おじいちゃんは何でもできる魔法使い。
こわれた機械を直すのなんてお手のもの。
あっ!というまに元どおり。
おじいちゃんは力持ち。
重い荷物もいとも簡単にひょいと持つんだ。
おじいちゃんは字がきれい。
ペンを持つと紙の上で文字が踊りだす。
おじいちゃんの手は魔法の手なんだ。
おじいちゃんは変身上手。
ピカピカの靴を履いてスーツをビシッと着て。
沢山の人の前で堂々とお話もする。
おじいちゃんは歌も歌う。
大きな声で歌う姿はまるで演歌歌手みたい。
おじいちゃんの声でみんな笑顔になるよ。
魔法の声だね。
そんな風にぼくもなりたいとおもったよ。
月日が流れてぼくは字が上手になった。
いっぱいいっぱい練習したよ。
おじいちゃんほどではないけれど力もある。
たくさんの「できること」が増えてきたよ。
そして背もだいぶ伸びて、
おじいちゃんを追い越すのが目標なんだ。
嫌いな牛乳も頑張って飲んでる。
でもね、いつからだろう、
最近はとても小さく見えたんだ。
あんなに力持ちだったのに
今はお茶碗を持つのもやっと。
あんなに機械を直すのが得意だったのに。
今はそれもできない。
大きな声で歌えてたのに
しゃべる声はどこか力がない。
おじいちゃんは
「できないこと」が増えたみたい。
ぼくはおじいちゃんのように
なりたかったのに・・・・・。
いつしかおじいちゃんを
避けるようになったんだ。
ある時、おじいちゃんは叫んだ。
言葉にならない
言葉を叫んだ。
涙をいっぱい
浮かべてさ。
「 おれはなんでもできる 」 って。
初めてそんな姿を見て思ったよ。
ぼくにとってどんな姿になっても
「おじいちゃんは変わらないんだ」ってさ。
小さい頃からぼくにとってずーっと
おじいちゃんは魔法使いなんだ。
よし。今度はぼくがおじいちゃんの
手となり足となろう。
それからおじいちゃんは
どんどん弱ってきた。
手足はやせ細り
いつもキレイに染めていた髪は
真っ白になっていた。
でもね、今だから言うけど。
真っ白の髪、 ぼくは好き。
だってお星様の光のようにキラキラときれいだからさ。
おじいちゃんがお星様になったのは
つい最近のこと。
いつも思うけど
おじいちゃんが
ひょっこり出てきそうだ。
そして今でもおじいちゃんは、魔法使いだと思うんだ。
だってね、たくさんの人が
おじいちゃんのことを話すんだ。
そしてみんな笑顔になるんだよ。
ぼくは今日も沢山の失敗をするけど、沢山のチャレンジもするよ。
それはいつか おじいちゃんのような
魔法使いになれるようにね。
おしまい
作 Tae
⭐️Tae-chu(タエチュー)⭐️
シンガーソングライターのTae(Vo)とアレンジャー&サウンドプロデューサーのヨースケ(Pf,Cho)によって結成された2人組ポップスユニット。
宮城県は丸森町を拠点とし、現地の自然と人々の温かさを基盤に、自在、万華鏡のように多彩な曲調の楽曲に、女性ヴォーカルTaeの澄んだ歌声が響くどことなく懐かしさを感じさせるようなサウンドが注目を集め、全国各地で活躍中。