・・・・・


・・・・・


いつもと同じ楽屋。
けど、いつもと違う楽屋。


ねえ、あんたたち気がついてる?
だだ漏れなんですけど。
その甘い空気。


ほら、それに気づいたJが苦笑いしてるじゃん。
相葉さんは・・・ニタニタしてる。


私の横で寝たふりしてる大野さん。
薄目を開けてちらちら翔さんを見てて。


定位置で新聞を読んでるふりしてる翔さん。
新聞の隙間から甘ったるい顔して、
そんな大野さんを見つめてて。


何だそれ!
いったいいくつなのよ!
あんたたち。


コンコン


「失礼します。櫻井さん、相葉さん、松本さん、
先にメイクお願いします」


スタッフさんが呼びにきて、
3人が席を立つ。


最後に立った翔さんの口が、
「行ってくるね」って動いて、
大野さんが「うん」って頷いた。


・・・・・!
だから何だそれ?
♡が飛びまくっててうざいんですけど。


翔さんの出て行ったドアを見つめてる大野さん。


「・・・良かったですね。
翔さんと元に戻れて」


「え?」


「・・・気づかないと思ってんの?
あんな甘ったるい視線絡めあってるのに?
相葉さんとJも気がついてますよ」


「・・・あまったるい。
・・・マジか」


「マジですね」


「・・・あのさ、ニノ」


「分かってますよ。恋人のフリは終わりにします。
貴方に本当の恋人が出来たから」


「・・・にの」


出来たっていうか、
元々2人は別れてないし。
ただちょっと離れてただけ。


見てて痛いぐらいお互いを想いあってて、
想い続けてて・・・


私の入る隙間なんて最初からなかったんだ。
最初から分かってた。
あなたを好きだと自覚したあの時、
気がついていた。


あなたの目には翔さんしか映ってないって。
それでも、そばにいられればって。


そのころ、あなたは翔さんを諦めようとしてたよね。
ダンスを極めるために、
翔さんを忘れるために遠くに行く事を決めたあなた。


離れるのは寂しかったけど、
もしかしたら、私の事を見てくれるかも。
淡い期待を抱いていた。


けど、戻ってきたあなたの横には、
翔さんがいた。


すごく寂しかったけど、
あなたが幸せそうに笑っていたから。
私は気持ちに蓋をした。


そのあと同じグループになって、
どんだけ嬉しかったか、
あなた知らないでしょ?


仲間としてでも良い。
メンバーとしてあなたのそばにいられる事が嬉しかった。


幸せそうにしてたあなたの笑顔が曇りだした。
そう、ちょうど翔さんがキャスターに抜擢された頃。


楽屋で考え込んでるあなたを
良く見掛けるようになった。


そんなある日、
今まで「智くん」って呼んでいた翔さんが、
「大野さん」って呼んだ。


そのときのあなたの顔。
あんな悲しそうな顔初めて見た。


その日の仕事終わり、
あなたの様子がおかしくて、
翔さんと2人になったあなたを、
外で待っていた。


ぼそぼそと話し声が聞こえる。


・・・え?
今なんて言った?


聞こえてきた話は思ってもみないことで、
思わず乗り込もうとしたら、
泣きそうなあなたが楽屋からでてきた。


本当、バカだ。
まだ好きなのに、
そんな顔するなら、なんで鍵返したんだよ!


・・・でも、あなたの気持ちも分かる。
翔さんのためなんでしょ?
あなたがこんな事するのは、きっと翔さんのため・・・


いいよ。
私を利用しなよ。
私があなたを守ってあげる。


あなたの恋人のフリをする事にした。
あなたの心を守るため。


いいよ。
翔さんを忘れられなくても。
翔さんの事想っててもいい。


今だけ、ほんのちょっとだけ、
恋人気分味わわせて。


そのあとは急に忙しくなって、
あっという間にすぎていった。


本当バカだ。
あなたたち。


言えば良いのに、
素直に気持ちを伝えたらいいのに。
何年我慢する気なの。


本当思い知らされる。
あなたの中の翔さんの大きさに。


どうしたら、
翔さんと一緒にいたときみたいに笑ってくれるの?


あの前翔さんのキーケースの中に、
貴方の家の鍵を見つけた。


本当にバカだ。
逢いにいけばいいじゃん!
逢いにいけるじゃん!
私の持っていないその鍵で。


もういいよね。大野さん。
あなたも限界でしょ?
私ももう限界なんだよ。


だから、翔さんに教えてあげたんだ。
その鍵が使えること。


大野さんのために、
翔さんのために、
・・・自分のために。



「ねえ、大野さん、今、幸せ?」


「・・・え?うん、幸せだよ」


ああ、その顔。
その笑顔が見たかったんだ。
あなたが笑っていればいい。
それだけでいいんだ。


楽屋のドアが開いて、
3人が戻ってきた。


「次は2人の番だって」


相葉さんに言われ、大野さんが席を立つ。
また、翔さんと視線を絡ませてる。


・・・さてと、
そろそろ報酬もらっても良いかな。
そっと翔さんに近づき、小声で話しかけた。
大野さんはJと談笑中。


「ねえ、翔さん、今幸せ?」


「え?」


「あ!いいです!言わなくて!
そのだらしない顔がすべてを語ってますから。
では、これ、お願いします。
今までの報酬です」


「だらしないって・・・
え?ちょっと待て!何これ?
何この高額な領収書の束!」


「だから報酬です。
出来れば早い目でお願いします。
あ、口座振り込みも可ですので」


「ちょっと待て!報酬って・・・あ!」


翔さんが大野さんを見た。
ふふ意味が分かった?


「では、お願いしますね。
大野さん、メイクいこっか!」


わざとらしく大野さんの肩を、
抱いて楽屋を出た。


「ニノの鬼ー!」


翔さんの声がきこえてきた。


「ん?ニノ、何かしたの?」


「んふふ。さあ?」


いいでしょ?
それぐらいしてもらっても、


翔さんは私の欲しいもの、
手に入れたんだから・・・・








おしまい♡