智くんの隣にはニノがいる。
そんな光景にも慣れてきた。


ニノの隣で、
楽しそうに笑う貴方。


貴方は今、
幸せなんだよね。


貴方の隣にずっといたかった。
貴方の隣は俺のものだと思ってた。


こんなに貴方が好きなのに、
貴方は離れてしまった。


貴方が泣いたあの日
何もかも捨てたら、
今でもそばにいられたのかな?


でも・・・
もう叶わない。


俺は、今でも貴方が好きだよ。
今でも・・・愛してる。
二度とこんなふうに誰かを愛せない。
貴方以外誰も・・・


きっとずっと貴方を忘れられない。


こんなとき、
同じグループで良かったと思う。


だって、逢えるから。
貴方の望んだグループの一員として、
仕事仲間として。


大事な仲間・・・
それでもいい。


貴方のそばにいられるなら、
そばで貴方を支え、貴方と笑えあえれば。


あれから何度も季節が変わり、
若手から中堅に変わっていった。
グループとしても、個人としても
充実した毎日を送ってる。


グループとして10周年、15周年を迎えていた。
あたらしいこと、やりたいこと、
沢山出来た。


貴方と言えば、
2回目の個展を開こうとしてる。


一度だって凄いことなのに、
二回目だなんて。


貴方は何処までいくのか、
やっぱり貴方は凄い。
俺の目に狂いはなかった。

貴方のことを尊敬してるよ。
出逢ったあの頃と一緒。


俺にとって貴方はいつまでたっても特別なんだ。




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



「お疲れさま。また明日ね」


「お疲れ相葉くん」


「じゃ、俺も行くわ。お疲れさん」


「ん。松本もお疲れ」


収録が終わり、
みんなが楽屋を出て行く。


ニノと貴方が楽しそうに話してて、
貴方の方が先に出て行く。


「おいらもいくね。じゃ、ニノ、後でね。
翔くんもお疲れさま」


「うん。大野さん、おつかれさま」


いつもと変わらず猫背な背中を見送った。
さて、俺も帰るかな。


帰り支度をすませ、
ニノに声をかけて、
楽屋を出ようとしたら、ニノに呼び止められた。


「翔さん、これ落としましたよ。
・・・あれ?これって・・・」


ニノが俺が落としたキーケースを拾い上げ、
それを見て、動きを止める。


「・・・・・」


「あ、ありがと。
・・・?ニノ?」


「・・・この鍵って、大野さんの?」


「え?・・・あ!違うんだ。
大野さんからは引っ越すから、
捨ててって言われてたんだけど、
ずっと忘れてて、ごめん。
すぐ捨てるから、ニノ、だから・・・」


「ふふ、忘れてて?
そんな嘘、私に通用するとでも?」


「・・・・・」


「大野さんは引っ越すって言ったんですか?」


「・・・え?」


「ふふ。本当バカだな。
あの人も翔さん、あなたも・・・」


「え?・・・どういう意味?」


ニノが何のことを言ってるのか分からなくて、
ニノの次の言葉を待つ。


「この鍵、本当に使えないのかな?
大野さんは本当に引っ越したのかな?」


「は?なに言ってんの?だって、大野さんが・・・」


「ねえ、翔さん、翔さんはさ、
大野さんがあなたから離れた理由知ってる?」


「・・・理由って?
それは・・・俺より、ニノを選んだからじゃ・・・」


「ふふ。本当にそう思う?」


「え?」


「ねえ、翔さん。
大野さんがあなたから離れたときのこと、
もう一度思い出して」


「離れたとき・・・のこと?」


「あと、勘違いしてるみたいだから言っときますけど、
私は大野さんとそういう仲ではありませんよ。
契約しただけ。報酬もちゃんといただいてますし」


「・・・契約?報酬って?」


「んー、それは私からは言えません。
直接聞いて下さいよ。それ持ってるんだし」


さっき手渡されたキーケースを指差すニノ。


「え?・・・だって」


「翔さんが聞きたいならですけどね。
大野さんのこと、もうなんとも想ってないなら、
今言ったことは忘れて下さい」


「じゃ、私もいきますね。
おつかれさまでした。翔さん」


「・・・お疲れ」


ニノが手をひらひら振って、
楽屋を出て行った。


・・・え?


いったいどういうこと?
ニノと大野さんと付き合ってない・・・の?


契約って?報酬ってなんのこと?


大野さんは・・・


智くんは、
引っ越してない・・・の?