CLOUDNOTE-雲の旋律-

あすけ里山ユースホステルの玄関を入ると、まずお出迎えされたのが20cmシュミット・カセグレン望遠鏡。台座が木製でユニークだ。そして後ろの壁には新聞の月と太陽系特集。山奥のこの場所ならさぞ星が良く見えるだろうけど、この日はあいにくの曇り。あわよくばここで天体観測を、なんて考えていたのだが・・・。

 

衝撃的な光景に出合った。ペアレント(ユースのオーナーはこう呼ばれる)に呼ばれ、夕食の為に食堂に集まる。食堂には浴衣を着た大学生くらいの女子が5~6人いたのである。

普通、ユースに泊まるのは男性か、年配の夫婦が割と多い。若い女性に出会う事はあまりない。

それが5~6人、しかも皆浴衣姿なのである。俺の経験にはない、これはある意味、異常事態なのである。


そもそも、ユースホステルは近年利用者離れが進んでおり、ユースという名前なのに若者の利用者は少ない。20年~30年前には結構利用者が居たようで、そういう方が今も時々利用しているパターンが割と多いような気がする。昔は大部屋に寝袋、禁酒というイメージがあったが、今は設備に力を入れているユースが大分増えてきており、設備的にはペンションと大差ない。その為、慣れているホステラーなら安い金額で宿泊できるのが最大のメリットだ。

また、ユースに泊まる人は大体旅好きだったり、それに関係する趣味を持っていたり、一期一会を大切にしていたりする人が多いので名前も知らないのに結構話が弾んでしまうなんて事も良くある。自分と全然違う環境にいる人と話すと世界の広さを感じるので面白い。まあ、ある意味非日常であり、現実逃避とも言えるかも知れないけど。


だからユースに来たら、同じ宿泊者の存在もとても重要。

一人旅でも、求めるのはハプニングと人との出会い。それが旅を面白くする。

大きな声では言えないが、それが若い女の子だったら尚更betterなんである。


そんな訳だから、凄く嬉しかったのだけど、これは何かあるだろうと一緒に食事をしながら話しかけてみた。

すると、NPO法人に所属していて、これから地域の伝統行事に参加するのだと言う。

この辺りでは昔、夜念仏という盆踊りをしていたらしい。それは神仏や新仏に対して捧げる踊りで、踊り方も所謂”盆踊り”ではなく、独特の振り付けで、国指定重要無形民俗文化財にも指定されている由緒正しい踊りなのだそうだ。学生と社会人が入り混じっていて、いずれも学生の時に参加して地元の人の温かさに触れ、こういう活動をするようになったという。

若い女性と民俗文化財の盆踊りという組み合わせは・・・さすがに想像していなかった。まさにハプニングである。

けれど彼女達は全く動じることもなく、当然の様に夜念仏に出掛けて行った。

3時間後、わいわいとはしゃぎながら帰って来た彼女達。まるで嵐のライブにでも行っていたかの様に、あの人の踊りかっこよかったね!!あんな動き絶対出来ない!と盛り上がっていた。


彼女達に若さを感じると共に、純粋な感性って素敵だなと思った。

俺は予定だった「たんころりん」という町のライトアップに出掛けて、それは風情があり、面白かったけど、もっともっと純粋な感性に任せて夜念仏に行ったらもっともっと楽しい事が起きたかもしれない・・・と少しばかり思ってしまった。



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