「ねえ?これからどこ行くの?」


「ふふ、行ってのお楽しみ♪」


お互い、昨日の仕事が午前様だったので、
待ち合わせは14時。
翔くんが車で迎えに来てくれた。


おいらはもっと早くても良かったんだけど、
翔くん何か考えているのかな?


翔くんの運転する車は高速に乗り、横浜方面へ向かっていた。


「ふふ、やっぱり横浜に行くんだ」


「へ?あ、ばれた?ははは」


「いや、翔くんよく、デートするなら横浜でって言ってたから」


「だって、やっぱり恋人の街でしょ?横浜は!」


「ふふ、そうなの?おいらにとっては釣りの街だけど・・・?」


「もう!色気がない!智くんは釣りばっかりだ。
あ、着くまで寝てていいよ。まだちょっとかかりそうだし」


「せっかくの初デートなんだし、寝るのは勿体無い!」


「そ?それじゃあ、ドライブらしく、曲かけようかな?」


「・・・なんで、おいら達の曲なの?」


「ドライブで聞くならって、編集してみました」


「ふふ、翔くんらしいね」


寝るのは勿体無いって言っときながら、
程よい振動と、聞き慣れた音楽に、
ついうとうとして、おいらは寝てしまった。







「・・智くん、智くん起きて?着いたよ!」


「ん?あ、あれ?おいら寝ちゃった?ごめん!」


「いや!俺智くんの寝顔好きだし、
自分の運転で寝てもらえると、なんか安心する」


「そう?ここどこ?」


「色々考えたんだけど、ベタなデートコースにしてみたんだ。
智くんの好きかな?って思って」


「あ!水族館?おいら好き」


「良かった!行こっか」


「でも、バレない?」


「大丈夫、だって、みんな魚を見にきてるんだから!でしょ?」


「ふふ、それ、おいら似た言葉言ったことあるな」



平日の夕方ってこともあって、中は比較的空いてた。
少し薄暗い館内、俺たちはバレることなく、
ゆっくりと回ることが出来た。


自由に泳ぐ魚達に貴方は釘付けで、
瞳をキラキラさせて水槽を見ていた。


そんな貴方が大水槽の前で立ち止まる。


まるで海の底にいるみたいな、そんな空間に、
貴方は時間を忘れて、魅入っていた。


ベタだけど、これを見せたかったんだよね。
貴方はきっと気に入ると思ったから。


俺は貴方の名前を呼んでみたけど、
貴方は夢中で聞こえてないみたい。


水槽を見ている貴方の横顔があまりにも綺麗で、
俺はそんな貴方の横顔を眺めていた。


でも、あまりの綺麗さに堪らなくなって、
周りに誰もいないのを確認して、素早く口づけをした。


「ちょっと、翔くん!誰かに見られたらどうするの!」


びっくりした貴方が、
珍しく早口で焦って言う。


「だって、もう誰もいないよ?」


俺はそう言って、
貴方の顎を掬い、再び口づける。


「んんっ・・・ちょ、しょおく・・・」


触れるだけの口づけは、
いつしか濃厚なものに変わっていった。


閉館を知らせるアナウンスが流れ出し、
俺らはビクッとして、慌てて離れた。


「・・・そろそろ、出よっか」


「・・・ん」




貴方は真っ赤な顔をして、


俺をおいて、



そそくさと出口の方に向かっていった。