昨日は自分の家に帰って、
絵を描きながら、
翔くんになんて伝えようか考えてた。


『言わなきゃだめなんです。自分の気持ちを素直に。
大切な人には・・・』


ニノに言われた言葉。
本当にその通りだ。
おいらも伝えなきゃ、おいらの気持ちを翔くんに・・・


しばらくすると、
仕事から帰ってきた翔くんが、
家にいないおいらを心配して、
電話をかけてきてくれた。


『俺もそっちにいっていい?』


「しょおくんはきちゃだめ!」


咄嗟にそう言っちゃった。
だってまだなんて言おうか決まってない。


ちゃんと考えて、
ちゃんと整理してから、
翔くんに言いたいと思ってたから。


おいらだって翔くんに逢いたい。
逢ってぎゅっと抱きしめて欲しい。
けど、おいらの中にあるこの黒いぐるぐるを持ったままじゃ・・・


翔くんの電話を切って、
また絵を描き始める。


んふふ、
なんでだろ。
おいら翔くん描いてるじゃん。


これが描けたら、
ちゃんと話せそう。


うん、そうだ。
これを翔くんにプレゼントして、
翔くんにおいらの気持ちを伝えよう。


描いたのは仕事中の翔くんの横顔。
翔くんはいつもおいらの横にいて、
キリッとしてて、時にはふざけて、
番組を進行してる。


本当に頼もしい。
で、おいらの言葉が足りない時とか、
すぐにフォローしてくれる。


仕事でも、プライベートでも、
いつも翔くんはおいらを優しく包んでくれるんだ。


・・・・・


・・・やばいな。
翔くんに会いたくなってきた。
おいらがだめって断ったのに・・・


・・・・・


そうだ、もし、
翔くんがもう一度電話してくれたら・・・
おいらから逢いに行こう。


そんなことを思いながら、
筆を走らせていく。


・・・・・
・・・・・
結局翔くんから電話もメールもこなかった。


変なの。自分で逢わないって言ったのに、
もう一度連絡をくれなかったことにショックを受けるなんて・・・
自分勝手すぎる。


一晩中描いてたから、
絵は仕上がった。


けど、なんでかな?
おいら、翔くんに、
どんな顔して会えばいいかわかんなくなっちゃった。


逢いたいって思ってるのは、
おいらだけなのかな?


そんな気持ちのまま、
マネージャーのお迎えまで仮眠して、
仕事場へ行く。


あっ、おいらが駐車場について、
車を降りた時、
ちょうど翔くんがマネージャーと一緒に、
建物に入っていくところだった。


いつもなら追いかけて一緒に楽屋に入る。
けど、なんか今日は・・・


「・・・?大野さん、どうかされました?」


マネージャーに声をかけられ、
我に帰る。


「あ・・・おいら、のど渇いちゃった。
自販に寄ってから楽屋行くから」


マネージャーと別れ、
自販機横のソファーに座る。


・・・・・
おいらどうしちゃったんだろ。
翔くんがいたのに・・・


こんなんで、
おいらの気持ちちゃんと翔くんに伝えられる?


・・・・・


「・・・何してんの?」


「え?」


「なんかあった?
最近なんかおかしいよね?あんた。
何このクマ・・・」


声の主は松潤だった。
松潤はおいらの横に腰掛け、
おいらの顎を掴み、
顔を覗き込んできた。


・・・うっわっ、綺麗な顔・・・
じゃなくて!


「ちょ、松潤離して。
昨日はずっと絵を描いてて、
だから・・・」


「・・・ふーん」


「松潤こそなんかあったの?
楽屋行かないの?」


「・・・のどが渇いたんだよ。
あんたも飲む?お!ココアあるじゃん!
あんたこれよく飲んでるよね。」


そう言うと、ココアを2本買って、
おいらの前に1本差し出す。


「早く取って、あっちー」


「あ、うん。ありがと」


「・・・ん。
それ飲んだら行くよ」


「・・・うん」


「あ!ココア代もらわなくちゃ」


「え?あ、そうだね」


おいらが財布を出したら、
首を振る松潤。
お金を受け取る代わりに、
おいらの肩を抱いてきた。


「・・・え?」


「さて、もう飲んだだろ?
楽屋行くよ」


松潤はおいらの肩を抱いたまま、
楽しげに歩き出した。


そのままの状態で楽屋に入る。
おいら達を見て、
翔くんが驚きの表情をした。


けど、何か言ってくるわけでもなく・・・


いつもだったら「俺の智くんに触るな!」って言って
おいら達を引き離すのに・・・


なんで何も言ってくれないの?
ニノと相葉ちゃんと松潤と話してても、
翔くんは入ってこない。


・・・もしかして、
おいらの昨日の態度に怒ってるの?


松潤がおいらから離れ、
翔くんのそばに行った。


何を話してるんだろう?
翔くんがすごい怖い顔して、
松潤を見て、おいらのこと見てる。


やっぱり何か怒ってる?
怖くて翔くんのことが見れない。


一瞬、
翔くんと目があった。


「おいら!トイレ!
おっきい方もれちゃう!」


とっさに口から出た嘘はこれ。
でもいいや。
これ以上翔くんの視線に耐えられない。


おいらは慌てて楽屋を出た。