「・・・・・
なんでここにお前がいんの?」


「・・・そういう翔さんこそ、
ここに何の用です?」


「え?・・・翔くん、このお客さんと知り合い?」


智くんが俺とそいつの顔を、
キョロキョロ見ていた。


智くんが俺の名を呼ぶのを聞いて、
そいつがびっくりしてる。


「え?しょ、翔くん⁈」


そんなそいつを無視して、
智くんに話しかけた。


「・・・智くん、もしかして、
名刺渡してナンパしてきたのこいつなの?」


「・・・え?う、うん。あ、あの・・・」


「・・・ああ、こいつは俺の会社の後輩で、
松本潤って言うんだよ。
海外に行ってるはずだけど?」


「ふふ。一週間前に本社に戻ってきたんです。
会社で聞きませんでした?
ああ、俺のことなんて興味ないか・・・」


・・・そういえば、
なんか誰かが戻ってきたって噂になってたな。
松本だったのか・・・。


「この近くに引っ越してきたんです。
で、ここに買い物に来て、大野さんに恋に落ちたってワケ♡」


松本が智くんの手を取り、
手の甲にちゅっとキスをした。


「あっ・・・」


「コラ!何が恋に落ちたってワケ♡だ!
俺の智くんに気安く触んな!
ごめんね、智くん。こいつのことは無視していいよ」


松本の手を振り払い、
びっくりして真っ赤な顔してる、
智くんの手をぎゅっと握る。


「・・・驚いた。俺の智くん⁈
あの翔さんからそんな言葉を聞くとは・・。
今まで彼女に手を出しても無関心だったのに」


「・・・え?」


智くんが驚いて、俺の顔を見て固まってる。
・・・余計なことを!


「松本・・・お前!」


「はいはい、そこまで。
お客さま方、レジの前でのケンカは、
他のお客さまの迷惑ですので、
店の外でお願いします」


相葉くんが、俺と松本の間に割って入り、
俺に目配せした。


「え?・・・あ、相葉くん。ごめん。
ほら、外に出るぞ、来い、松本」


「えー、ま、仕方ないかな。
大野さん、お話の続きはまた後で」


「・・・いいから来いよ」


「あっ・、翔くん・・・」


「大丈夫だよ。智くん。
ふふ、外で待ってるね」


不安そうに俺を見る智くんに、
笑顔で手を振り、
松本と一緒に店の外に出た。



「・・・・・」


「・・・・・」


先に口を開いたのは松本だった。


「・・・お久ぶりですね、翔さん。
5年ぶり?噂には聞いてましたけど、
最近随分変わったんですってね。
さっきの彼のおかげ?・・・とか?」


「・・・お前は、
変わらないみたいだね」


「ふふ、そうですか?
でもひどいなぁ、成長してますよ。

・・・で?いつから?
男とは付き合わないんじゃなかったんですか?」


冗談ぽく笑ってた松本が、
真っ直ぐ俺を見てる。


「・・・・・」


「確か、5年前そう言いましたよね?
俺に、はっきりと・・・」


「・・・・・」





確かに言った。


ちょうど5年前・・・
真剣な顔した松本に・・・


『ごめん。
気持ちは嬉しいんだけど、
俺、男には興味ない。
・・・男と付き合うことはないから』


確かにそう言った。