「ごめん!智!
遅くなった。寝てる?
ご飯どうした?」


玄関のドアを開けると、
うまそうな匂いがした。


・・・あれ?
いい匂いがする。


「あ、翔、おかえりなさい。
ご飯出来てるよ~」


智がぱたぱた走ってきて、
出迎えてくれた。


「ただいま。
寝てなくて、もう大丈夫なの?」


「んふふ、大丈夫だよ。
朝も言ったけど、もう熱ないもん」


「・・・本当に?」


俺はカバンを床に置き、
智の頬を両手でつかんで、おでこを合わせる。


「・・・熱ないね。よかった」


「でしょ?んふふ」


「おっと、忘れるとこだった。
ただいまのちゅ♡」


俺はそのまま智にチューをした。
智が恥ずかしそうに離れる。


「んっ!・・・もう、翔ったら」


「なんで逃げんの?」


「逃げてないよ」


「んじゃ、もう一回」


「え?ちょ・・・しょ・・・んんっ!」


智の腰を抱き、
さっきより長めに唇を重ねた。


ゆっくり唇を離す。
智は恥ずかしかって下を向いた。


「・・・着替えてるけど、
どっか行ってきたの?」


「ふ・・・ぇ?
ああ、そうだ!翔に渡さなきゃいけないものがある!」


「え?」


智が俺から離れ、またぱたぱた走って、
リビングに行った。


床に置いたカバンをとって、
智の後を追う。


リビングに入ると、
智が俺の方ににぎった手を出す。


「ん!」


「ん?何?え?お金?」


慌てて手は出すと、
手のひらにお金を置かれた。


「そう!翔昨日店で買い物したでしょ?
その時にお釣り忘れて帰ったって。
今日相葉ちゃんから預かったの」


「え?マジで!
俺おつりもらい忘れてた?
めっちゃ恥ずかしい・・・」


「そう、だから、相葉ちゃん、余計に気になって、
おいらに電話してきたんだって」


・・・ああ、昨日の電話。
本当すげーいいタイミングでかかってきたんだよね。


「もう翔ったら、慌てすぎたよ。
おいらもういい歳したおっさんなんだからね。
熱出たぐらいで大騒ぎし過ぎ」


ぷくっと頬を膨らませ、
口をとがらす智。


・・・いい歳したおっさんって。
こんな可愛いおっさん見たことないぞ!


おっさんが口尖らせて拗ねたりする?
しないでしょ!
もう!本当に可愛すぎるんだって!


俺はたまらず智をぎゅっと抱き締める。


「え?翔?何?どうしたの?」


「俺の可愛いおっさんを抱きしめてんの♡」


「・・・今の話聞いてたか?
いい歳したおっさんが可愛いはずないだろ。
もうばか!ご飯食べるよ!」


「ああ、そうだね。
めっちゃいいにおいしてるけど、
今日のご飯は何?」


「ん?今夜はね、味噌煮込みうどん。
すぐ準備するね。翔は着替えてきて」


智が俺のほっぺにチュッとキスして、
にっこり微笑む。


・・・だから、
こんな可愛いおっさん見たことないぞ!
本当に智ってさ・・・


「・・・しょお?」


「ん、分かった」


智に言われた通り、
着替えて手洗ううがいをして、
ダイニングテーブルに座る。


すると智が土鍋を運んでくる。
鍋のふたを開けると、
味噌のいい香りがして、
腹がなった。


「うわ・・・うまそ!」


「んふふ、いっぱい食べてね」


「うん。いただきます!」


「あ、ねえ、翔はおいらの風邪うつってない?
身体大丈夫?」


「ん?全然平気。
智とは鍛え方が違うからね」


「そう・・・よかった。
移してたらどうしようかと思った」


「いつでもぶっとい注射できるよ。
どう?今から打っとく?」


「ぶっ・・!!
翔のバカ!!黙って食え!」