「ええっと、適当に座ってて・・・」


「ああ、うん」



とっさに家に誘っちゃった。
どうして俺はこうもいきなりなんだろう。



コンビニで会ってたって言っても、
ちゃんと話したのは今日が初めてだってのに。



俺は自分の気持ちを落ち着かせるために、
冷蔵庫を物色した。



とりあえず、ビールで良いかな?



それにしても、貴方の前だと俺、
思わぬ言動をしてしまう。
頭より先に身体が動いちゃうんだ。



こんなこと初めて・・・



手を掴んで誘って、
事故だけど、貴方のこと抱き締めちゃって・・・



さっき気がついた。
貴方の香り・・・
なんだろう。すごく心地よくて落ち着くんだ。
もっとそばで・・



「ねえ、翔くん。ワイングラスある?」


「え?うわあー!」


「うわっ!びっくりした。どうしたの?」



貴方は俺の大きな声にびっくりして、
ビクッと身体を揺らした。



リビングにいると思ってた貴方が、
すぐそばにいるんだもん!
そう、手の届く所に・・・



貴方が首を傾げて俺を見てる。
やっぱりすっげー可愛い。



もう、心臓に悪いから、
急に近づかないでほしい。



「・・・翔くん?大丈夫?
酔っちゃった?・・・顔赤いよ?」



心配した貴方がさらに近づき、
俺の顔を覗き込んできた。



分かっててやってるの?
無意識なの?



俺、・・・貴方のことが好きなんだよ。



だから、会いに行ってた。
わざと貴方のレジに並んだ。
貴方と話してみたかった。



何をしてるの?何が好きなの?
貴方のことすごく知りたかった。



2人っきりで話してみたくて、
誘うタイミングを図ってた。



そう、貴方に出逢ったあの時に、
俺は、貴方に一目惚れしてたんだ。



そんなに近づいてこられたら、
また手が出そうになる。
抱きしめて、そのまま・・・



「・・・あ、あの、翔くん?」


「あ!ごめん、ワイングラスだったよね。
一応あるよ。あと、お皿は・・・」


「あ、これ、これがいい。
使っていい?」



食器棚を開けると、
貴方がちょうどいいお皿を見つけて、
ふふって笑ってそれを取り出す。



ドキドキしてどうしようもないのを悟られぬように、
冷静に話し掛ける。


「ん。あと用意するものは?」


「んーと、フォークかな?」


「了解です」



リビングのテーブルに、
貴方がコンビニで買ってきたものを並べ出した。



「急だったから、コンビニので申し訳ないんだけど、
ないよりはいいでしょ?」



赤ワインに、チーズに、ワインに合いそうな惣菜、
イチゴのショートケーキまであった。



「あ、急がなきゃ。
翔くん、グラスをこっちに」



貴方は時間を気にして、
慌てて準備してくれている。
ああ、俺、今すっげー幸せ。



「あ!ほら、もう0時。
翔くん、お誕生日おめでと!
そして、この出逢いにも・・・乾杯!」


「ん、ありがとう。智くん。乾杯」



グラスを合わせ、
智くんの入れてくれた赤ワインに口を付ける。



赤ワインのせいか、貴方の唇が、
より一層赤く艶っぽくなって、
俺は目が離せなくなった。



そう。今日は俺の誕生日。
だから俺、勇気を出せ!



「今年は今まで一番の誕生日になったよ。
智くんのおかげ。貴方と迎えられて俺、すげー幸せだ」


「・・・・・」


「ん?あの、智くん?」


「・・・そんなこと言われたら、
おいら勘違いしちゃうよ?」


「・・・え?」



貴方の顔が赤く染まり、
艶っぽい唇が、潤んだ瞳が、
俺に向けられた。