういうつもりだ。
さっきの、上書きってなんだよ。


これ、ちゃんと消えるよね。
翔くんがつけたしるしにそっと触れる。


「・・・そんなに痛いんですか?そこ」


「へ?」


「さっきからあなたの顔面忙しいですね。
青くなったり、真っ赤になったり、
にやけたり、怒ったり」


「え?」


ゲームに夢中になってると思ってたニノに、
見られてたなんて。


はずかし・・・
おいらそんな顔に出てた?


「・・・それ、本当に寝違え?」


「そ、そうだけど!!」


「怪しいな〜、その湿布で何か隠してるんじゃないの?」


「は?なに言ってんだ!!
何かってなんだよ!」


「ふふ、おっきな声ですね。
仕事でもそれぐらいのボリューム出してくださいよ」


「う、うっさい!!」


「・・・寝違いの原因は翔さんだったよね」


「そ、そうだよ!
翔くんが酔ってベット占領したから。
おいらソファーで寝て・・・」


「・・・いつもソファーで寝てるのに?」


「さ、最近はちゃんとベットで寝てるの!」


「・・・ふ〜ん」


「なんだよ!」


「・・・別に?
ただ翔さんとなんかあったのかな?って思って」


「な、なにかって?」


「例えば、翔さんに何か言われたとか、
翔さんに何か・・・された、とかね?」


ドキっ!


「ずっと翔さんのこと気にしてるし」


「気にしてない!翔くんなんて!!」


「・・・あ、翔さんが」


「え?」


ニノの言葉と視線に、
思わず振り返る。
けど、そこに翔くんはいない。


・・・やられた。


もう一度振り返ってニノを見る。


「誰が気にしてないって?」


ニヤッとニノが笑った。


これってバレてる?
ニノはそれ以上何も聞いてこなかった。
それが、すごく怖い。


きっと何かあったのバレてるんだろうな。
もう、翔くんがあんなことするから。
翔くんのせいだ!


翔くんの・・・


・・・おいら、
翔くんと何もしてないよね?


したのか?
おいら。


ああ、もうわっかんねー。
誰に聞けばいいの?


視線を感じた。
ニノがニヤニヤしながらおいらを見てる。


これだけは分かる。
絶対ニノに話しちゃダメだ。