「・・・うくん、
ねえ、翔くん、起きて、ねえ・・・」


「・・・ん?・・・さとしく・・・ん」


智くんに声をかけられ、
目を覚ました。


どうやら智くんの手を握ったまま、
寝てしまったらしい。


「なんでこんなとこで寝てるの?
おいらなんかしたのかな?
手もつないだままだし・・・」


「あっ、ごめん」


つないだままの手を離すと、
智くんが起き上がり抱きついてきた。


「・・・ほら、こんなに冷えてる。
こっちきて、おいらが暖めてあげる」


智くんに引っ張られ、
ベットに横になった。


「・・・智くん、あったけーな」


「んふふ、いつもと逆だね」


「・・・うん」


智くんのぬくもりにホッとした。
さっきの涙はなんだったんだろう。


「・・・あのさ、さっきさ、
怖い夢でもみてたの?」


「ん?夢?
んー、覚えてないや・・・
おいら寝言でも言ってた?」


・・・寝言?
だったのかな。
あんなはっきり、それにあの涙・・・


「・・・覚えてないならいいや。
ねえ、智くん、今幸せ?」


「んふふ、なんでそんなこと聞くの?
幸せだよ。今だって翔の腕の中にいるんだもん。
これ以上の幸せある?」


「・・・俺も幸せ。
もう怖いくらいだよ」


「ふふ、まだ早いから、
もうちょっと寝よ・・・」


「ん。そうだね・・・」


智くんを抱きしめたまま、
眠りについた。







゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


pipi pipi pipi pipi♪


ケータイのアラームが鳴る。
手を伸ばすと同時に着信音が鳴った。


「ん?・・・もしもし?」


『櫻井さん?もしかして今起きました?
もうお迎えの時間なんですけど!』


「・・・へ?え?今何時?
マジか!ごめん!すぐ準備する!
今日なんだっけ?」


『今日はお忍び旅行のロケです!
急がないと飛行機が・・・」


「うわ!まじか!
ちょっと待って!準備してすぐ出るから、
15分、いや、10分待って!」


「ん・・・しょおくん?」


電話を切ったと同時に、
智くんがムクっと起き上がった。


「ごめん!起こしちゃった?
ヤバイ俺!遅刻だ!
下にマネージャー迎えに来てるって!」


「ええ!
急がないと!今日はなんの仕事?」


「ん?お忍びだって」


「・・・え?」


「ん?智くんどうした?」


「・・・何でもない!
ほら翔くん急いで!お相手の女優さん待たせちゃ悪いよ」


「ん!分かってる!」


慌てて着替えて、
顔を洗いに行く。


「なんか食べる時間ある?」


「ん~多分ない。
ありがと。もういくわ !」


「・・・うん。気をつけて」


「ん。行ってきます!
あ!今日は早く終わる予定だから、
一緒にご飯食べに行こ。
メールする」


智くんを抱き寄せて、
チュッといってきますのキスをする。


「ん。分かった。
いってらっしゃい!ほら急いで!
マネージャーが困ってるよ」


「はい、いってくるね」


「・・・ん」


この時の智くんにちょっとした違和感を感じたけど、
時間に追われた俺は、
そのまま家を出てしまったんだ。


「・・・翔くん・・・」


玄関を出た時、
ふと、智くんに名前を呼ばれた気がした。


一瞬家に戻ろうとしたけど、
マネージャーからまた電話が入った。


俺は智くんより、
その電話を優先してしまった。


俺は・・・


智くんから出てる、
微かなサインに、
気付けなかった。