1台目のクルマに乗ってからしばらくすると、隣の市にディーラーのユーカーランド(中古車)でロードスターがずらずらっと並んでいるのを発見した。
寄ってみると、なんとロードスターに拘って取り揃えているとの事。そういう販売の仕方はなかなかしないものなので、ラッキーだった。

ディーラーの中古車販売なので基本的に状態の良いタマが多く、良い状態のクルマを多く見れたことは後々、色々と参考になった。当時は初期型(NA)と2代目(NB)があったが、遠目のインパクトではNAが良かったが、状態の良いタマでも結構使い古された感があった。NBはインパクトは若干薄まったものの、若々しくフレッシュな感じがした(実際、新しいが)。これは、ある意味、NAは流行で売れてかなり乱雑に乗った人も多かったが、NBになるとお祭り騒ぎが落ち着いて大事に乗る人が多くなったのかも知れない。
しかも近くで見てみると、NBはプレスラインがほとんど流れる様な曲線で構成されているのが分かった。平らだと思っていたボンネットも中央は盛り上がっていて、ヘッドライトの辺りで更にもうひと山。ドアパネルの上部分は完全に空を向いていて、そこからリアフェンダーへもなだらかに膨らんでいる。
俺はクルマのプレスラインってこんなに曲面構成出来るのか!とほとほと感心してしまったのだった。どこを見ても直線の面などもはや見当たらなかったのだ。1代目の雰囲気を残しつつも、明らかに別物と分かるデザインだった。言うならばNBは風とか水とかの流体が流れている瞬間のイメージだった。風が好きな俺としてはNBのデザインが気に入ったのだ。

何度目かの訪問で、ついに運転席に乗ることになった。小さなドアを開けて、最低限のスペースしかない運転席に戸惑いながら乗り込む。ドアを閉める。
ハンドル、シフト、ペダルなどの配置。幌や盛り上がったセンターコンソール、小さな窓が醸し出す包まれ感。しかし相当大きな動きさえしなければ、窮屈に感じる事は無いという必要十分な室内スペース。上を見れば幌骨という構造物が丸見えになっているという非日常感。シンメトリーを基調とし、さらにエクステリアの曲面をも取り入れた堅実なインテリアデザイン。

別にマツダだからと言って、掛けているわけじゃないけど、
乗った瞬間、ビビッときた。
電気が走った様な衝撃って、本当にあるのだと認めた瞬間だった。
俺って意外と感覚派なのかも知れないとも、その時初めて思った。

その時、自分の扉が一つ開いた。そんな感じがした。

だから・・・それ以降、2週間に1度は訪問するという異常行動。店員とはすっかり知り合いになり、半分遊びに行く様な感じになっていたのだった。