「どうぞ。思ったより早かったね。翔くん」


「へ?あ、うん」


「ごめんね。急に呼び出して」


ふふって笑う貴方を、笑ってる貴方を見るのは久しぶりな気がする。
ああ、やっぱり貴方には笑顔が似合う。


「急に呼び出した訳はね、最後にはっきりさせておきたいことと、
やっておきたいことがあったからなんだ」


「お、俺も言わなきゃいけないことがあるんだ、智くん」


「ん。今日はおいらからで良い?」


「あ、う、うん」


智くんから笑顔が消え、
俺の方へゆっくり歩いてくる。


そっと貴方の手が伸びて来て、
俺の胸ぐらをぐいっと掴む。


貴方の瞳が、キラッと光った。
殴られると思い、とっさに目をつぶった。


あ、あれ?痛くない・・・


薄っすら目を開けると、
貴方が俺の顔を覗き込んでいた。
目があった次の瞬間、ふわっと口づけされた。


「え?ちょ・・・んんっ」


「うるさい。もう、だまって・・・」


貴方の舌が、俺のそれに絡んでくる。
ねっとりとした貴方の舌が、口 内を蠢き、掻き乱す。
こんな貴方を俺は知らない。


与えられる快感に、意識が飛びそうになり、
ぐらっとよろけそうになるのを、
貴方に支えられる。


貴方がここで唇を離す。


「ふふ、一度おいらからキスしたかったんだよね」


いつものふにゃふにゃの笑顔を向け、
ぎゅっと俺に抱きついてくる貴方。


「ずっと聞きたかったことがあるんだ。
このままだまって聞いてくれる?」


俺に抱きついたまま、貴方が続ける。
貴方の表情が見えないから、ちょっと怖い。


「・・・まずは、おいらのこと・・・ちょっとは好き?
誰でも良かったわけじゃないよね?
やっぱり、・・・ただの欲 の・・・はけ 口だったの?」


貴方の声が震えてる。
消えそうな小さな声だった。


「おいらは、翔くんが好き。
翔くんがずっと前から、大好き。翔くんしか・・・いらない。
翔くんは・・・おいらのこと・・・」


俺、何やってたんだろ?
貴方の何を見て来たんだろ。
貴方も同じ気持ちだったなんて。


あの行為で、どれほど貴方を傷つけて来たのか、ようやく分かった。


俺はありったけの力で、貴方を抱き締め返した。


「え?しょ、しょうくん。く、くるし・・・」


「俺、貴方が好きだ。貴方を俺だけのものにしたかったんだ。
どんな方法を使っても。貴方が他の人のものになるのが許せなかった」


「しょ、しょうくん?」


「貴方が好きだ。貴方を愛してる。貴方を離したくない」


「・・・うん」


「貴方が好き。大好き。狂いそうなほど愛してる。」


「・・・うん」


「貴方がいないと俺・・・」


「・・・うん」


俺はいつのまにか泣いてしまっていた。
貴方は俺の言葉に、ゆっくり頷いて行く。


「貴方のそばにずっと・・・いたい」


「・・・うん。おいらも翔くんとずっと一緒にいたい」


「・・・やっと、
やっと貴方を・・・手に入れた」


「ふふ・・・ねぇ、しょおくん。
・・・しよっか?」




・・・こんな貴方の顔も
俺は知らない。