「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


くくくっ、
すごく怪しいんだけど?
あれじゃ、あそこに何かあるって言ってるようなものじゃんか。


作戦成功かな?
智くんがずっと俺のことをチラチラ見てる。
首元抑えながら。


さっき言ったことは本当だよ。
貴方が誘ってきたんだからね。


貴方が悪いんだよ。
俺をその気にしたから。


ことの始まりは貴方の一声。






゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚





『翔くん、今夜暇?
久々に一緒に飲まない?』


地方でのコンサート1日目。
今、お食事会という名の反省会が終わったところ。


他のみんなは、スタッフや、
同行してくれているJr.たちと、
すでに楽しげに飲んでいた。


最近ちょっと飲みすぎだし、
みんなに挨拶だけして、
明日に備えて部屋に戻ろうとしたら、
智くんに呼び止められた。


『久々に一緒に飲まない?』


智くんは嬉しそうに、
手でジャッキを作って飲む真似をする。


・・・・・


分かってるの?
そんなに無邪気に誘ってきてさ、
俺が今、何考えてるか、
分かってる?


『・・・いいけど、明日もコンサートだよ?
それに、今から飲みに行くって言っても、
店開いてるかな?』


できるだけ平然を装って、
スマホをタップして、
ホテル周辺の居酒屋を検索する。


『え?出なくていいじゃん。
頼めばお酒持ってきてくれるし、
おいらの部屋で飲もうよ』


『・・・・・』


『・・・翔くん?
もしかして、やだ?
部屋飲みがやだっていうなら、外でもいいよ』


・・・嫌なわけないでしょ?
本当に分かってる?
そんな可愛く首かしげて俺のこと覗き込むなよ。


『智くんの部屋でいいよ。
俺、シャワー浴びたいから、
浴びてから智くんの部屋に行くね』


『うん!
おいらも翔くんが来るまでに浴びとく。
お酒適当に頼んどくね』


『うん、任せる。じゃ、あとで』


身支度を整え、
智くんの部屋のチャイムを鳴らす。


『は〜〜い!』


中から智くんの声。
そして、ドアを開けた智くんは、
俺のことを笑顔で迎えてくれた。


シャンプーの香りと、
かすかにビールの香り?


『もしかして、もう始めてた?』


『ん?けど、一口だけだよ』


部屋の中に案内される。
テーブルには空の缶ビールが一本おいてある。


『・・・一口ね〜。
まあいいや。まずは乾杯しよ』


『ん!翔くんのグラスこれね』


智くんにグラスを渡され、
ビールを注いでもらった。


『じゃあ、乾杯!
今日はお疲れ様でした〜!』


智くんの音頭で、
互いのグラスを合わせる。


こうやって智くんと二人っきりになるのはいつぶりだろう。
最近は俺・・・


『んふふ、よかった〜。
おいらね、翔くんに嫌われちゃったのかと思ってたんだ〜』


『・・・え?』


『だってさ、翔くん、
仕事以外でおいらと話すこと減ったでしょ?
なんとなく避けられてるのかなって?
だから、今日は思い切って誘ってみたんだ』


『・・・・・』


・・・確かに。
最近俺、智くんと距離を取っていた。
だってそうしないと、気づかれてしまうから。


・・・貴方への想いを


『んふふ、やっぱり翔くんと一緒だと落ち着くな〜
嬉しくて、お酒進んじゃう』


『え?ちょっと、もっとゆっくり飲まないと』


『んふふ、平気♡
酔いつぶれても翔くんは介抱してくれるもん』


安心しきった智くんは、
いつもより早いペースでビールを口に運んでいった。


安心なんてしないで。
俺に隙を見せちゃダメだよ。


『くふふ。たのしいね〜、
おいらね、みんなといるのたのしいんだ〜』


『・・・俺といるのは?
俺と二人でいても楽しい?』


「え〜?たのしいにきまってるじゃん。
しょおくんはね、ちょっととくべつかな?おいらにとって』


『・・・え?』


特別っていった?
智くんにとって俺は・・・特別?
それってどういう意味・・・で?


『・・・・・』


無言のまま、
ソファーにもたれる智くん。


『・・・zzz』


え?
ね、寝息?
も、もしかして寝た?


『ちょ・・・智くん?
こんなことで寝たら風邪ひくよ!』


智くんの身体を揺さぶる。
気がついて、うっすら目を開ける智くん。


『・・・つれてって』


『え?どこに?
どこに連れてけって?』


『・・・ベット・・・つれていって・・・』





誘ったのは貴方だよ